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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第2部

    火紅狐・海戦記 3

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    フォコの話、63話目。
    炎上する南海。




    3.
    「ともかくだ」
     時間と場所はベール王国、クリオとセノクとの密談に戻る。
    「このまんま放ってちゃ、ロクなコトにゃならねー。何かしら、手を打たなきゃならん」
    「確かに。偽『砂嵐』に荒らされた島は現在、壊滅的な状態だ。今はまだ海賊を装っているとは言え、いつ本性を現してそれらの地域を接収するとも限らない。
     早々に手を打ち、彼らの暴挙を止めねば」
    「ソコだよ」
     と、クリオがぱた、と机を平手で叩いた。
    「え?」
    「アイツらは何を考えたか、海賊って名乗って動いてる。となりゃ、コッチの対応は……」

     一ヶ月後、南海全域に「ベール王国が治安維持のため、哨戒艦を増員させた」と言う情報が伝わった。
     「敵」が明らかにレヴィア王国の軍であれば、ベール王国のこの対応は「挑発・威圧行動」と取られ、両国の緊張を高めることとなる。だが今回の敵は、「海賊」なのだ。レヴィア王国が咎めたとしても、「戦争目的で艦を増やしたわけでは無い」と突っぱねられればそれまでである。
     事実、レヴィア王国はこの増員に、何も言うことができなかった。言ったところで、ベール王国が前述の通り返してくるのは明白だったし、レヴィア王国による海賊行為が発覚した場合、彼らの立場は非常に危うくなる。
     そして身動きの取れないレヴィアに付け込むように――レヴィアの周辺諸国も、ベールと同じ行動を執り始めた。



    「どうなっておる……!」
     周辺諸国の対応に、アイシャは憤慨した。
    「どこへ攻め込んでも、哨戒艦に追い回されるとは! まったく腹立たしいわい!
     海賊船の装備をもっと充実し、撃破させよ!」
    「そ、そう言うわけには」
     アイシャの命令に、大臣たちは難色を示す。
    「我々の身分を隠して海賊行為をしているわけですから、自軍の装備を持たせるわけには行きません」
    「軍のものでなくとも良い! もっと良い装備をさせればそれで良い!」
    「いや、ですから」
     大臣たちはアイシャをなだめようと、説明を重ねる。
    「我々の内々で装備を用意するとなると、軍のものを使わなければなりませんし」
    「ならばあやつに、この作戦を指示したあやつに頼めばどうじゃ? あやつは武器商人じゃ、このくらいの注文は嬉々として引き受けるじゃろう」
    「あの契約は海賊船の製造のみです。『装備はレヴィア側で用意するように』と。武器の発注は別計上になります」
    「では注文せよ」
    「6席すべてに哨戒艦を撃破できるレベルのものを装備するとなると5千万クラム、およそ1400万ガニーはかかります。この額は、年間軍事予算の5分の1に相当し……」「ええい、ゴチャゴチャと!」
     苛立ちが頂点に達したアイシャは、大臣の一人を突き飛ばした。
    「多少の債務があろうと、攻め落としさえすれば万事解決するのじゃ! 債券を発行し、装備を整えさせよッ!」
     ごね倒すアイシャに、大臣たちは渋々命令を呑んだ。

    「……予想通り」
     男は、レヴィア王国からの注文書を見て、ほくそ笑んだ。
    「しめて4500万クラム、しかもそれをツケ払い(品物を先渡しにし、相手の決済時に支払う方式)とは。なんと愚かな申し出――これも無利息・無催促と思っているのかな?
     フ、フハハ、ハハハハッ……! そんなわけがないだろう……!? はまったな、レヴィア女王っ……! これでお前は、私の奴隷だっ……!」
     男はダンダンと机を叩き、狂喜乱舞した。
    「いい、いいぞっ……! 順調だ! これでまた一歩、私の野望の実現に近付いたっ……!」



     男から4500万クラム相当の武器を借り入れたレヴィア王国は、海賊船の装備を拡充した。これにより南海各地の哨戒艦と海賊船との戦いが激化し、南海の政情は不安定になった。
    「ふざけた真似しやがって……」
     状況をセノクから聞かされたクリオは苦い顔をしながらも、冷静に尋ねた。
    「だけどもよ、武器を調達したってコトは、そりゃ当然、レヴィア軍が持ってたものを拝借したってコトだよな? 他に、誰にも内緒で調達できるアテはねーワケだし。
     そんなら今度こそ、国を挙げて海賊やってるってコトを糾弾できるな」
    「いや、それが……」
    「違うのか?」
    「ああ。撃ち込まれた矢や、戦闘後、艦内に残されていった剣などを見るに、レヴィアが通常使用しているタイプではなかったそうだ」
    「じゃ、ドコのヤツなんだ?」
    「分からない。少なくとも、南海のどこの国にも同じタイプのものは無い」
    「となると、南海の外から買い付けたんだろうな。今、その剣とか矢とかはココにあんのか?」
    「ああ。友好国から、調査名目で借りたものがある。持って来させよう」
     少しして、クリオたちの前に、刃の中ほどからぽっきりと折れた剣が持ち込まれた。
    「折れてはいるが……、これは直剣だな。諸刃だし、刀身に反りが無い」
    「ああ」
    「確かに、南海じゃ直剣って使わねーな。使うとしたら央北とか央中、西方、後は北方か。……ま、恐らくコレはどこかの腹黒い、大手の武器商人が製造したモノだろうな。
     普通は、ドコが造ったか宣伝するために、商会のエンブレムだとかサインが彫り込まれてるもんだ。だがこの剣、ドコを見てもそれらしいのがねー。ドコ製か、分からないようになってやがる」
    「ふーむ……」
     難しい顔をするセノクに対し、クリオも苦い顔をする。
    「こうなると、取る手は一つしかねーな。ドコまでもやる気ってんなら……」
    「ああ。南海の平和を取り戻すため、彼らを討たねばなるまい。
     これ以上の混乱は、何としてでも回避しなければ」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    一方が矛を収める気配を微塵も見せない以上、
    もう一方も争わざるを得ないでしょう。
    南海の人々はとことん、乱暴な隣人に悩まされるようです。

    NoTitle 

    ここまでいくともう収集はつかないような・・・。
    ・・・というところまで来ていますね。
    闘争は不可避・・・ですね。

    NoTitle 

    憎まれっ子世にはばかる、と言うのが世の常。
    そんな簡単な結末には至りません。

    NoTitle 

    女王は地下行きかv-398

    NoTitle 

    巨額のお金が動くことで正常、かつ良識ある判断ができなくなるのは、
    どこの世界も同じですね。

    黒幕氏、抜かりなく対応策を持ってます。
    その点については、この節の終わり頃に詳しい記載が。

    NoTitle 

    今クロ現で「オリンパス粉飾決算事件」の報道を見ていますが、レヴィア王国と重なりますなあ。

    ちなみに、貴族や王国やそういったところと商売するのは商人にとっても命がけで、自前の強力な武力か、それを持つ誰かと同盟を組まないと、いくら借金の証文があっても踏み倒されたり、値切られたりとろくなことがないですが、我らが黒幕くんはそこらへんは万全なんですかねえ。
    「払え」といっても「払わん」といわれたらおしまいなのが商人ですから……。
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