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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第2部

    火紅狐・三兎記 3

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    フォコの話、46話目。
    可愛らしい賭け。




    3.
     そのまま何回か続けたところで、ペルシェが提案した。
    「ねー、火紅にーちゃん。かけ、しない?」
    「へ?」
    「このままダラダラって言うのも、何だかだるいなーって」
    「ええけど……」
     フォコの脳裏に、クリオの顔が浮かぶ。
    (変なもん賭けたら、後でおやっさんに怒られるやろなぁ。何か無難なもんにせえへんと)
     そう考えていたところに、リモナからの提案が出た。
    「じゃあさ、じゃあさ、こんなのどう?
     あたしたち3人のだれかが勝ったら、次のお休みに、おにーちゃんのおごりでサラム島に遊びに行く」
    「じゃあ、僕が勝ったら?」
    「……どーしよ?」
     兎娘三人は、内輪でこそこそと相談する。
    「……じゃあさ……」「……うん……」「……いいね」
     三人は一斉に向き直り、声を揃えてこう言った。
    「あたしたち三人と、サラム島でデートなんて」「ちょ」
     その提案に、フォコは苦笑する。
    「それ、勝っても負けても一緒ちゃうん?」
    「バレたかー」
     指摘され、リモナがぺろ、と舌を出す。
    「じゃあ……」「こんなのはどうかしら?」
     と、フォコの背後から声がかけられる。
    「あ、おかみさん」「おかーさん」
     ちょうど洗濯を終えたところらしく、ルーが洗濯籠を抱えながら部屋に入ってきた。
    「ホコウ君が勝ったら、お父さん帰って来た時に三人で、ご飯作って待つ」
    「えー」「あたしたちが作るの?」「できるかなぁ」
    「それくらいの方が、賭けにはいいんじゃない? ね、やってごらん?」
     ルーの提案に、三人娘はまた輪になる。
    「……どーする?」「……うーん……」「……でも喜ぶよね、お父さん」
     意見がまとまったらしく、三人は同時にうなずいた。
    「いいよ」「それで」「やる」
    「頑張ってね、ホコウ君」
    「ええ、まあ。やってみます」

     どんなゲームでも、賭けの要素が入れば雰囲気はガラリと変わる。
     先程までは和気あいあいと、のんびり楽しんでいた四人だったが、この局では誰もが、真剣みを帯びた目でカードを切っている。
    「『火の4』」
    「『火の7』」
    「『火の2』」
     特に、三人娘の連携は鋭かった。
     いつの間に相談を付けたのか、と思うほど、フォコの手を止め、自分たちがサクサクと進めるようにカードを立て続けに切ってくる。
    「……パス」
     フォコはこれで3連続、カードを捨てられずにいた。
    (しもた……。そうや、このゲーム。示し合わせて打たれたら、……手も足も出えへんねや)
    「『水の2』」「『水の6』」「『雷の6』」
     勝負は中盤に差し掛かり、フォコの手元には残り9枚、対して、三人娘はそれぞれ、リモナが4枚、ペルシェが5枚、プルーネも同じく5枚、と言う状況になる。
     幸いにして、フォコは「冥」のカードを持っている。その気になれば、1人は足止めすることができる。が、そうしたとして、残り2人の快走は止められない。
     と言うより、「冥」のターンを処理しきれず、1人に大量のカードが集まることになれば、残り2人が勝つように、その1人が自在にカードを切ることが可能になってしまう。
    (使いどころ、めっちゃ難しいなぁ……)
    「『土の9』」「『土の1』」「『火の1』」
     終盤に差し掛かっても、相変わらず3人娘の連携は留まるところを知らない。
    「『火の』……、えーと、『9』」
     ようやくフォコが一枚切ったところで、ようやく変化が訪れた。
    「……むー」
     順番が回ってきたリモナが、渋い顔になる。どうやら、切れるカードが無くなってしまったらしい。
    「……無い」
     と、ペルシェも肩をすくめる。
    「あ、じゃあわたし出すね。『天』」
    (あれ……? 三人なだれ込むようにして切れた? なんぼ三つ子や言うても、タイミング良すぎるなぁ)
     目の前で起こったその現象に、フォコはある仮説を立てた。
    (と、言うことは――そもそもカード切って配ったんは僕やし、いくらなんでも、イカサマなんかでけへんやろし、ホンマのホンマに偶然――この三人、綺麗にカード揃っとってんな。
     例えばこんな風……?)

     リモナ………X1、X2、Y1、Y3
     ペルシェ……X3、X4、Z1、Z4
     プルーネ……Y2、Y4、Z2、Z3

    (ほんで、僕がA1やらB4やらC2やらって、リモナちゃんたちと噛み合わず、バラッバラに持っとる状態。
     僕と関係なしに、三人らの手の中だけで話がまとめられる状況にあるねんな。……この仮説が正しい、としたら)
     フォコは頭の中で素早く状況を回し、勝ち筋を検討した。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    ゲームとギャンブルでは大分違ってきますね。
    フォコくんはギャンブルになると強いタイプです。

    NoTitle 

    ゲームに賭け事は必要ですね。
    純粋に楽しむだけだというわけにはいかないのがゲームの醍醐味。

    NoTitle 

    どっちにしても、フォコくんには利益の無い賭けだったり。

    NoTitle 

    負けたほうがご褒美だとv-388
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