「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・三兎記 1
フォコの話、44話目。
三人兎とカードゲーム。
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三人兎とカードゲーム。
1.
ジョーヌ海運特別造船所には、2種類の休養日がある。
一つは、クリオが定めた、造船所を完全に閉めてしまう休日。
通常この造船所は数日間から数週間、休みなしで造船を行うため、仕事が明けた後にまとめて休みを取ることになっている。
時には半月以上に及ぶこともあり、根を詰めて仕事に明け暮れた所員たちは、この休日をのんびりと楽しむ。
そしてもう一つは、クリオのいない日。クリオは大商会の総裁であり、度々ナラン島を離れ、西方の本拠地視察・指導や、他地域への営業へ出向くことがある。
言ってしまえば、この間は「うるさい監視役」がいないのだ。自然、造船所の空気は緩み、造船のペースも若干落ちる。
しかしそのままだらけていては、クリオが戻って来た時に大目玉を食らうのは確実である。そこでルーから、「2日頑張って、1日ゆっくりって言う風にしましょう」と提案されているのだ。
元来真面目な人間が揃う特別造船所は、その提案をきっちり守っている。
そして今日は、その休養日だった。
「ああ……、うん、そこが、……うむー」
「こんな感じですか?」
フォコは魔術と学問の師匠、モーリスの肩を揉んでいた。
「……ふうー」
一通り揉み終わり、モーリスは気持ちよさそうなため息を漏らした。
「いやぁ……、ありがとう、ホコウ君。机仕事ばかりすると、どうにも肩がな」
「いえいえ、こんなことで良かったら、いつでも言ってください」
「ああ、また頼む。……と、今日は講義を受けるかね?」
「うーん……。今日は遠慮しときます」
「そうか。また受けたくなった時は、いつでも言ってくれ」
「はい。それじゃ今日は、これで」
フォコは軽くお辞儀をし、モーリスの部屋を後にした。
(今日はなんか勉強する気、起きひんねんなぁ。……ここしばらくずーっと、船造るか魔術教わるかしかやってへんからなぁ。
たまにはもうちょい、違うこともしたいねんけども)
そう思って、砂猫楼の外に出ようとしたところで――。
「火紅のおにーちゃん」
「ん?」
くい、と自分の裾を引く者がいる。
「あ、リモナちゃん」
クリオの娘、リモナだ。
「今日って、お休みだよね?」
「うん、そやけど」
「遊べる?」
「ん? んー……、ええよ」
「やったー」
リモナは垂れ気味の兎耳をピコピコ揺らし、満面に笑みを浮かべた。
リモナに手を引かれるまま、子供部屋に連れて来られたフォコの前に、クリオの三つ子の残り二人、プルーネとペルシェが座っているのが映る。
「あ、火紅にーちゃん」
「どしたの?」
「いっしょに遊ぼうと思って」
そう答えたリモナに対し、二人は同時にフォコの方を見る。
「遊ぶの?」
「あ、うん。僕で良かったら」
「いいよ」「何するの?」
誘ってきたリモナに対して、プルーネとペルシェはそれほど乗って来ない。
(うーん……、何しよかな)
とりあえず彼女たちの前に座ったフォコは、周りの玩具をくる、と見渡した。
「……あ」
と、棚の端にカードの入った小箱を見つける。
「これなんか、どないかな?」
「カード?」
「何するの?」
「そやねぇ……」
フォコは昔、クラフトランドで遊んだ「7オブ7」でもやろうかと、箱を開けてカードを見てみると――。
「……あ、と」
「どしたの?」
「あ、いや」
そのカードは、「7オブ7」の時に使ったもののような、火・氷・水・雷・土・風・天の7種類、4枚ずつのものではなかった。
それとは似ているが、まず「天」のカードが1枚しか無い。また、残る6種も4枚ではなく、9枚となっており、それぞれに1~9と数字が割り振られている。
さらには「天」と同じように、「冥」と言うカードが1枚入っている。
(あー、『7オブ7』ん時の『28枚式』ちゃうな。『56枚式』の方かー……)
双月世界のカードは、大きく分けて2種類ある。どちらも占いやゲームに使われる点は同じだが、その枚数と内容が違うのだ。
「……まあ、ええか」
フォコはカードを切りながら、リモナたちと何をしようか相談することにした。
ジョーヌ海運特別造船所には、2種類の休養日がある。
一つは、クリオが定めた、造船所を完全に閉めてしまう休日。
通常この造船所は数日間から数週間、休みなしで造船を行うため、仕事が明けた後にまとめて休みを取ることになっている。
時には半月以上に及ぶこともあり、根を詰めて仕事に明け暮れた所員たちは、この休日をのんびりと楽しむ。
そしてもう一つは、クリオのいない日。クリオは大商会の総裁であり、度々ナラン島を離れ、西方の本拠地視察・指導や、他地域への営業へ出向くことがある。
言ってしまえば、この間は「うるさい監視役」がいないのだ。自然、造船所の空気は緩み、造船のペースも若干落ちる。
しかしそのままだらけていては、クリオが戻って来た時に大目玉を食らうのは確実である。そこでルーから、「2日頑張って、1日ゆっくりって言う風にしましょう」と提案されているのだ。
元来真面目な人間が揃う特別造船所は、その提案をきっちり守っている。
そして今日は、その休養日だった。
「ああ……、うん、そこが、……うむー」
「こんな感じですか?」
フォコは魔術と学問の師匠、モーリスの肩を揉んでいた。
「……ふうー」
一通り揉み終わり、モーリスは気持ちよさそうなため息を漏らした。
「いやぁ……、ありがとう、ホコウ君。机仕事ばかりすると、どうにも肩がな」
「いえいえ、こんなことで良かったら、いつでも言ってください」
「ああ、また頼む。……と、今日は講義を受けるかね?」
「うーん……。今日は遠慮しときます」
「そうか。また受けたくなった時は、いつでも言ってくれ」
「はい。それじゃ今日は、これで」
フォコは軽くお辞儀をし、モーリスの部屋を後にした。
(今日はなんか勉強する気、起きひんねんなぁ。……ここしばらくずーっと、船造るか魔術教わるかしかやってへんからなぁ。
たまにはもうちょい、違うこともしたいねんけども)
そう思って、砂猫楼の外に出ようとしたところで――。
「火紅のおにーちゃん」
「ん?」
くい、と自分の裾を引く者がいる。
「あ、リモナちゃん」
クリオの娘、リモナだ。
「今日って、お休みだよね?」
「うん、そやけど」
「遊べる?」
「ん? んー……、ええよ」
「やったー」
リモナは垂れ気味の兎耳をピコピコ揺らし、満面に笑みを浮かべた。
リモナに手を引かれるまま、子供部屋に連れて来られたフォコの前に、クリオの三つ子の残り二人、プルーネとペルシェが座っているのが映る。
「あ、火紅にーちゃん」
「どしたの?」
「いっしょに遊ぼうと思って」
そう答えたリモナに対し、二人は同時にフォコの方を見る。
「遊ぶの?」
「あ、うん。僕で良かったら」
「いいよ」「何するの?」
誘ってきたリモナに対して、プルーネとペルシェはそれほど乗って来ない。
(うーん……、何しよかな)
とりあえず彼女たちの前に座ったフォコは、周りの玩具をくる、と見渡した。
「……あ」
と、棚の端にカードの入った小箱を見つける。
「これなんか、どないかな?」
「カード?」
「何するの?」
「そやねぇ……」
フォコは昔、クラフトランドで遊んだ「7オブ7」でもやろうかと、箱を開けてカードを見てみると――。
「……あ、と」
「どしたの?」
「あ、いや」
そのカードは、「7オブ7」の時に使ったもののような、火・氷・水・雷・土・風・天の7種類、4枚ずつのものではなかった。
それとは似ているが、まず「天」のカードが1枚しか無い。また、残る6種も4枚ではなく、9枚となっており、それぞれに1~9と数字が割り振られている。
さらには「天」と同じように、「冥」と言うカードが1枚入っている。
(あー、『7オブ7』ん時の『28枚式』ちゃうな。『56枚式』の方かー……)
双月世界のカードは、大きく分けて2種類ある。どちらも占いやゲームに使われる点は同じだが、その枚数と内容が違うのだ。
「……まあ、ええか」
フォコはカードを切りながら、リモナたちと何をしようか相談することにした。



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