「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・三兎記 4
フォコの話、47話目。
歯車をずらす。
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歯車をずらす。
4.
それぞれの残りが、フォコ6枚、リモナ2枚、ペルシェ3枚、プルーネ2枚になったところで、プルーネがカードを切る。
「『水の3』。残り1枚になったよ!」
自分たちの勝利を確信し、三人娘は嬉しそうに笑う。
「ねー、何買ってもらう?」「あたしは人形がいいな。こないだ、かわいいの見つけたんだ」「じゃ、わたしは……」
三人の気持ちは、既にサラム島での買い物に移っているようだ。
「ちょ、ちょ。まだ終わってへんよー」
「あ」「そうだった」「切って切って、はやくー」
三人娘は期待に満ちた目で、フォコの手元に握られたカードを見ている。
「ほんじゃ、……はい」
「え」「え」「え」
フォコはここで、「冥」のカードを切った。
「次のカードは、……そやね、『火のカード』で」
「あぅ」
残り2枚の状態にあったリモナは、それをしのげなかった。
「……くすん」
仕方なく、リモナは今まで捨てられたカードを引き取る。
「……あたしもない」
続いて、ペルシェもパスする。
「……パスぅ」
三人娘が何もできないまま、フォコの番になる。
「じゃ、『火の6』」
残り2枚から、一気に47枚抱える羽目になったリモナは、当然これを通せた。
「『火の2』」
が、その後が続かない。
「ぱ、パス」
「パス……」
「ほい、『火の3』」
フォコの残りカード枚数が、みるみる減っていく。
「『土の3』、……どう?」
「……」
「……」
一巡するが、ペルシェとプルーネは動けない。
「僕も、パス」
「あ、じゃあ、……『土の4』」
「……パス」「……パスぅ」
リモナは次々にカードを切ってはみるが、どれも残り二人の手持ちと噛み合わない。
(一旦ずれたら、……多分もう、この局は合わせられへんやろな。
さっきみたいに並んで6枚、7枚っちゅうんやったらともかく、一人だけ大量にあれこれ持っとって、残り二人にあんまりカードのない、この状況や。
何切ったら、元通りに合わせられる? ……それこそ、ギャンブルになってしまうわ。
まあ、ここで『天』切られたらアガられるかも知れへんけど、……まだ40枚も手持ちあるんや。切るっちゅう考えに行けるかどうか……?)
その後もリモナの切るカードは、ことごとくペルシェとプルーネの手持ちにつながらず、三人娘の流れから外れていたフォコの手持ちが、じわじわと減っていった。
「おう、今帰ったぞ」
半月後、クリオが西方から戻ってきた。
「おかえりなさーい」
久々に戻ってきた夫を、ルーが満面に笑みをたたえつつ、桟橋で出迎える。
「ん? ……なんかいいコトでもあったのか、ルー?」
「ええ。さ、お疲れでしょう? 早く家に上がってくださいな」
「おう」
促されるまま砂猫楼に入ったクリオを、今度は三人娘が出迎えた。
「おかえりなさーい」
「おう、ただいま。……ん?」
良く見れば、三人ともエプロン姿である。
「何か作ったのか?」
「うん」「お父さんに」「ごちそー作ったよ」
「マジか? ……へーぇ」
食卓に着いたクリオは、顔をほころばせる。
「……ま、見てくれはちっと難があるが、……うまそーな匂いだ」
「食べて食べて」「はやくー」「お酒もどーぞ」
「おう」
クリオはひょいと箸を手に取り、子供たちの作った料理を口に運ぶ。
「んぐ、もぐ……、お、うめぇ」
「やったー」
父に料理をほめられ、三人は手を取り合って喜んだ。
「喜んでるみたいですよ」
「そう、良かった」
台所で所員の料理を作っていたルーはフォコの報告を受け、にっこりと微笑んだ。
「でも、ホコウ君には悪いことをしちゃいましたね。あの賭け、よくよく考えればホコウ君にいいこと無かったし」
「ああ、いや、僕は別に……」
ぱたぱたと手を振るフォコに、ルーはくすっと笑う。
「そうね、じゃあ、……今日のご飯、ちょっとだけおかず多めにしますね」
「あ、はい。ども」
小さく頭を下げたフォコに、ルーはほんの少し声を潜めて話を続ける。
「本当に、ありがとね。クリオはいつも忙しいし、わたしもお掃除とかお洗濯とかしてるから、あの子たちにあんまり、構ってあげられなくて」
「いえ、そんな。僕で良かったら、いつでも遊び相手になりますよ」
「本当に? ……じゃあ、またお願いしようかしら」
「はい、気軽に言ってください」
フォコの博才・博運は生来、強いらしい。
クラフトランドの時も、この時も。ゲームや駆け引きの本質や流れを見抜く力が鋭く、また、ここぞと言う時に強力な一手を打ち出せる運も持ち合わせている。
後の大商人として広く知られることになる彼だが、こちらの方でも、「ある伝説」を残している。
が、その話はまた、然るべき機会に――。
火紅狐・三兎記 終
それぞれの残りが、フォコ6枚、リモナ2枚、ペルシェ3枚、プルーネ2枚になったところで、プルーネがカードを切る。
「『水の3』。残り1枚になったよ!」
自分たちの勝利を確信し、三人娘は嬉しそうに笑う。
「ねー、何買ってもらう?」「あたしは人形がいいな。こないだ、かわいいの見つけたんだ」「じゃ、わたしは……」
三人の気持ちは、既にサラム島での買い物に移っているようだ。
「ちょ、ちょ。まだ終わってへんよー」
「あ」「そうだった」「切って切って、はやくー」
三人娘は期待に満ちた目で、フォコの手元に握られたカードを見ている。
「ほんじゃ、……はい」
「え」「え」「え」
フォコはここで、「冥」のカードを切った。
「次のカードは、……そやね、『火のカード』で」
「あぅ」
残り2枚の状態にあったリモナは、それをしのげなかった。
「……くすん」
仕方なく、リモナは今まで捨てられたカードを引き取る。
「……あたしもない」
続いて、ペルシェもパスする。
「……パスぅ」
三人娘が何もできないまま、フォコの番になる。
「じゃ、『火の6』」
残り2枚から、一気に47枚抱える羽目になったリモナは、当然これを通せた。
「『火の2』」
が、その後が続かない。
「ぱ、パス」
「パス……」
「ほい、『火の3』」
フォコの残りカード枚数が、みるみる減っていく。
「『土の3』、……どう?」
「……」
「……」
一巡するが、ペルシェとプルーネは動けない。
「僕も、パス」
「あ、じゃあ、……『土の4』」
「……パス」「……パスぅ」
リモナは次々にカードを切ってはみるが、どれも残り二人の手持ちと噛み合わない。
(一旦ずれたら、……多分もう、この局は合わせられへんやろな。
さっきみたいに並んで6枚、7枚っちゅうんやったらともかく、一人だけ大量にあれこれ持っとって、残り二人にあんまりカードのない、この状況や。
何切ったら、元通りに合わせられる? ……それこそ、ギャンブルになってしまうわ。
まあ、ここで『天』切られたらアガられるかも知れへんけど、……まだ40枚も手持ちあるんや。切るっちゅう考えに行けるかどうか……?)
その後もリモナの切るカードは、ことごとくペルシェとプルーネの手持ちにつながらず、三人娘の流れから外れていたフォコの手持ちが、じわじわと減っていった。
「おう、今帰ったぞ」
半月後、クリオが西方から戻ってきた。
「おかえりなさーい」
久々に戻ってきた夫を、ルーが満面に笑みをたたえつつ、桟橋で出迎える。
「ん? ……なんかいいコトでもあったのか、ルー?」
「ええ。さ、お疲れでしょう? 早く家に上がってくださいな」
「おう」
促されるまま砂猫楼に入ったクリオを、今度は三人娘が出迎えた。
「おかえりなさーい」
「おう、ただいま。……ん?」
良く見れば、三人ともエプロン姿である。
「何か作ったのか?」
「うん」「お父さんに」「ごちそー作ったよ」
「マジか? ……へーぇ」
食卓に着いたクリオは、顔をほころばせる。
「……ま、見てくれはちっと難があるが、……うまそーな匂いだ」
「食べて食べて」「はやくー」「お酒もどーぞ」
「おう」
クリオはひょいと箸を手に取り、子供たちの作った料理を口に運ぶ。
「んぐ、もぐ……、お、うめぇ」
「やったー」
父に料理をほめられ、三人は手を取り合って喜んだ。
「喜んでるみたいですよ」
「そう、良かった」
台所で所員の料理を作っていたルーはフォコの報告を受け、にっこりと微笑んだ。
「でも、ホコウ君には悪いことをしちゃいましたね。あの賭け、よくよく考えればホコウ君にいいこと無かったし」
「ああ、いや、僕は別に……」
ぱたぱたと手を振るフォコに、ルーはくすっと笑う。
「そうね、じゃあ、……今日のご飯、ちょっとだけおかず多めにしますね」
「あ、はい。ども」
小さく頭を下げたフォコに、ルーはほんの少し声を潜めて話を続ける。
「本当に、ありがとね。クリオはいつも忙しいし、わたしもお掃除とかお洗濯とかしてるから、あの子たちにあんまり、構ってあげられなくて」
「いえ、そんな。僕で良かったら、いつでも遊び相手になりますよ」
「本当に? ……じゃあ、またお願いしようかしら」
「はい、気軽に言ってください」
フォコの博才・博運は生来、強いらしい。
クラフトランドの時も、この時も。ゲームや駆け引きの本質や流れを見抜く力が鋭く、また、ここぞと言う時に強力な一手を打ち出せる運も持ち合わせている。
後の大商人として広く知られることになる彼だが、こちらの方でも、「ある伝説」を残している。
が、その話はまた、然るべき機会に――。
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~ Comment ~
NoTitle
生粋の運を持主というのはいますからね。
金に愛された才能というか。
身分に愛された才能というか。
そういうのを天から愛された才能というのでしょうね。
フォコくんもそういう人なのか。。。
金に愛された才能というか。
身分に愛された才能というか。
そういうのを天から愛された才能というのでしょうね。
フォコくんもそういう人なのか。。。
NoTitle
白髪にはなりません。
アゴも尖りません。
10年も対局しません。
血も抜きません。
ただ、相手を完膚なきまでにボコボコにすることはあります。
アゴも尖りません。
10年も対局しません。
血も抜きません。
ただ、相手を完膚なきまでにボコボコにすることはあります。
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NoTitle
今のところは、まだ、何とは……。