「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第1部
火紅狐・奪督記 6
フォコの話、28話目。
世界を腐らせる野心。
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世界を腐らせる野心。
6.
レオン夫妻の死後、金火狐一族の内情は一変した。
まず、金火狐一族の宗主問題。
当初は直系の人間から選出しようと考えられていたが、前にも述べた通り、一族にとって当主の座は単なる渉外役としてしか認識されておらず、その座に就けば自分自身が手がけている商売が積極的に行えなくなる。根っからの商売人の集まりである金火狐一族は、積極的に当主になろうとはしなかった。
なので、ケネスが立候補した途端、レオン夫妻暗殺の真相を知らない金火狐一族は、満場一致で承諾してしまった。
ところがケネスが当主になった途端、その役目は大きく変化した。
ケネスは己の商売に金火狐の財力をありったけつぎ込み、莫大な利益を生みだした。それにより当主の地位を大幅に引き上げさせ、単なる渉外役から実権ある立場に、その座を造り替えた。
自分の地位を名実あるものにしたケネスは、次に金火狐一族の「凍結」を行った。
央中東南部、イエローコースト。
「な、何やアンタら!?」
山の奥深くで採掘を続けていたフォコの大叔父、コリンの元に、大勢の兵士が押し寄せた。
「コリン・ゴールドマン! 貴殿の事業と資産を徴発する!」
「なんやて!? わし、何も変なことしてへん……」「叔父上、に当たりますかな」
と、うろたえるコリンの前に、ケネスが現れた。
「だ、誰や?」
「新しくゴールドマン商会の当主になった、ケネス・ゴールドマンです。叔父上、投降してください」
「はぁ!?」
ケネスは長々と文章が書き連ねられた書状を見せつけ、宣言する。
「中央政府に仇なす者として、叔父上は指名手配されました」
「仇て、んなアホな……。わし、金山掘ってるだけやで」
「それが罪です。金火狐一族は、これまで偽の神の名を騙って商売を行い、その利益を独占していました。その罪を、天帝陛下がこのように咎めたわけです。
さ、こちらにどうぞ。抵抗はなさらないよう」
ケネスが右手を差し伸べた途端、彼の背後にいた兵士たちが剣や槍を構える。
「……アホな」
コリンは呆然としながらも、ケネスに従った。
同様のことを、ケネスは央中各地で活動していた金火狐一族全員に行った。
その結果、一族の事業と資産はすべてケネス一人の元に集められ、その合計は数十億クラムにも上った。
一族はケネスを当主にしたことを後悔したが、既に遅かった。罷免しようにも、ケネスは中央政府軍を味方につけ、逆らう者を次々に襲撃・拘束していたからだ。
「上々なようだな、ケネス」
「ええ。おかげさまで、バーミー卿」
双月暦305年。
ゴールドマン商会と金火狐一族を完全に掌握したケネスは、中央軍の最高司令官である軍務大臣、バーミー卿と会談していた。
「しかし、思った以上にあっさりと進んでしまったものだな」
「単純なことです。商人を狙う兵士が、今までいなかっただけのこと。
これまで商人には真っ向に、商売で勝負していたのですから、決着が付かなかった。武力で勝負すれば、決着しないわけが無い」
「なるほど、なるほど。まあ、これまで戦争らしい戦争も無かったからな。こうして役に立てば、軍人冥利に尽きると言うものだ」
バーミーはそう言って、うまそうにワインを飲み干した。
「……ふぅ。それでケネス、次の計画は?」
「もう整えています。後は、実行に移すだけです」
「頼もしいことだ」
神話の世界は刻一刻と、腐り始めていた。
火紅狐・奪督記 終
レオン夫妻の死後、金火狐一族の内情は一変した。
まず、金火狐一族の宗主問題。
当初は直系の人間から選出しようと考えられていたが、前にも述べた通り、一族にとって当主の座は単なる渉外役としてしか認識されておらず、その座に就けば自分自身が手がけている商売が積極的に行えなくなる。根っからの商売人の集まりである金火狐一族は、積極的に当主になろうとはしなかった。
なので、ケネスが立候補した途端、レオン夫妻暗殺の真相を知らない金火狐一族は、満場一致で承諾してしまった。
ところがケネスが当主になった途端、その役目は大きく変化した。
ケネスは己の商売に金火狐の財力をありったけつぎ込み、莫大な利益を生みだした。それにより当主の地位を大幅に引き上げさせ、単なる渉外役から実権ある立場に、その座を造り替えた。
自分の地位を名実あるものにしたケネスは、次に金火狐一族の「凍結」を行った。
央中東南部、イエローコースト。
「な、何やアンタら!?」
山の奥深くで採掘を続けていたフォコの大叔父、コリンの元に、大勢の兵士が押し寄せた。
「コリン・ゴールドマン! 貴殿の事業と資産を徴発する!」
「なんやて!? わし、何も変なことしてへん……」「叔父上、に当たりますかな」
と、うろたえるコリンの前に、ケネスが現れた。
「だ、誰や?」
「新しくゴールドマン商会の当主になった、ケネス・ゴールドマンです。叔父上、投降してください」
「はぁ!?」
ケネスは長々と文章が書き連ねられた書状を見せつけ、宣言する。
「中央政府に仇なす者として、叔父上は指名手配されました」
「仇て、んなアホな……。わし、金山掘ってるだけやで」
「それが罪です。金火狐一族は、これまで偽の神の名を騙って商売を行い、その利益を独占していました。その罪を、天帝陛下がこのように咎めたわけです。
さ、こちらにどうぞ。抵抗はなさらないよう」
ケネスが右手を差し伸べた途端、彼の背後にいた兵士たちが剣や槍を構える。
「……アホな」
コリンは呆然としながらも、ケネスに従った。
同様のことを、ケネスは央中各地で活動していた金火狐一族全員に行った。
その結果、一族の事業と資産はすべてケネス一人の元に集められ、その合計は数十億クラムにも上った。
一族はケネスを当主にしたことを後悔したが、既に遅かった。罷免しようにも、ケネスは中央政府軍を味方につけ、逆らう者を次々に襲撃・拘束していたからだ。
「上々なようだな、ケネス」
「ええ。おかげさまで、バーミー卿」
双月暦305年。
ゴールドマン商会と金火狐一族を完全に掌握したケネスは、中央軍の最高司令官である軍務大臣、バーミー卿と会談していた。
「しかし、思った以上にあっさりと進んでしまったものだな」
「単純なことです。商人を狙う兵士が、今までいなかっただけのこと。
これまで商人には真っ向に、商売で勝負していたのですから、決着が付かなかった。武力で勝負すれば、決着しないわけが無い」
「なるほど、なるほど。まあ、これまで戦争らしい戦争も無かったからな。こうして役に立てば、軍人冥利に尽きると言うものだ」
バーミーはそう言って、うまそうにワインを飲み干した。
「……ふぅ。それでケネス、次の計画は?」
「もう整えています。後は、実行に移すだけです」
「頼もしいことだ」
神話の世界は刻一刻と、腐り始めていた。
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NoTitle
はじめまして、主さん。
気に入っていただけて何よりです。
これからも頑張りますね(*゚ー゚)b
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これからも頑張りますね(*゚ー゚)b
NoTitle
こんばんは&初めまして!
火紅狐 第一部を読まさせていただきました。
寝る前のちょっとした楽しみになっています。
良いお話しをありがとうございます。
これからも頑張ってくださいませ!
火紅狐 第一部を読まさせていただきました。
寝る前のちょっとした楽しみになっています。
良いお話しをありがとうございます。
これからも頑張ってくださいませ!
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NoTitle
フォコくんにとっても、これからが苦難のはじまり。