「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・奪督記 4
フォコの話、26話目。
黄色い猫の推理。
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黄色い猫の推理。
4.
ざわざわとする声が、耳に入ってくる。
「……ん……」
フォコはふっと、ソファから起き上がった。
と――コンコンと、窓を叩く音がする。
「……?」
窓の方に目をやると、青い顔をした、金髪の猫獣人が立っているのが目に入った。
「誰……?」
フォコはそっと、窓に近付いた。
「お前、レオン・ゴールドマンのガキか?」
「へ? え、あ、はい」
窓の外にいた猫獣人は、指で窓枠をトントンと叩き、窓を開けるよう促した。フォコは素直に窓を開け、猫獣人を招き入れる。
「よ、……っと。邪魔するぜ、えーと」
「フォコです。ニコル・フォコ・ゴールドマン」
「ほこ、ふおこ、……フォコか。……とりあえず、まだ寝てるフリしとけ」
「へ?」
「へーへー答えてんじゃねー。とにかく寝転んで、オレの話を聞け」
「は、はい」
フォコは言われた通りに、寝かされていたソファに横になった。猫獣人はそのソファの下に入り込み、話を続ける。
「自己紹介が遅れたな。オレはクリオ・ジョーヌ。ゴールド……、お前の父ちゃんの同業者だ。
落ち着いてるみたいだから、単刀直入に話していくぞ。お前の父ちゃんと母ちゃんが、殺された」
「……っ。じゃあ、さっきのんは、やっぱり」
「見ちまったか。……気ぃ落とすなってのはムチャな話だが、ともかくだ。冷静になって聞け」
「……はい」
フォコは深呼吸し、クリオの話に耳を傾ける。
「お前さんもちょっとくらい耳にしてるだろうってことを前提で、話をするぜ。
この半年、世界的に重金属……、まあ、鉄だな。それの取引価格がバカみてーに上がってた。鉄ってのは、頑丈な金属だ。だから、戦争があるとよく使われる。
つまり、これから戦争があるかも知れねーから、誰かが鉄をバカスカ買い付けてたってことだ。分かるか?」
「は、はい」
「んで、オレの方でもそれなりに儲かってはいたんだ。
でもよ、高くなったもんはいつか下がるってもんだ。それを考えずにホイホイ仕入れてちゃ、いずれは大損ぶっこく。そーならないように、価格の下がる時期を見定めるようと、オレの方で誰が買い集めてるか、探ってたんだ。
そしたらビックリだ。お前さんもゴールドマン家なら、『戦争起こすな、起こしたらやめさせろ』ってのは聞いてるよな?」
「ええ、まあ」
「その、ゴールドマン家のヤツが買い付けてたんだ。誰か、分かるか?」
「いえ、全然。まさか、父が?」
「違う違う。そーじゃねー。……その、義理の弟だ」
フォコはその言葉に、息を呑んだ。
「ケネス義叔父さんが?」
「そう。ケネス・エンターゲートだ。あっちこっちで代理を立てて、大量の重金属を買いまくってたんだ。
誰が買ったかは、分かった。となると次に思い浮かぶのは、何で買ってたか、だ。それも調べてみた。そしたらだ」
と、ここでドアがノックされる。
「やべっ、……ほく、ふお、……ホコ!」
「フォコです」
「いいから、ホコ! オレがいるってコトはばらすなよ! 寝たふりしてろ! それから絶対に絶対に絶対、ケネスの言うコトは聞くんじゃねーぞ!」
それきり、クリオは黙り込んだ。
「失礼するよ、フォコ」
入ってきたのは、今クリオとの話題に上っていたばかりの義叔父、ケネスだった。
「……」
クリオに言われた通り、フォコは目をつぶって眠っている振りをする。
「ふむ」
ケネスは共に入ってきたメイドに声をかける。
「まだ眠っている。そっとしておいてやってくれ」
「はい」
ケネスはそのまま、フォコの側から離れた。メイドもフォコに毛布をかけた後、部屋を出て行く。
「……ホコ、誰もいないか?」
「みたいです」
フォコはそろそろと首を上げ、辺りを見回したが、部屋の中に人の姿は無い。
「話を続けるぜ。ともかく、ケネスのヤツが鉄を買い込んでた。
その理由を探ってたら、どうも中央政府軍に向けて大量の武具を渡す算段を整えてたらしいってコトが分かった。
となると、次に浮かぶ疑問は何だ、ホコ?」
「……誰に向けてそれを使うか?」
「その通りだ。それも調べた。……そしたら、ゾッとするような結論が見えてきた。
ケネス・エンターゲートの大バカ野郎は――央中攻略を狙ってやがる」
「央中、攻略?」
聞き返したフォコに、クリオはソファの下でうなずいたらしい。
「あいてっ、……頭ぶつけちまった。ま、それでだ。
ゴールドマン家とかネール家とか、そこら辺のでっかい商家は当然、中央政府と取引してる。でも従ってはいない。中央政府の権力は実質的に、央中にゃ届いてねーんだ。
世界平定してるって宣伝してる中央政府にとっちゃ、そんなのは我慢できねーワケだ。できるコトなら、そこら辺の強情な大商家をボコって、何が何でも支配したかった。
でも他んトコみてーに、カミサマの権力、つまり天帝教の威光を使って言うコト聞かせるなんてコトができねー。あの『エリザさん』が央中のカミサマを務めてるからな」
「そうですね」
「じゃあ他の手段は何かっつったら、これはもう直接的手段――軍事侵攻による接収・徴発だ。もうオレの言いたいコト、分かってきたろ?」
「つまり……、ケネス義叔父さんは武具を売りつけて、その手助けをしてる、と?」
「その通りだ。だけど、これは普通に考えたら自殺行為もいいところだ。自分たちの商家を潰す手助けをしてるってコトになるからな。
だけどもエンターゲートに限っては、そうじゃない。何故ならアイツは、元々から中央政府と手を組んでたからだ」
「その通りだよ、ジョーヌ総裁」
突然、声が聞こえてきた。
「……ッ」
クリオは息を呑み、ソファの下から這い出た。
「てめえ」
クリオの目には、長いカーテンの陰から出てニヤニヤと笑う、ケネスの姿があった。
ざわざわとする声が、耳に入ってくる。
「……ん……」
フォコはふっと、ソファから起き上がった。
と――コンコンと、窓を叩く音がする。
「……?」
窓の方に目をやると、青い顔をした、金髪の猫獣人が立っているのが目に入った。
「誰……?」
フォコはそっと、窓に近付いた。
「お前、レオン・ゴールドマンのガキか?」
「へ? え、あ、はい」
窓の外にいた猫獣人は、指で窓枠をトントンと叩き、窓を開けるよう促した。フォコは素直に窓を開け、猫獣人を招き入れる。
「よ、……っと。邪魔するぜ、えーと」
「フォコです。ニコル・フォコ・ゴールドマン」
「ほこ、ふおこ、……フォコか。……とりあえず、まだ寝てるフリしとけ」
「へ?」
「へーへー答えてんじゃねー。とにかく寝転んで、オレの話を聞け」
「は、はい」
フォコは言われた通りに、寝かされていたソファに横になった。猫獣人はそのソファの下に入り込み、話を続ける。
「自己紹介が遅れたな。オレはクリオ・ジョーヌ。ゴールド……、お前の父ちゃんの同業者だ。
落ち着いてるみたいだから、単刀直入に話していくぞ。お前の父ちゃんと母ちゃんが、殺された」
「……っ。じゃあ、さっきのんは、やっぱり」
「見ちまったか。……気ぃ落とすなってのはムチャな話だが、ともかくだ。冷静になって聞け」
「……はい」
フォコは深呼吸し、クリオの話に耳を傾ける。
「お前さんもちょっとくらい耳にしてるだろうってことを前提で、話をするぜ。
この半年、世界的に重金属……、まあ、鉄だな。それの取引価格がバカみてーに上がってた。鉄ってのは、頑丈な金属だ。だから、戦争があるとよく使われる。
つまり、これから戦争があるかも知れねーから、誰かが鉄をバカスカ買い付けてたってことだ。分かるか?」
「は、はい」
「んで、オレの方でもそれなりに儲かってはいたんだ。
でもよ、高くなったもんはいつか下がるってもんだ。それを考えずにホイホイ仕入れてちゃ、いずれは大損ぶっこく。そーならないように、価格の下がる時期を見定めるようと、オレの方で誰が買い集めてるか、探ってたんだ。
そしたらビックリだ。お前さんもゴールドマン家なら、『戦争起こすな、起こしたらやめさせろ』ってのは聞いてるよな?」
「ええ、まあ」
「その、ゴールドマン家のヤツが買い付けてたんだ。誰か、分かるか?」
「いえ、全然。まさか、父が?」
「違う違う。そーじゃねー。……その、義理の弟だ」
フォコはその言葉に、息を呑んだ。
「ケネス義叔父さんが?」
「そう。ケネス・エンターゲートだ。あっちこっちで代理を立てて、大量の重金属を買いまくってたんだ。
誰が買ったかは、分かった。となると次に思い浮かぶのは、何で買ってたか、だ。それも調べてみた。そしたらだ」
と、ここでドアがノックされる。
「やべっ、……ほく、ふお、……ホコ!」
「フォコです」
「いいから、ホコ! オレがいるってコトはばらすなよ! 寝たふりしてろ! それから絶対に絶対に絶対、ケネスの言うコトは聞くんじゃねーぞ!」
それきり、クリオは黙り込んだ。
「失礼するよ、フォコ」
入ってきたのは、今クリオとの話題に上っていたばかりの義叔父、ケネスだった。
「……」
クリオに言われた通り、フォコは目をつぶって眠っている振りをする。
「ふむ」
ケネスは共に入ってきたメイドに声をかける。
「まだ眠っている。そっとしておいてやってくれ」
「はい」
ケネスはそのまま、フォコの側から離れた。メイドもフォコに毛布をかけた後、部屋を出て行く。
「……ホコ、誰もいないか?」
「みたいです」
フォコはそろそろと首を上げ、辺りを見回したが、部屋の中に人の姿は無い。
「話を続けるぜ。ともかく、ケネスのヤツが鉄を買い込んでた。
その理由を探ってたら、どうも中央政府軍に向けて大量の武具を渡す算段を整えてたらしいってコトが分かった。
となると、次に浮かぶ疑問は何だ、ホコ?」
「……誰に向けてそれを使うか?」
「その通りだ。それも調べた。……そしたら、ゾッとするような結論が見えてきた。
ケネス・エンターゲートの大バカ野郎は――央中攻略を狙ってやがる」
「央中、攻略?」
聞き返したフォコに、クリオはソファの下でうなずいたらしい。
「あいてっ、……頭ぶつけちまった。ま、それでだ。
ゴールドマン家とかネール家とか、そこら辺のでっかい商家は当然、中央政府と取引してる。でも従ってはいない。中央政府の権力は実質的に、央中にゃ届いてねーんだ。
世界平定してるって宣伝してる中央政府にとっちゃ、そんなのは我慢できねーワケだ。できるコトなら、そこら辺の強情な大商家をボコって、何が何でも支配したかった。
でも他んトコみてーに、カミサマの権力、つまり天帝教の威光を使って言うコト聞かせるなんてコトができねー。あの『エリザさん』が央中のカミサマを務めてるからな」
「そうですね」
「じゃあ他の手段は何かっつったら、これはもう直接的手段――軍事侵攻による接収・徴発だ。もうオレの言いたいコト、分かってきたろ?」
「つまり……、ケネス義叔父さんは武具を売りつけて、その手助けをしてる、と?」
「その通りだ。だけど、これは普通に考えたら自殺行為もいいところだ。自分たちの商家を潰す手助けをしてるってコトになるからな。
だけどもエンターゲートに限っては、そうじゃない。何故ならアイツは、元々から中央政府と手を組んでたからだ」
「その通りだよ、ジョーヌ総裁」
突然、声が聞こえてきた。
「……ッ」
クリオは息を呑み、ソファの下から這い出た。
「てめえ」
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