「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・奪督記 2
フォコの話、24話目。
のんきとシリアス。
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のんきとシリアス。
2.
この日はレオン夫妻とケネス夫妻とで、食事会が催されていた。
「ふむ……。やはり僕の方でも、高騰していますね」
「せやろ? ちょっと行き過ぎな感、ありますよな」
会話の内容は、やはり鉄を初めとする重金属の価格高騰だった。
「しかし、僕が取引している筋で、戦争や討伐と言った話は聞いていませんね。もしかしたら単に、城砦の建設などによる装備拡充が原因かも知れませんよ」
「それも一理あるけれど、建設大手のネール家では、まったく動きが無いのよ。他のそれらしい筋でも、特に大掛かりな計画はなし。
どこが大量に買い付けてるのか、何に使うつもりなのか。さっぱり、分からないままよ」
レオンとイデア、ケネスが堅い意見を交し合う一方で、フォコとリンダはのほほんと会話していた。
「やっぱり美味しいわぁ、故郷の料理は」
「そうやね。僕も前、クラフトランドに二ヶ月おったことあったけど、帰ってきた時ほっとしたもん」
「あ、それ聞いたことあるわ。ネールさんとこの娘さんに、引っ張りまわされとったって」
「あー、うん。ホンマ、あん時は大変やったわぁ」
フォコの様子に、リンダはクスクス笑う。
「うふふ……、実はあたしも昔、央中の南の方で過ごしたことあるねんで?」
「そうなん?」
「うんうん。イエローコースト言うてな、砂浜でちょこちょこっと砂金の取れる港町やねん。
もしかしたらでっかい金鉱があるかも言うてな、あたしの叔父さん――フォコにとっては大叔父さんやね――がずーっと前からそこで山とか掘ってんねんけど、そこに三ヶ月くらいお邪魔したことあんねん。
楽しかったでー、港町やから色んな人見かけたし。ほら、央中の南の方に山あるやん?」
「カーテンロック山脈のこと?」
「そーそー、そこ越えた先んとこからも色んな人来たはって、面白い話とか、よー聞かしてもろたんよ」
「へぇ……」
「まだ生きてはるし、一回見に行ってみるのんもええかも知れへんで。まあ、今でも肝心の金は出てへんねんけど」
と、ここでレオンたちの話は一段落したらしい。
「そろそろお開きにしよか。ごちそうさん」
同時刻、屋敷の前。
「お引き取りください」
「はぁ!? お前にゃ用はねーんだよ! レオン・ゴールドマンを出せって言ってんだ!」
あの「怒鳴り込み屋」――クリオ・ジョーヌが、屋敷の執事に門前払いを食らっていた。
「当主様は既に、本日の執務を終えられています」
「いーから出せっての!」
実を言えば、一昨年の秋に乗り込んで以来、彼は二度ほど訪れている。だが、その二回とも追い払われてしまっているのだ。
「お引き取りください」
うっかり引き入れてしまえばまたうるさい目に遭うと、屋敷中の者に警戒されてしまったからである。
「……後悔すんぞ!」
「しません。お引取りを」
にべもなく返され、クリオは舌打ちしながら背を向けた。
「分かってねーなぁ……! 折角このオレが、親切心出してやったってのに」
「……?」
追い払った執事は、クリオのその言葉に引っかかるものを感じた。
「親切心、ですって?」
「そーだよ。最近の重金属高騰に関して、……って言っても、お前さんにゃあさっぱりだろうな。
ま、ともかくだ。今夜は街の宿に泊まるから、明日改めて会いにくる。そう伝えておいてくれや」
「は、あ……」
執事は首をかしげながら、クリオの後姿を見送った。
さらに夜は更け、皆が寝静まった頃――。
「……」
ケネスがそっと、寝室を抜け出した。その手には、何かが描かれた布が握られている。
「今から門を開ける。すぐ入って来い」
ケネスは布に向かって、小声でそうつぶやいた。そしてそのまま、ケネスは屋敷を抜け、門の前まで歩いていく。
「ご苦労」
門の前には、黒ずくめの男が二名立っていた。
「標的はどこに?」
ケネスが握っているのと同じ布を頭に巻いたその二人は、低い声でそう尋ねた。
「屋敷の最上階だ。五分で戻れ」
「了解」
門を抜け、その二名は駆け足で、しかし音も無く、屋敷の中へ入っていった。
この日はレオン夫妻とケネス夫妻とで、食事会が催されていた。
「ふむ……。やはり僕の方でも、高騰していますね」
「せやろ? ちょっと行き過ぎな感、ありますよな」
会話の内容は、やはり鉄を初めとする重金属の価格高騰だった。
「しかし、僕が取引している筋で、戦争や討伐と言った話は聞いていませんね。もしかしたら単に、城砦の建設などによる装備拡充が原因かも知れませんよ」
「それも一理あるけれど、建設大手のネール家では、まったく動きが無いのよ。他のそれらしい筋でも、特に大掛かりな計画はなし。
どこが大量に買い付けてるのか、何に使うつもりなのか。さっぱり、分からないままよ」
レオンとイデア、ケネスが堅い意見を交し合う一方で、フォコとリンダはのほほんと会話していた。
「やっぱり美味しいわぁ、故郷の料理は」
「そうやね。僕も前、クラフトランドに二ヶ月おったことあったけど、帰ってきた時ほっとしたもん」
「あ、それ聞いたことあるわ。ネールさんとこの娘さんに、引っ張りまわされとったって」
「あー、うん。ホンマ、あん時は大変やったわぁ」
フォコの様子に、リンダはクスクス笑う。
「うふふ……、実はあたしも昔、央中の南の方で過ごしたことあるねんで?」
「そうなん?」
「うんうん。イエローコースト言うてな、砂浜でちょこちょこっと砂金の取れる港町やねん。
もしかしたらでっかい金鉱があるかも言うてな、あたしの叔父さん――フォコにとっては大叔父さんやね――がずーっと前からそこで山とか掘ってんねんけど、そこに三ヶ月くらいお邪魔したことあんねん。
楽しかったでー、港町やから色んな人見かけたし。ほら、央中の南の方に山あるやん?」
「カーテンロック山脈のこと?」
「そーそー、そこ越えた先んとこからも色んな人来たはって、面白い話とか、よー聞かしてもろたんよ」
「へぇ……」
「まだ生きてはるし、一回見に行ってみるのんもええかも知れへんで。まあ、今でも肝心の金は出てへんねんけど」
と、ここでレオンたちの話は一段落したらしい。
「そろそろお開きにしよか。ごちそうさん」
同時刻、屋敷の前。
「お引き取りください」
「はぁ!? お前にゃ用はねーんだよ! レオン・ゴールドマンを出せって言ってんだ!」
あの「怒鳴り込み屋」――クリオ・ジョーヌが、屋敷の執事に門前払いを食らっていた。
「当主様は既に、本日の執務を終えられています」
「いーから出せっての!」
実を言えば、一昨年の秋に乗り込んで以来、彼は二度ほど訪れている。だが、その二回とも追い払われてしまっているのだ。
「お引き取りください」
うっかり引き入れてしまえばまたうるさい目に遭うと、屋敷中の者に警戒されてしまったからである。
「……後悔すんぞ!」
「しません。お引取りを」
にべもなく返され、クリオは舌打ちしながら背を向けた。
「分かってねーなぁ……! 折角このオレが、親切心出してやったってのに」
「……?」
追い払った執事は、クリオのその言葉に引っかかるものを感じた。
「親切心、ですって?」
「そーだよ。最近の重金属高騰に関して、……って言っても、お前さんにゃあさっぱりだろうな。
ま、ともかくだ。今夜は街の宿に泊まるから、明日改めて会いにくる。そう伝えておいてくれや」
「は、あ……」
執事は首をかしげながら、クリオの後姿を見送った。
さらに夜は更け、皆が寝静まった頃――。
「……」
ケネスがそっと、寝室を抜け出した。その手には、何かが描かれた布が握られている。
「今から門を開ける。すぐ入って来い」
ケネスは布に向かって、小声でそうつぶやいた。そしてそのまま、ケネスは屋敷を抜け、門の前まで歩いていく。
「ご苦労」
門の前には、黒ずくめの男が二名立っていた。
「標的はどこに?」
ケネスが握っているのと同じ布を頭に巻いたその二人は、低い声でそう尋ねた。
「屋敷の最上階だ。五分で戻れ」
「了解」
門を抜け、その二名は駆け足で、しかし音も無く、屋敷の中へ入っていった。



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