「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・憧憬記 3
フォコの話、42話目。
帽子の下は?
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帽子の下は?
3.
サラム島は南海地域でも割と大きい島の一つであり、治安はかなり良い。
南海東部の交易地で、安定した利益を得ており、また、近隣諸国もその利益を享受しているため、侵略することもされることも無いからである。
マナたちと一旦別れ、フォコとティナの二人は街を散策していた。
「何する?」
「えーと……」
この一年、海賊として出動する以外にナラン島から出たことの無かったフォコは、二人きりになる状況に慣れず、そわそわとしていた。
「えっと、じゃ、とりあえず、何か食べに行きます?」
「そうね」
ティナは短く答え、くる、と背を向けて歩き出す。
「あ、ちょっ……?」
「こっち」
すたすたと歩き出すティナに、フォコは慌てて付いて行った。
「何度か来たことあるから」
「そうなんですか」
一年が経っても、相変わらずティナはあまり、フォコと目を合わせない。
「ここ」
「あ、はい」
ここでも、あまり話さないうちに目的地に着いてしまった。
「何食べる?」
「えーと……」
フォコはメニューを見ながら、ティナの顔のことを考えていた。
(この人、全然顔見せようとしはらへんよなぁ)
「あたしは白身魚フライとトマトとチーズのサンドイッチ」
(て言うか、帽子の下も見たことあらへんし)
「それと、レンズ豆と玉ネギの海鮮スープ」
(……もしかして、ハゲてたり?)
「ホコウ君は何にする?」
ティナが尋ねてくるが、フォコは気付かない。
(まさかなぁ……。でもホンマ、造船所でも砂猫楼でも、脱いだところ見たことあらへんし)
「ホコウ君?」
「あ、はい?」
もう一度声をかけられ、ようやく返事をする。
「決まった?」
「え、えーと、……あ、じゃあ、ティナさんと同じものを」
「分かった」
ティナは店員を呼び、注文する。その間も、フォコはティナの帽子を注視していた。
「……?」
と、そこでティナが首をかしげる。帽子を深く被っているので定かでは無いが、目が合ったらしい。
「なに?」
「いえ」
「気になる?」
そう言って、ティナは帽子のつばを上げた。
「……そうですね、ちょっと」
「この下、見たい?」
ティナはトントンと、つばを叩いた。
「興味はあります。でも……、見せたくない、ですよね」
「うん」
ティナはうなずき、帽子を深く被り直した。
「でも」
「でも?」
「ホコウ君がどうしても見たいなら、見せるよ」
「い、いえ、そんな」
「……」
そう答えたフォコに、なぜかティナは不機嫌そうに、口をわずかに尖らせて見せた。
「あ、いや、見たくないわけじゃ」
「ご飯来た。食べよう」
「はい……」
その後、二人は黙々と食事を取り、そのまま店を出た。
食事の後、ティナはずっと黙ったまま、街中を進んでいった。どこに行くのか尋ねようとしたが、不機嫌な様子を見せたままだったので、フォコは黙って付いて行くしかなかった。
「こっち」
と、不意にティナが、フォコの手を引っ張った。
「……?」
ティナはなぜか人気の無い、裏通りに入っていく。
「あの……?」
「見せる」
「見せるって、帽子の下を、ですか?」
「そう」
それを聞いて、フォコは慌てて固辞する。
「いえ、見せたくなければ本当に……」
「見せたい」
「……あ、はい」
そう言われては、何も言い返せない。フォコは手を引かれるまま、裏通りを抜けていった。
サラム島は南海地域でも割と大きい島の一つであり、治安はかなり良い。
南海東部の交易地で、安定した利益を得ており、また、近隣諸国もその利益を享受しているため、侵略することもされることも無いからである。
マナたちと一旦別れ、フォコとティナの二人は街を散策していた。
「何する?」
「えーと……」
この一年、海賊として出動する以外にナラン島から出たことの無かったフォコは、二人きりになる状況に慣れず、そわそわとしていた。
「えっと、じゃ、とりあえず、何か食べに行きます?」
「そうね」
ティナは短く答え、くる、と背を向けて歩き出す。
「あ、ちょっ……?」
「こっち」
すたすたと歩き出すティナに、フォコは慌てて付いて行った。
「何度か来たことあるから」
「そうなんですか」
一年が経っても、相変わらずティナはあまり、フォコと目を合わせない。
「ここ」
「あ、はい」
ここでも、あまり話さないうちに目的地に着いてしまった。
「何食べる?」
「えーと……」
フォコはメニューを見ながら、ティナの顔のことを考えていた。
(この人、全然顔見せようとしはらへんよなぁ)
「あたしは白身魚フライとトマトとチーズのサンドイッチ」
(て言うか、帽子の下も見たことあらへんし)
「それと、レンズ豆と玉ネギの海鮮スープ」
(……もしかして、ハゲてたり?)
「ホコウ君は何にする?」
ティナが尋ねてくるが、フォコは気付かない。
(まさかなぁ……。でもホンマ、造船所でも砂猫楼でも、脱いだところ見たことあらへんし)
「ホコウ君?」
「あ、はい?」
もう一度声をかけられ、ようやく返事をする。
「決まった?」
「え、えーと、……あ、じゃあ、ティナさんと同じものを」
「分かった」
ティナは店員を呼び、注文する。その間も、フォコはティナの帽子を注視していた。
「……?」
と、そこでティナが首をかしげる。帽子を深く被っているので定かでは無いが、目が合ったらしい。
「なに?」
「いえ」
「気になる?」
そう言って、ティナは帽子のつばを上げた。
「……そうですね、ちょっと」
「この下、見たい?」
ティナはトントンと、つばを叩いた。
「興味はあります。でも……、見せたくない、ですよね」
「うん」
ティナはうなずき、帽子を深く被り直した。
「でも」
「でも?」
「ホコウ君がどうしても見たいなら、見せるよ」
「い、いえ、そんな」
「……」
そう答えたフォコに、なぜかティナは不機嫌そうに、口をわずかに尖らせて見せた。
「あ、いや、見たくないわけじゃ」
「ご飯来た。食べよう」
「はい……」
その後、二人は黙々と食事を取り、そのまま店を出た。
食事の後、ティナはずっと黙ったまま、街中を進んでいった。どこに行くのか尋ねようとしたが、不機嫌な様子を見せたままだったので、フォコは黙って付いて行くしかなかった。
「こっち」
と、不意にティナが、フォコの手を引っ張った。
「……?」
ティナはなぜか人気の無い、裏通りに入っていく。
「あの……?」
「見せる」
「見せるって、帽子の下を、ですか?」
「そう」
それを聞いて、フォコは慌てて固辞する。
「いえ、見せたくなければ本当に……」
「見せたい」
「……あ、はい」
そう言われては、何も言い返せない。フォコは手を引かれるまま、裏通りを抜けていった。



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