「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・密約記 4
フォコの話、59話目。
クリオのお気に入り。
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クリオのお気に入り。
4.
管楽器の音が楽しげに響き渡り、船上パーティの始まりを告げた。
「紳士・淑女ご一同! 本日はこのパーティにご出席いただき、まことにありがとうございます!
本日のこの席に集まった方々はみな、平和を愛する素晴らしき精神を持った方々であることでしょう! どうぞその輝かしき精神を発揮し、この席を名誉あるものに彩っていただきたい!
それではご一同、各々杯を挙げてくださいませ!」
もったいぶった挨拶と共に、乾杯の音頭が取られる。
「乾杯!」
「乾杯!」
甲板の上に立つ者は皆、にこやかに杯を掲げた。
「ガツガツ、うめーなぁ」
乾杯後、クリオは即座に食事へと飛びつく。フォコも同様に、クリオの横に並んで食事に手を伸ばした。
「そうですね、もぐもぐ」
「お、コレうまいぞ。食ってみ、火紅」
「もぐ……、美味しいですね。何でしょう、これ?」
「エビかなぁ」
「カニかも」
二人で仲良く食事を楽しんでいる様子を、ルーとモーリスはほほえましく見つめていた。
「ホコウ君、ずっとクリオに付いて回ってますね」
「そうだな。このところ、私と頭領との会話にも深く入ってくるようになった。なかなか聡明で、柔軟な子だ」
「あ……、うん、それも感じますけど、わたしは何て言うか、親子みたいだなって思ったんですよ」
ルーの言葉に、モーリスは腕組をしながら再度観察する。
「ふむ、確かに」
「ホコウ君、素直で優しいし、クリオも気に入ってるんだと思います。あなたが言ったように、頭もいい子ですし。
もしかしたら、クリオも今日はアバントさんじゃなくて、最初からホコウ君を連れてくるつもりだったんじゃないかしら」
「ほう?」
「アバントさんには割とぶっきらぼうに声をかけたのに、ホコウ君には『いいじゃねーか、行こうぜ、な? な?』って、結構しつこかったんですよ」
「そうなのか。……では、私は?」
ルーはフォコたちからモーリスに目線を移し、イタズラっぽく笑ってこう言った。
「照れ隠しじゃないかしら。ホコウ君だけじゃ、気恥ずかしかったんだと思います」
「……オマケ、と言うわけか」
憮然とするモーリスに、ルーはクスクスと笑った。
「あら、嫉妬ですか?」
「違う」
「クスクス……、冗談ですよ。
さ、わたしたちもご飯、いただきましょう」
ルーはモーリスの手を引き、フォコたちの方へと向かった。
フォコたちが料理に舌鼓を打っている一方、レヴィア・ベール両国の貴賓たちも穏やかに会話を交わしていた。
「まことにこの度の席を設けていただき、ありがとうございました」
「いやいや……。我々ベール王国側としても、そうそう事を荒立てたくはないですから」
「ええ、我々もです。現在の女王は好戦的に過ぎます。もっと穏便にしてほしいと、周りはそう願っているのですが、これがなかなか……」
「しかし、まあ、こうして下の人間が協調姿勢を執っていれば、仮に何かしら衝突が起きても、その後の動きが違いますから。これからもこうして、連携を取っていかねば……」
「全くです。……ささ、どうぞ一献」
レヴィア・ベールどちらの側も、今回は穏健派が揃っていた。そのため話がこじれることもなく、そのまま今回の席は成功を収められるかに思えた。
その時だった。
「……ん?」
ベール側貴賓の目に、水平線の向こうからやってくる黒い影が映った。
「はて? パーティの間は、船の航行を停止してもらっていたはずだが……?」
「船、ですか?」
「ほら、あそこに……」
指で指し示し、その船をいぶかしがる。
「ふむ……?」
「こちらに向かってきているようだ」
「妙に早い……?」
一直線に「ブリス号」へと向かってくる船は、減速する様子を全く見せない。
「……ま、まさかっ」
「突っ込んでくる……!?」
船上の客たちは、騒然とし始めた。
管楽器の音が楽しげに響き渡り、船上パーティの始まりを告げた。
「紳士・淑女ご一同! 本日はこのパーティにご出席いただき、まことにありがとうございます!
本日のこの席に集まった方々はみな、平和を愛する素晴らしき精神を持った方々であることでしょう! どうぞその輝かしき精神を発揮し、この席を名誉あるものに彩っていただきたい!
それではご一同、各々杯を挙げてくださいませ!」
もったいぶった挨拶と共に、乾杯の音頭が取られる。
「乾杯!」
「乾杯!」
甲板の上に立つ者は皆、にこやかに杯を掲げた。
「ガツガツ、うめーなぁ」
乾杯後、クリオは即座に食事へと飛びつく。フォコも同様に、クリオの横に並んで食事に手を伸ばした。
「そうですね、もぐもぐ」
「お、コレうまいぞ。食ってみ、火紅」
「もぐ……、美味しいですね。何でしょう、これ?」
「エビかなぁ」
「カニかも」
二人で仲良く食事を楽しんでいる様子を、ルーとモーリスはほほえましく見つめていた。
「ホコウ君、ずっとクリオに付いて回ってますね」
「そうだな。このところ、私と頭領との会話にも深く入ってくるようになった。なかなか聡明で、柔軟な子だ」
「あ……、うん、それも感じますけど、わたしは何て言うか、親子みたいだなって思ったんですよ」
ルーの言葉に、モーリスは腕組をしながら再度観察する。
「ふむ、確かに」
「ホコウ君、素直で優しいし、クリオも気に入ってるんだと思います。あなたが言ったように、頭もいい子ですし。
もしかしたら、クリオも今日はアバントさんじゃなくて、最初からホコウ君を連れてくるつもりだったんじゃないかしら」
「ほう?」
「アバントさんには割とぶっきらぼうに声をかけたのに、ホコウ君には『いいじゃねーか、行こうぜ、な? な?』って、結構しつこかったんですよ」
「そうなのか。……では、私は?」
ルーはフォコたちからモーリスに目線を移し、イタズラっぽく笑ってこう言った。
「照れ隠しじゃないかしら。ホコウ君だけじゃ、気恥ずかしかったんだと思います」
「……オマケ、と言うわけか」
憮然とするモーリスに、ルーはクスクスと笑った。
「あら、嫉妬ですか?」
「違う」
「クスクス……、冗談ですよ。
さ、わたしたちもご飯、いただきましょう」
ルーはモーリスの手を引き、フォコたちの方へと向かった。
フォコたちが料理に舌鼓を打っている一方、レヴィア・ベール両国の貴賓たちも穏やかに会話を交わしていた。
「まことにこの度の席を設けていただき、ありがとうございました」
「いやいや……。我々ベール王国側としても、そうそう事を荒立てたくはないですから」
「ええ、我々もです。現在の女王は好戦的に過ぎます。もっと穏便にしてほしいと、周りはそう願っているのですが、これがなかなか……」
「しかし、まあ、こうして下の人間が協調姿勢を執っていれば、仮に何かしら衝突が起きても、その後の動きが違いますから。これからもこうして、連携を取っていかねば……」
「全くです。……ささ、どうぞ一献」
レヴィア・ベールどちらの側も、今回は穏健派が揃っていた。そのため話がこじれることもなく、そのまま今回の席は成功を収められるかに思えた。
その時だった。
「……ん?」
ベール側貴賓の目に、水平線の向こうからやってくる黒い影が映った。
「はて? パーティの間は、船の航行を停止してもらっていたはずだが……?」
「船、ですか?」
「ほら、あそこに……」
指で指し示し、その船をいぶかしがる。
「ふむ……?」
「こちらに向かってきているようだ」
「妙に早い……?」
一直線に「ブリス号」へと向かってくる船は、減速する様子を全く見せない。
「……ま、まさかっ」
「突っ込んでくる……!?」
船上の客たちは、騒然とし始めた。



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~ Comment ~
NoTitle
おっと、導火線に火が点きそうな展開になってきましたね。
ここから戦争が始まるのかな?
それだけの土壌ができていますからね。
ここから戦争が始まるのかな?
それだけの土壌ができていますからね。
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NoTitle
その前段階、というところですね。詳しくは次回。