「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・海戦記 1
フォコの話、61話目。
偽物狩り。
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偽物狩り。
1.
双月暦303年の半ば。
「いい加減に……」
洋上を恐ろしいスピードで、「テンペスト」が駆け抜けていく。
「観念しやがれええぇぇッ!」
その先には、つい先程まで島を襲っていた船がいる。件の、「砂嵐」を騙った海賊船である。
「モーリス! 撃て! 撃てッ!」
「……少し、……休ませて、……くれ」
既に魔術による攻撃を何度か仕掛けており、ずっと魔術を放っていたモーリスは甲板に膝を着き、へたり込んでいる。
「へたってる場合かよッ!」
「ぼ、僕が!」
へばった師匠の代わりに、フォコが出張る。
「『ファイアランス』!」
フォコの前に白熱した火球が3つ現れ、敵船に向かって尾を引いて飛んで行く。
2つは残念ながら船体をかすめる程度だったが、それでも1つは敵船の腹を撃ち抜いた。
「よっしゃあッ! ……よし、よし、よし! 煙噴いてやがるぜ! このまま間を詰めて、……っと、反撃かッ!」
ブスブスと黒い煙を上げる敵船から、何かが飛んでくる。どうやら、相手も魔術で応戦してきたらしい。
「ジャール! 取り舵一杯ッ!」
「了解ッ」
ジャールが舵を目一杯左に切り、飛んできた風の槍をギリギリでかわす。
「風の術か……! となりゃ、相手は加速できねーな」
「何でです?」
尋ねたフォコに、モーリスがゼェゼェと荒い息を継ぎつつ答える。
「我々のように、乗組員の、半分近くが、魔術師と言う構成は、非常に稀だ。
術を、使える人間は、そうはいない、からな。術を使える、資質を持つのは、平均でも100人に、1人。この地域においても、30人に1人、いるかいないか、だ。
そして、あのクラスの、船を操るには、少なくとも10名は、必要になる。
それらの事項から、算術的に推察するに、船に乗っている魔術師は、恐らく1名だけだ。その1名が、船の推進力ではなく、攻撃に、魔力を使っているなら……」
「魔術で船を動かせるヤツはいねーってこった。……ほれ、思った通りだ。グイグイ近付いてきてるぜ。
フォコ、船にとどめ刺せッ! 動けなくしろッ!」
「は、はいっ」
フォコは相対的に迫ってきた敵船に、先程と同じ火の槍を立て続けにぶつける。
「……!」「……~!」「……ッ!」
海風でよく聞き取れないが、敵船に乗っている人間の叫ぶ声がわずかに聞こえてくる。
「……っ」
それが耳に入り、フォコは敵船に向かって掲げていた手を、思わず下げた。それを見て、クリオが声を荒げかける。
「おい、とどめ刺せって、……ああ、まあいいか。あそこまでやりゃ、動けねーな」
クリオは「テンペスト」を燃え上がる船の横に着け、声をかけた。
「そのまま死にてーか? コッチ来て投降すりゃ、命は助けてやんぞ」
だが、敵船からの応答は無い。
「おい、どうした? 死にたくねーだろ?」
二度声をかけたが、まったく反応しない。
と、突然船が激しく燃え上がる。
「な……!?」
敵船を囲むように風が起こり、それによって火が激しくなっていく。
「お、おい!? 何してんだッ!? ……モーリス、消せ!」
「無駄だ。あそこまで火勢が上がっては最早、私の力ではどうにもならない」
「……チッ、ふざけてやがる」
煙を上げて沈んでいく敵船をにらみつつ、クリオは舌打ちした。
偽物が現れて以降、クリオたち本物の「砂嵐」は躍起になって、彼らを追い掛け回していた。だが相手も巧妙に立ち回り、なかなかクリオたちの前に姿を表さなかった。
それが今回、ようやく発見することができ、捕まえることができるかと期待していたのだが――。
「まさか自爆しやがるとはな」
「何とも後味の悪い結末となったな」
ナラン島に戻った一行は、忸怩たる思いで偽物のことを話していた。
「僕が、やりすぎた、……んですかね」
暗い顔でそうつぶやいたフォコに、クリオは肩をすくめる。
「んなこた関係ねーよ。アレはただ、動きを止めさせるためだけにやったコトだ。止めた後で、オレたちは『投降しろ』って声、かけただろうが。
それに応じないってんなら、どうしようも無かったんだよ」
「……そう、ですかね」
「ま、気にすんな。ともかく、もう相手は死んだんだし、終わったことだ。
さ、仕事再開だ。早えーとこ、終わらせようぜ」
クリオは首をコキコキと鳴らしながら、皆を造船所に向かわせた。
だが、それでも――偽物は依然、現れ続けた。
双月暦303年の半ば。
「いい加減に……」
洋上を恐ろしいスピードで、「テンペスト」が駆け抜けていく。
「観念しやがれええぇぇッ!」
その先には、つい先程まで島を襲っていた船がいる。件の、「砂嵐」を騙った海賊船である。
「モーリス! 撃て! 撃てッ!」
「……少し、……休ませて、……くれ」
既に魔術による攻撃を何度か仕掛けており、ずっと魔術を放っていたモーリスは甲板に膝を着き、へたり込んでいる。
「へたってる場合かよッ!」
「ぼ、僕が!」
へばった師匠の代わりに、フォコが出張る。
「『ファイアランス』!」
フォコの前に白熱した火球が3つ現れ、敵船に向かって尾を引いて飛んで行く。
2つは残念ながら船体をかすめる程度だったが、それでも1つは敵船の腹を撃ち抜いた。
「よっしゃあッ! ……よし、よし、よし! 煙噴いてやがるぜ! このまま間を詰めて、……っと、反撃かッ!」
ブスブスと黒い煙を上げる敵船から、何かが飛んでくる。どうやら、相手も魔術で応戦してきたらしい。
「ジャール! 取り舵一杯ッ!」
「了解ッ」
ジャールが舵を目一杯左に切り、飛んできた風の槍をギリギリでかわす。
「風の術か……! となりゃ、相手は加速できねーな」
「何でです?」
尋ねたフォコに、モーリスがゼェゼェと荒い息を継ぎつつ答える。
「我々のように、乗組員の、半分近くが、魔術師と言う構成は、非常に稀だ。
術を、使える人間は、そうはいない、からな。術を使える、資質を持つのは、平均でも100人に、1人。この地域においても、30人に1人、いるかいないか、だ。
そして、あのクラスの、船を操るには、少なくとも10名は、必要になる。
それらの事項から、算術的に推察するに、船に乗っている魔術師は、恐らく1名だけだ。その1名が、船の推進力ではなく、攻撃に、魔力を使っているなら……」
「魔術で船を動かせるヤツはいねーってこった。……ほれ、思った通りだ。グイグイ近付いてきてるぜ。
フォコ、船にとどめ刺せッ! 動けなくしろッ!」
「は、はいっ」
フォコは相対的に迫ってきた敵船に、先程と同じ火の槍を立て続けにぶつける。
「……!」「……~!」「……ッ!」
海風でよく聞き取れないが、敵船に乗っている人間の叫ぶ声がわずかに聞こえてくる。
「……っ」
それが耳に入り、フォコは敵船に向かって掲げていた手を、思わず下げた。それを見て、クリオが声を荒げかける。
「おい、とどめ刺せって、……ああ、まあいいか。あそこまでやりゃ、動けねーな」
クリオは「テンペスト」を燃え上がる船の横に着け、声をかけた。
「そのまま死にてーか? コッチ来て投降すりゃ、命は助けてやんぞ」
だが、敵船からの応答は無い。
「おい、どうした? 死にたくねーだろ?」
二度声をかけたが、まったく反応しない。
と、突然船が激しく燃え上がる。
「な……!?」
敵船を囲むように風が起こり、それによって火が激しくなっていく。
「お、おい!? 何してんだッ!? ……モーリス、消せ!」
「無駄だ。あそこまで火勢が上がっては最早、私の力ではどうにもならない」
「……チッ、ふざけてやがる」
煙を上げて沈んでいく敵船をにらみつつ、クリオは舌打ちした。
偽物が現れて以降、クリオたち本物の「砂嵐」は躍起になって、彼らを追い掛け回していた。だが相手も巧妙に立ち回り、なかなかクリオたちの前に姿を表さなかった。
それが今回、ようやく発見することができ、捕まえることができるかと期待していたのだが――。
「まさか自爆しやがるとはな」
「何とも後味の悪い結末となったな」
ナラン島に戻った一行は、忸怩たる思いで偽物のことを話していた。
「僕が、やりすぎた、……んですかね」
暗い顔でそうつぶやいたフォコに、クリオは肩をすくめる。
「んなこた関係ねーよ。アレはただ、動きを止めさせるためだけにやったコトだ。止めた後で、オレたちは『投降しろ』って声、かけただろうが。
それに応じないってんなら、どうしようも無かったんだよ」
「……そう、ですかね」
「ま、気にすんな。ともかく、もう相手は死んだんだし、終わったことだ。
さ、仕事再開だ。早えーとこ、終わらせようぜ」
クリオは首をコキコキと鳴らしながら、皆を造船所に向かわせた。
だが、それでも――偽物は依然、現れ続けた。



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海賊の海賊版。
・・・ううむ。言い得て妙なコメントがありますね。
名がある集団であれば何でも真似る。
風習としてはあるのかもしれませんね。
・・・ううむ。言い得て妙なコメントがありますね。
名がある集団であれば何でも真似る。
風習としてはあるのかもしれませんね。
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どうせならいいイメージの名前を借りたいところです。