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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第2部

    火紅狐・憧憬記 1

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    フォコの話、40話目。
    やさぐれ火紅。




    1.
     双月暦302年、中央大陸では夏になるかと言う頃。
     フォコは15歳となっていた。



    (……慣れたくなかったんやけど)
     もうもうと煙が上がる中を、岸の方へと歩いていく。
    (慣れてしまうもん、……なんやな)
     その手には、血の付いた曲刀が握られていた。
    「よお」
     と、背後からクリオの声がする。
    「生きてたな」
    「はい。生きてました」
    「じゃ、そろそろ帰るか」
    「そうします」
     踵を返し、船に戻ろうとしたところで、クリオが「あ、そうそう」と呼び止めた。
    「何でしょう?」
    「ほれ、コレ持ってけ」
     クリオがポンと、麻袋を投げる。
    「わっ、と」
     中身はレヴィア王国の刻印が打たれた南海の通貨、ガニーだった。こちらにも漏れなく、血が付いている。
    「え、これ……」
    「敵の持ってた金だ。ま、ボーナスみたいなもんだ」
    「……はぁ。そうですか」
     いらない、と言いたかったが、そんなことを言っても、恐らくはクリオを怒らせるだけなので、フォコはそのまま握りしめた。

    「おつかれ」
     終わった後はいつも、フォコとティナは甲板に座って会話を交わす。今回も、これまでと同じように淡々と話し始めた。
    「お疲れ様です」
    「それ、何?」
    「お金です。600ガニーくらい」
    「奪ったの?」
    「おやっさんからもらいました」
    「そう」
     フォコはジャラジャラと銀貨を取り出し、ティナに見せた。
    「どうしましょう……、これ」
    「使ったら?」
    「え……、でも」
    「じゃ、捨てる?」
    「……」
     その言葉に、フォコは立ち上がりかける。が、思い直してまた座る。
    「捨てないの?」
    「……お金、捨てたら、……それはもう、……僕が僕じゃなくなりそうですから」
    「……?」
     その言葉の意味が分からず、ティナはきょとんとした。
    「……内緒にしてください」
    「うん」
    「元々、僕は央中のある商人の息子だったんです」
    「うん」
    「金とか銀とかを扱ってた商家で、中央政府に卸してたところなんです。『うち』にとって、お金は自分たちの扱っている商品そのもの、自分たちの証明みたいなもんだと思ってるんです。
     ……だから、それを捨ててしまったら、もう僕は元の自分に、戻れなくなってしまいそうな気がするんです」
    「そう」
     短く返し、ティナはフォコから視線を逸らした。
    「……じゃ、使うんだね」
    「そうですね。そっちの方がまだ、気が楽です」
    「じゃ今度」
     ティナはもう一度フォコの方を向き、尋ねてきた。
    「遊びに行かない?」
    「え?」
    「今度の休み、大きな島に遊びに行こう?」
    「……いいですね」
     フォコははにかみ、ティナの誘いを受けた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    確かに双月世界において、フォコほどお金を知る人間はそうそういないかも知れませんね。
    ただ、フォコくんにはまだまだ、お金で悩むことがいっぱいあります。

    NoTitle 

    お金の重みの知っている人の言葉ですね。
    フォコくんも。
    私はフォコくんほど金の重みを知ってないような気がしますね。。。

    NoTitle 

    この時点では、フォコにとってはランニャちゃん、
    ただの幼馴染ですからねぇ。
    多分、ランニャちゃんに対する恋愛感情って言うのは、
    ここではまだ、ほとんど無いのかも。

    NoTitle 

    ランニャたんがいるっていうのに
    浮気もん!v-413
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