「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・奪督記 5
フォコの話、27話目。
別れ。
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別れ。
5.
「ケネス義叔父さん……」
フォコはソファから起き上がり、クリオの横に立った。
「気分はどうかね、フォコ君。あまり良くないとは思うが」
「……」
「この下衆野郎め!」
クリオはそっとフォコの前に立ち、怒鳴りつけた。
「いくらオレでも、人二人殺してまで、いいや、大量虐殺してまで商売しようなんて思わねーぞ!?」
「それは君が単に、詰めの甘い商売をしているだけだろう。私はやると言ったらやる男だ」
ケネスは見下したように、フンと鼻を鳴らす。
「ま、君の所見はなかなか正確だ。流石にジョーヌ海運の主だけはある。
そうとも、私は元々中央政府に対し、積極的に取引をしていた。中央政府を、真に世界を支配する大国にするために、ね」
「ドコまで大嘘つき通すつもりだ、てめー」
クリオはなお、追及を止めない。
「そんならもっと平和的な方法があるだろうが!? 何でゴールドマン夫妻を、……っ」
背後にいるフォコを心配し、クリオは直接的な表現を避けようとしたが、ケネスは意に介さない。
「何故殺したか、ですか?」
「……!」
「簡単なことです。私がその座に、ゴールドマン当主の座に成り代わるためですよ。
……さ、お話はここまでだ」
ケネスはニヤ、と笑い、大声を挙げた。
「みんな、助けてくれ! 殺人犯だ! フォコが襲われている!」
「なっ……」
「クククク……、さて、この状況で誰が犯人になるかな?」
「……とことん下衆野郎だな、てめえ」
クリオはぎゅっとフォコの手を握り、窓に目を向けた。
「え、えっ?」
「このままあの下衆の側にいるつもりか、ホコ!? 付いて来い!」
「あ、う……」
フォコは逡巡したが、その時――ケネスと目が合った。
(……っ!)
ケネスはゴミを見るような視線を、フォコに向けていた。
(ホンマに、ホンマに……、ホンマなんや! この人が、父さんと母さんを!)
これまでの話を裏付けるかのようなその目つきに、フォコは決心を固めた。
「……付いていきます、クリオさん」
「そうしとけっ」
フォコはクリオに引っ張られる形で窓を抜け、屋敷を出て行った。
「……わざわざご丁寧に」
一人残ったケネスはまた、ニヤリと笑った。
「あの子をどうしようかと思っていたところだが、わざわざ片付けてくれるとはな」
屋敷を抜け出したフォコは、走りながら一度、屋敷を振り返った。
「……父さん……母さん……!」
「走れ! 走れ、ホコ!」
クリオに怒鳴られ、フォコは前を向く。
「は、はいっ」
「……見納めもさせられねーで、すまねーな、本当。でも今は逃げるしかねーんだ!」
「はいっ」
「ともかく街を抜けたら、港に泊めてあるオレの船に乗って、オレん家まで一緒に付いて来るんだ! 今のお前には、それしか他に手段はねーからな!」
フォコとクリオは全力で走り、カレイドマインを後にした。
(……さよなら……カレイドマイン……。
……さよなら……父さん……母さん……!)
フォコが休んでいた部屋に、バタバタと使用人たちが集まってくる。
「殺人犯はどこです!?」「大丈夫ですか、エンターゲートさん!」
入ってきた使用人たちを、ケネスは一喝した。
「遅いぞ、愚図め!」
「……えっ?」「エンターゲート、さん?」
「逃げてしまったぞ! この役立たずどもが!」
ケネスはそれまでの腰の低い態度を一転させ、傲慢に振舞う。
「それから、分かっているだろうな!?」
ケネスは眼鏡をつい、と直し、こう宣言した。
「義兄が亡くなった今、私がこの屋敷の――ゴールドマン家の主だ!
これからはケネス・ゴールドマンとそう呼べ、馬鹿ども!」
「ケネス義叔父さん……」
フォコはソファから起き上がり、クリオの横に立った。
「気分はどうかね、フォコ君。あまり良くないとは思うが」
「……」
「この下衆野郎め!」
クリオはそっとフォコの前に立ち、怒鳴りつけた。
「いくらオレでも、人二人殺してまで、いいや、大量虐殺してまで商売しようなんて思わねーぞ!?」
「それは君が単に、詰めの甘い商売をしているだけだろう。私はやると言ったらやる男だ」
ケネスは見下したように、フンと鼻を鳴らす。
「ま、君の所見はなかなか正確だ。流石にジョーヌ海運の主だけはある。
そうとも、私は元々中央政府に対し、積極的に取引をしていた。中央政府を、真に世界を支配する大国にするために、ね」
「ドコまで大嘘つき通すつもりだ、てめー」
クリオはなお、追及を止めない。
「そんならもっと平和的な方法があるだろうが!? 何でゴールドマン夫妻を、……っ」
背後にいるフォコを心配し、クリオは直接的な表現を避けようとしたが、ケネスは意に介さない。
「何故殺したか、ですか?」
「……!」
「簡単なことです。私がその座に、ゴールドマン当主の座に成り代わるためですよ。
……さ、お話はここまでだ」
ケネスはニヤ、と笑い、大声を挙げた。
「みんな、助けてくれ! 殺人犯だ! フォコが襲われている!」
「なっ……」
「クククク……、さて、この状況で誰が犯人になるかな?」
「……とことん下衆野郎だな、てめえ」
クリオはぎゅっとフォコの手を握り、窓に目を向けた。
「え、えっ?」
「このままあの下衆の側にいるつもりか、ホコ!? 付いて来い!」
「あ、う……」
フォコは逡巡したが、その時――ケネスと目が合った。
(……っ!)
ケネスはゴミを見るような視線を、フォコに向けていた。
(ホンマに、ホンマに……、ホンマなんや! この人が、父さんと母さんを!)
これまでの話を裏付けるかのようなその目つきに、フォコは決心を固めた。
「……付いていきます、クリオさん」
「そうしとけっ」
フォコはクリオに引っ張られる形で窓を抜け、屋敷を出て行った。
「……わざわざご丁寧に」
一人残ったケネスはまた、ニヤリと笑った。
「あの子をどうしようかと思っていたところだが、わざわざ片付けてくれるとはな」
屋敷を抜け出したフォコは、走りながら一度、屋敷を振り返った。
「……父さん……母さん……!」
「走れ! 走れ、ホコ!」
クリオに怒鳴られ、フォコは前を向く。
「は、はいっ」
「……見納めもさせられねーで、すまねーな、本当。でも今は逃げるしかねーんだ!」
「はいっ」
「ともかく街を抜けたら、港に泊めてあるオレの船に乗って、オレん家まで一緒に付いて来るんだ! 今のお前には、それしか他に手段はねーからな!」
フォコとクリオは全力で走り、カレイドマインを後にした。
(……さよなら……カレイドマイン……。
……さよなら……父さん……母さん……!)
フォコが休んでいた部屋に、バタバタと使用人たちが集まってくる。
「殺人犯はどこです!?」「大丈夫ですか、エンターゲートさん!」
入ってきた使用人たちを、ケネスは一喝した。
「遅いぞ、愚図め!」
「……えっ?」「エンターゲート、さん?」
「逃げてしまったぞ! この役立たずどもが!」
ケネスはそれまでの腰の低い態度を一転させ、傲慢に振舞う。
「それから、分かっているだろうな!?」
ケネスは眼鏡をつい、と直し、こう宣言した。
「義兄が亡くなった今、私がこの屋敷の――ゴールドマン家の主だ!
これからはケネス・ゴールドマンとそう呼べ、馬鹿ども!」



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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
ま、簒奪者とはそういうものです。
それが野心。
野心に身を焦がすケネスの生き方も一つの生き方だと思います。
そういうのも好きですね。
物語として読む分には。
それが野心。
野心に身を焦がすケネスの生き方も一つの生き方だと思います。
そういうのも好きですね。
物語として読む分には。
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フォコくんの苦難が忍ばれます。