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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第2部

    火紅狐・海戦記 5

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    フォコの話、65話目。
    囲まれた海賊船。




    5.
     ベール王国は南海諸国に協力を要請し、レヴィア軍が扮する海賊討伐に乗り出した。
     対するレヴィア軍も、さらに武器を買い付け、これを撃退しようと言う姿勢を執った。



     そして303年の暮れ、セノクを筆頭とするベール王国の指揮により、両軍は最大の衝突を迎えた。
    「む……! 友軍の艦だ! 向こうからも来ているぞ!」
    「作戦は成功だな!」
    「ここで決着を付けてやる!」
     ベール側の連合軍は南海諸地域での攻防と誘導の末、レヴィア側の海賊船6隻すべてを、南海中東部の海域――通称、セヤフ海へと追い込んだ。
    「しまった……!」
     この時になってようやく、海賊船も誘導されたことに気付いたが、もう遅い。どこを見回しても敵船の影があり、集まった6隻は身動きが取れなくなった。
    「どうする!?」
    「どうって、……じゃあ投降するのか!?」
     海賊船の船長たちは互いに声をあげ、対応を検討する。
    「俺はする!」
    「馬鹿な! 国の家族はどうなるんだ!」
    「どうせこのまま戦っても、負けるだけだ!」
    「そうだ、そうなったらどっちみち、家族の命は無い!」
     実は、海賊船に乗せられていた者たちは皆、レヴィア軍から家族や友人を盾に取られて脅迫されていたのだ。「拒否すれば家族を殺す。また、敵に捕まっても敗北しても殺す」と、そう宣言されており、彼らは従うしかなかった。
    「考えてもみろよ! 俺たちはあの女王に従って、何かいいことがあったか!?
     ワガママに散々付き合って、もらったのは結局二束三文の金! その上脅迫までされて、挙句の果てにここで立ち往生だぞ!
     これ以上あの女王の馬鹿に付き合っていられるかッ! 俺は投降する!」
     集まった6隻の中からそう声が上がり、1隻が離れていく。
    「……同感だ。全員死ぬか、俺たちだけでも生き残るか。悩む理由は無い」
     もう1隻離れる。
    「死にたくない。死にたくないんだ!」
     さらにもう1隻。
     残った3隻はどうしていいか分からず、ぼんやりと眺めているしかなかった。
     だが――。
    「……!?」
     離れていった船から突然、火の手が上がった。
    「な、なんだ!?」
     船全体に火が周り、あっと言う間に崩れて沈む。
    「ひっ……」
     他の2隻も、同様に燃え始める。離れた3隻はすべて、海に沈んでいった。
    「逃げても、殺すと言うことか」
    「やるしかないのか……」
     残った3隻は仕方なく、連合軍へと突っ込んでいった。

    「何だ、今の爆発は!?」
     連合軍の艦に乗っていたセノクは目を丸くし、燃え上がる船を眺めていた。
    「今の船……、逃げようとしていたようだ。それが攻撃されたと言うことは、……自軍からも狙われているのか」
     と、残っていた3隻が、こちらに向かって突っ込んでくるのに気付く。
    「……向かってくる。進退窮まった、か」
     セノクは海上の全軍に、次のように命じた。
    「残った船を囲み、確保しろ! 沈めてはならない! あれが沈めば、事態は振り出しに戻るぞ!」
     ベール側の軍艦は、囲い込みを狭める作戦に出た。

     一方、敵からも味方からも狙われる羽目になった海賊船は、自暴自棄になっている。
    「どっちみち死ぬなら、……特攻だ!」
    「目一杯速度を上げろ! 砕け散ってやる!」
     連合軍と海賊船とが、互いの距離を縮めていった。



    「自棄になったか……。仕方ない、沈めよう」
     戦いの輪の外にいたレヴィア軍の船が、単眼鏡で海賊船の様子を伺っていた。先程船を沈めたのは、彼らの仕業である。
    「***……、***……」
     彼らの一人が呪文を唱え、海賊船の中に仕込んである魔方陣を発動させようとした。
    「やっぱりお前らの仕業か」「……!?」
     が、その詠唱は中断させられた。
     彼らの船に、真っ黒な船――正真正銘の海賊船、「テンペスト」が横付けされたからだ。
    「オレの可愛い丁稚を悩ませやがって……。そのツケ、きっちり払ってもらうぜッ!」
     そう怒鳴りつけ、クリオたちが乗り込んできた。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    この一事だけでも、敵方の非道さが分かりますね。

    NoTitle 

    ううむ。このままでは壊滅ですねえ。。。
    投降する者を潰すというのもかなりの外道ですね。
    (ーー;)

    NoTitle 

    なかなか捕まえるのにも難儀します。

    冗談に対して本気で返しますが。
    捕虜をすぐ拷問にかけるとか、大した紳士っぷりですね。
    愚かしい。

    NoTitle 

    捕まえろー
    女の捕虜は漏れが拷問にかけようv-398
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