「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・職人記 4
フォコの話、51話目。
一日に二度の襲撃と敗北。
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一日に二度の襲撃と敗北。
4.
「……!」
単眼鏡には、一隻の小さな船が見えていた。そして、その船の横にもう一つ、大きな船が横付けされているのも確認できた。
「おやっさん!」
「何だ、アバント? いきなりでけー声出して」
「あれを見てくれ!」
「あん?」
言われてクリオも、その船を単眼鏡で覗く。
「……あ!? 襲われてんじゃねーか、おい!」
クリオはバタバタと甲板を駆け、操舵していたジャールのところに飛び込んだ。
「ジャール! 4時方向に旋回だ! 船が襲われてる!」
「了解しゃーしたっ!」
ジャールは勢い良く舵を回し、船の向きを変える。
「全員甲板に集まれ! マスト動かせ!」
「了解!」
船内にいたフォコたちも、慌ただしく動き始める。「テンペスト」号はギシギシと身を軋ませ、その現場へと向かった。
幸い、旋回したところで船は追い風をつかみ、現場へはそう遅れることなく到着した。
「……!」「……!?」
船を襲っていたのは、先程キルク島から追い払ったレヴィア軍だった。相手も「テンペスト」を確認したらしく、ざわめきが伝わってくる。
「あいつら、運が悪いにも程があるな」
「まったくだ! よりによって……」
クリオは曲刀を振り上げ、船がビリビリと震えるほどの大声で叫んだ。
「またオレたちに、ブチのめされるとはなあああぁッ!」
「……っ」「……! ……!」
その怒鳴り声に恐れをなしたらしく、レヴィア軍の軍艦はたちまち、襲っていた船から離れていった。
「……へっへ、流石に一日2回も負けたくねーらしい」
クリオがニヤリと笑って、後ろを振り向くと――。
「……おっと、怒鳴りすぎちまったか」
「か……、あ……」
甲板でその、雷鳴のような怒鳴り声を聞いていた船員たちは皆、耳を抑えてうずくまっていた。
(どこから声出してんねや、おやっさん……)
ともかく、クリオたち一行は襲われていた船の横に付き、船員たちの安否を確かめることにした。
「おーい、大丈夫かぁ?」
「は、はい」
クリオの呼びかけに、船首の方から人が現れた。
「……お前さんよ」
その姿を見て、クリオはため息をつく。
「大丈夫じゃなきゃ、大丈夫って言うなよ。……脚」
「あ、かすり傷ですから」
「ソレがか? 良く見てみろよ」
「……ひゃっ」
クリオの指摘に、素直に従った船員は自分の脚を見て、驚いた声を上げた。レヴィア軍が放ったと思われる矢が、彼の大腿を貫通して突き刺さっていたからだ。
「……い、痛い、痛たたた」
どうやら、目で確認した途端に痛みを感じ始めたらしい。船員はその場に、べちゃりと倒れこんだ。
「手当てしてやる。おーい、薬箱持って……、っと、ありがとよ」
クリオが命じる前に、モーリスが薬箱を持ってきてくれていた。
「私が処置しておこう。船長は他に負傷者がいないか、確認を頼む」
「あいよ。……おいお前、こっち来い」
クリオは「テンペスト」に乗るフォコに向かって手招きした。
ちなみに、海賊行為中は互いの名前を呼ばないことになっている。正体が発覚しないようにと言う配慮からである。
「はい」
「手伝え。誰か動けねーヤツがいたら、運んで手当てしてやろう」
「分かりました」
クリオはフォコを伴い、甲板や船室を回った。
10分後、甲板に怪我を負った者が集められ、クリオたちの手によって手当てが施された。
「ま、死人がいなくて何よりだな。……しかし」
クリオはリーダー格の、金髪の狼獣人に尋ねた。
「アンタら、何で襲われてたんだ? ケガ人運ぶために、あっちこっち見て回らせてもらったがよ、金目のモンなんぞ何にも無かったが」
「それが、我々にもさっぱりなんだ。いきなり追いかけてきて、矢をバシバシ浴びせてきて……」
「ってことは、もしかしたら憂さ晴らしかも知れんな」
アバントの言葉に、クリオは短くうなる。
「むう……、オレたちに負けた腹いせに、ってコトか。そうだとしたら、アンタらにゃ悪いコトしちまったな」
「と、言うと?」
きょとんとする「狼」に、クリオは先程キルク島でレヴィア軍を追い払ったことを説明した。
「ああ……、それじゃうわさの『砂嵐』って、皆さんのことだったんだな」
「済まねーな、本当。まさかアンタらにとばっちりが来るとは思わなかった」
「いや、こうして助けてもらったわけだし。むしろ、何か礼をしなければ」
「いいって、そんなの。アンタらが無事に目的地まで着けりゃ、オレたちゃなーんも不満はねーよ。
アンタらの船、舵を壊されてっから、オレたちの船で目的地まで引っ張ってってやるよ。ドコ行くつもりだったんだ?」
「ああ、何と言ったかな……」
狼獣人は懐から手帳を取り出し、それを見て驚くべき行き先を継げた。
「そうそう、ナラン島だ。ジョーヌ海運特別造船所に行く途中だったんだ」
「……!」
単眼鏡には、一隻の小さな船が見えていた。そして、その船の横にもう一つ、大きな船が横付けされているのも確認できた。
「おやっさん!」
「何だ、アバント? いきなりでけー声出して」
「あれを見てくれ!」
「あん?」
言われてクリオも、その船を単眼鏡で覗く。
「……あ!? 襲われてんじゃねーか、おい!」
クリオはバタバタと甲板を駆け、操舵していたジャールのところに飛び込んだ。
「ジャール! 4時方向に旋回だ! 船が襲われてる!」
「了解しゃーしたっ!」
ジャールは勢い良く舵を回し、船の向きを変える。
「全員甲板に集まれ! マスト動かせ!」
「了解!」
船内にいたフォコたちも、慌ただしく動き始める。「テンペスト」号はギシギシと身を軋ませ、その現場へと向かった。
幸い、旋回したところで船は追い風をつかみ、現場へはそう遅れることなく到着した。
「……!」「……!?」
船を襲っていたのは、先程キルク島から追い払ったレヴィア軍だった。相手も「テンペスト」を確認したらしく、ざわめきが伝わってくる。
「あいつら、運が悪いにも程があるな」
「まったくだ! よりによって……」
クリオは曲刀を振り上げ、船がビリビリと震えるほどの大声で叫んだ。
「またオレたちに、ブチのめされるとはなあああぁッ!」
「……っ」「……! ……!」
その怒鳴り声に恐れをなしたらしく、レヴィア軍の軍艦はたちまち、襲っていた船から離れていった。
「……へっへ、流石に一日2回も負けたくねーらしい」
クリオがニヤリと笑って、後ろを振り向くと――。
「……おっと、怒鳴りすぎちまったか」
「か……、あ……」
甲板でその、雷鳴のような怒鳴り声を聞いていた船員たちは皆、耳を抑えてうずくまっていた。
(どこから声出してんねや、おやっさん……)
ともかく、クリオたち一行は襲われていた船の横に付き、船員たちの安否を確かめることにした。
「おーい、大丈夫かぁ?」
「は、はい」
クリオの呼びかけに、船首の方から人が現れた。
「……お前さんよ」
その姿を見て、クリオはため息をつく。
「大丈夫じゃなきゃ、大丈夫って言うなよ。……脚」
「あ、かすり傷ですから」
「ソレがか? 良く見てみろよ」
「……ひゃっ」
クリオの指摘に、素直に従った船員は自分の脚を見て、驚いた声を上げた。レヴィア軍が放ったと思われる矢が、彼の大腿を貫通して突き刺さっていたからだ。
「……い、痛い、痛たたた」
どうやら、目で確認した途端に痛みを感じ始めたらしい。船員はその場に、べちゃりと倒れこんだ。
「手当てしてやる。おーい、薬箱持って……、っと、ありがとよ」
クリオが命じる前に、モーリスが薬箱を持ってきてくれていた。
「私が処置しておこう。船長は他に負傷者がいないか、確認を頼む」
「あいよ。……おいお前、こっち来い」
クリオは「テンペスト」に乗るフォコに向かって手招きした。
ちなみに、海賊行為中は互いの名前を呼ばないことになっている。正体が発覚しないようにと言う配慮からである。
「はい」
「手伝え。誰か動けねーヤツがいたら、運んで手当てしてやろう」
「分かりました」
クリオはフォコを伴い、甲板や船室を回った。
10分後、甲板に怪我を負った者が集められ、クリオたちの手によって手当てが施された。
「ま、死人がいなくて何よりだな。……しかし」
クリオはリーダー格の、金髪の狼獣人に尋ねた。
「アンタら、何で襲われてたんだ? ケガ人運ぶために、あっちこっち見て回らせてもらったがよ、金目のモンなんぞ何にも無かったが」
「それが、我々にもさっぱりなんだ。いきなり追いかけてきて、矢をバシバシ浴びせてきて……」
「ってことは、もしかしたら憂さ晴らしかも知れんな」
アバントの言葉に、クリオは短くうなる。
「むう……、オレたちに負けた腹いせに、ってコトか。そうだとしたら、アンタらにゃ悪いコトしちまったな」
「と、言うと?」
きょとんとする「狼」に、クリオは先程キルク島でレヴィア軍を追い払ったことを説明した。
「ああ……、それじゃうわさの『砂嵐』って、皆さんのことだったんだな」
「済まねーな、本当。まさかアンタらにとばっちりが来るとは思わなかった」
「いや、こうして助けてもらったわけだし。むしろ、何か礼をしなければ」
「いいって、そんなの。アンタらが無事に目的地まで着けりゃ、オレたちゃなーんも不満はねーよ。
アンタらの船、舵を壊されてっから、オレたちの船で目的地まで引っ張ってってやるよ。ドコ行くつもりだったんだ?」
「ああ、何と言ったかな……」
狼獣人は懐から手帳を取り出し、それを見て驚くべき行き先を継げた。
「そうそう、ナラン島だ。ジョーヌ海運特別造船所に行く途中だったんだ」



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今日の旅岡さん

~ Comment ~
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しばらくはこうした小競り合いが続くのですかね。
小競り合いの上に大きな闘争があり。
それを考えると、まだまだ前哨戦ということですかね。
・・・ん。と言うことは大きな闘争がこの先に待っているということですかね。
小競り合いの上に大きな闘争があり。
それを考えると、まだまだ前哨戦ということですかね。
・・・ん。と言うことは大きな闘争がこの先に待っているということですかね。
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