「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・初陣記 1
フォコの話、34話目。
海賊団、出動。
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海賊団、出動。
1.
「うん」
向かい合って仕事をしていたティナが、ぽつりとつぶやいた。
「うまくなったね」
「え?」
フォコはティナに顔を向け、尋ね返す。
「何ですか?」
「うまくなった」
「……ども」
それが西方語と塗装、どちらのことを指すのかは分からなかったが、フォコはうなずいておいた。
フォコが造船所で働き始めてから、一月が経った。
その間、フォコはずっとティナと一緒に働き、前述の二つを学んでいた。
「……んー」
が、その毎日に、フォコはしっくり来ないものを感じていた。
「あの」
「なに?」
「えっと……、僕たちって、海賊、なんですよね?」
「うん」
その返答に何となく安心しつつ――犯罪行為をすると確認して安堵するのも、おかしな話なのだが――続けて尋ねてみる。
「ずっと、船造ってますよね?」
「うん」
「そのー……、どこかに、襲いに行ったりはしないんですか?」
「平和だもん」
「は、あ……?」
ティナの言った意味が分からず、詳しく尋ねてみる。
「その、海賊ってむしろ、平和を乱す方じゃ……」
「……?」
と、今度はティナが腑に落ちなさそうな顔をした。
「ホコウ君、『砂嵐』のこと知ってるって聞いたけど」
「あ、えっと……、おやっさんからは、『オレたちは海賊やってるんだ』くらいにしか」
「そうなんだ」
そこでティナは、たどたどしくながら説明してくれた。
「あたしたちは、何もしてない人たちを襲わないの。誰かを襲ってる、レヴィアとかの軍を襲うの。いわゆる、義賊」
「あ、そうなんですか? ……って、軍を襲うんですか!?」
「うん」
コクリとうなずくティナに、フォコは目を丸くする。
「そんな……、大丈夫なんですか? あ、危なくなんかは……」
「うち、誰も死んだことないよ」
「え……」
そう返され、フォコは周りを見渡す。
「アミル、それ取ってー」
「ほらよ、っと」
木板をぽいぽいと投げ、ひょいひょいと受け取る「狼」二人、アミルとマナはいかにも屈強そうに見える。
(まあ、あの二人は強そうな気、すんねけど……)
「……で、こうすると、……うーむ、少し大きいか」
始業から終業まで、黙々と机に向かうモーリス。
「お、っとと」
木箱と木箱の間をくぐろうとし、大きな腹を引っ掛けるジャール。
「……誰も?」
「うん」
もう一度、ティナはコクリとうなずく。
(……この3人、強そうな気、全然せーへんねやけどなぁ)
本当に海賊などできるのかと、不安に思ったその時だった。
「おーい、お前ら!」
ガラガラと音を立て、頭領のクリオが入ってきた。
「どうした、おやっさん?」
アバントが尋ねると、クリオは手をバタバタと振って怒鳴った。
「どーしたもこーしたもねー! カトン島を、レヴィア軍が襲ってるらしい!」
「何だって!? ……よし、お前ら!」
アバントは造船所の皆に、手早く指示を出す。
「10分で片付けだ! すぐ、向かうぞ!」
「おう!」
バタバタと片づけを始める周囲に、フォコは何が起こっているのか把握できない。
「ホコウ君、あたしたちも準備」
「え? えっ?」
「海賊、やるの」
「うん」
向かい合って仕事をしていたティナが、ぽつりとつぶやいた。
「うまくなったね」
「え?」
フォコはティナに顔を向け、尋ね返す。
「何ですか?」
「うまくなった」
「……ども」
それが西方語と塗装、どちらのことを指すのかは分からなかったが、フォコはうなずいておいた。
フォコが造船所で働き始めてから、一月が経った。
その間、フォコはずっとティナと一緒に働き、前述の二つを学んでいた。
「……んー」
が、その毎日に、フォコはしっくり来ないものを感じていた。
「あの」
「なに?」
「えっと……、僕たちって、海賊、なんですよね?」
「うん」
その返答に何となく安心しつつ――犯罪行為をすると確認して安堵するのも、おかしな話なのだが――続けて尋ねてみる。
「ずっと、船造ってますよね?」
「うん」
「そのー……、どこかに、襲いに行ったりはしないんですか?」
「平和だもん」
「は、あ……?」
ティナの言った意味が分からず、詳しく尋ねてみる。
「その、海賊ってむしろ、平和を乱す方じゃ……」
「……?」
と、今度はティナが腑に落ちなさそうな顔をした。
「ホコウ君、『砂嵐』のこと知ってるって聞いたけど」
「あ、えっと……、おやっさんからは、『オレたちは海賊やってるんだ』くらいにしか」
「そうなんだ」
そこでティナは、たどたどしくながら説明してくれた。
「あたしたちは、何もしてない人たちを襲わないの。誰かを襲ってる、レヴィアとかの軍を襲うの。いわゆる、義賊」
「あ、そうなんですか? ……って、軍を襲うんですか!?」
「うん」
コクリとうなずくティナに、フォコは目を丸くする。
「そんな……、大丈夫なんですか? あ、危なくなんかは……」
「うち、誰も死んだことないよ」
「え……」
そう返され、フォコは周りを見渡す。
「アミル、それ取ってー」
「ほらよ、っと」
木板をぽいぽいと投げ、ひょいひょいと受け取る「狼」二人、アミルとマナはいかにも屈強そうに見える。
(まあ、あの二人は強そうな気、すんねけど……)
「……で、こうすると、……うーむ、少し大きいか」
始業から終業まで、黙々と机に向かうモーリス。
「お、っとと」
木箱と木箱の間をくぐろうとし、大きな腹を引っ掛けるジャール。
「……誰も?」
「うん」
もう一度、ティナはコクリとうなずく。
(……この3人、強そうな気、全然せーへんねやけどなぁ)
本当に海賊などできるのかと、不安に思ったその時だった。
「おーい、お前ら!」
ガラガラと音を立て、頭領のクリオが入ってきた。
「どうした、おやっさん?」
アバントが尋ねると、クリオは手をバタバタと振って怒鳴った。
「どーしたもこーしたもねー! カトン島を、レヴィア軍が襲ってるらしい!」
「何だって!? ……よし、お前ら!」
アバントは造船所の皆に、手早く指示を出す。
「10分で片付けだ! すぐ、向かうぞ!」
「おう!」
バタバタと片づけを始める周囲に、フォコは何が起こっているのか把握できない。
「ホコウ君、あたしたちも準備」
「え? えっ?」
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
昔は治安も悪かったですからね。
義賊みたいなところも実際多かったでしょうね。
海の平和を乱すものは軍でも戦う
戦国時代でもよくありましたしね。
こちらは小説収めとなります。
今年一年訪問誠にありがとうございます。
本日で今年最後のコメントにさせて頂きたいと思います。
一年間お世話になりました。
来年もよろしくお願いします。良いお年をお迎えください。
(*^^)v
義賊みたいなところも実際多かったでしょうね。
海の平和を乱すものは軍でも戦う
戦国時代でもよくありましたしね。
こちらは小説収めとなります。
今年一年訪問誠にありがとうございます。
本日で今年最後のコメントにさせて頂きたいと思います。
一年間お世話になりました。
来年もよろしくお願いします。良いお年をお迎えください。
(*^^)v
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NoTitle
悖乱の限りがつくされています。
いや、治安が行き届いていると言われている日本においてさえ、
ほとんど毎日のように、犯罪に関する報道が成されています。
平和などと言うものは、本当に稀有な事態です。
こちらこそ、今年も一年を通してご笑覧いただき、
誠にありがとうございました。
来年もよろしくお願い致します。