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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第2部

    火紅狐・海戦記 6

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    フォコの話、66話目。
    作戦の失敗、そして取り立て。




    6.
    「どう思う、ディーズ先生さんよ」
    「頭領。そう言う他人行儀でもったいぶった、回りくどい呼ばれ方は好きではない。
     ……そうだな、結論から言えば、ホコウ君のせいではないだろう」
     偽海賊船を沈めた日の晩、クリオとモーリスはフォコに内緒で、偽物の燃え方を検討していた。
    「あの燃え方だが、不自然な点がある。
     ホコウ君は確かに明晰な頭脳を持っているし、魔力も私などより非常に強い。だがしかし、彼の力だけで船一隻を瞬時に燃やし尽くす、と言うのは不可能だ。何か別の要素を以って燃やされた、と見るのが自然だろう」
    「別の要素? つまり、他に誰かがあの船、燃やそうとしてたってコトか?」
    「そうだろうな。証拠隠滅のために、何かしらの発火装置を備えていたのだろう」
    「つくづく食えねーヤツらだな。ソコまでして、正体明かしたくねーってか」
    「だが、疑問も残る」
     モーリスの言葉に、クリオは首をかしげた。
    「疑問?」
    「ホコウ君が攻撃している途中、彼らは明らかに我々を恐れ、怯えていた。そして頭領の言葉に、耳を傾けていた節もある。
     そんな彼らが、よりおぞましい行為――炎に包まれての自殺など、するだろうか?」
    「……したくねーよな。そう言われりゃ」
    「これは私の、一個人の予想と言うか、もしかしたらと言う程度の発想なのだが……」
    「ハッキリ言え」
    「……ああ。もしかしたら、彼らにとどめを刺したのは……」



     レヴィア軍の船に乗り込んだクリオは、一目で魔術師と分かる男の前に、ガツガツと足音を立てて近寄る。
    「腐ってんな、てめー……! 人に汚ねー仕事押し付けて、いざ正体バレそうになったら燃やして証拠隠滅ってか、えぇ、おい!」
    「……っ」
     クリオは敵船の中央で一度立ち止まり、声を荒げた。
    「いいや、てめーだけじゃねー……! 国のてっぺんから腐ってやがるんだ、てめーらはッ!
     大体、何が『レヴィア王国』だッ! 元々、ちょっとデカいってくらいの網元じゃねーか! それが何だ、いつから平和を乱すワルモノ軍事国気取りになってやがんだよッ!? 勘違いしてんじゃねーぞ、コラ!」
     一通り叱咤したクリオは、呆然と立っている兵士の一人を蹴り飛ばした。
    「ぎゃっ!?」
     蹴られた兵士は、真っ逆さまに海へと落ちていく。
    「覚悟しろ、てめーら……! 今日のオレは、怒鳴って追い返すだけじゃ済まさねーぞッ!」
     そこでようやく兵士たちも武器を構え始めたが、もう遅い。
    「『ウォータードロップ』!」
    「『ブレイズウォール』!」
     フォコとモーリスがいち早く攻撃を仕掛け、兵士をなぎ倒す。
    「くそ、くそっ……」
    「ここで負けるわけには……」
     先制攻撃を受け、兵士の大半が戦闘不能になったが、それでも残った兵士たちは武器を下げようとしない。
     それを見て、クリオはさらに一喝した。
    「負けるかだの勝つだの、まだそんなコト抜かしてんのか!? 見てみろよ!」
     クリオが指差した方向を見た兵士から、「う……」と悲痛な声が漏れる。
     クリオたちが足止めしている間に、セノクの作戦が功を奏したらしい。大勢の軍艦の中に、あちこちから縄を投げられて拘束された海賊船の姿があった。
    「もう偽海賊船は捕まった! 勝負、付いてんだよ! いい加減、大人しくしやがれ!」
    「くっ……」
     兵士たちは諦めに満ちた顔で、ようやく武器を捨てた。



     偽海賊船とレヴィア軍の船を拿捕し、取り調べたことで、レヴィア王国の企みは明るみに出た。
     海賊に偽装し、南海諸外国に対して侵略と略奪を繰り広げたことが発覚し、レヴィア王国は南海中の国から軽蔑と強い敵対心を受け、政治的地位は失墜。どこからもまともに取り合ってもらえなくなった。
     その関係は経済にも波及し、レヴィア王国内の商工業は軒並み破綻。王室の財政も悪化した。

    「いやぁ、散々ですな」
    「……」
     焦げ付いた債務を回収するためやってきた男に、アイシャは何も言えない。
    「私の言う通り、1隻か2隻で、細々と荒らして回ってくだされば良かったものを」
     男の口調は明るいが、目は全く笑っていない。
    「それで女王陛下。発行された債券の返済期日まで、残り1ヶ月、いえ、半月ほどとなっておりますが……」「なに?」
     憔悴しきっていたアイシャの目が、怯えたように見開かれる。
    「見たであろう、我らの窮状を。払えると思うのか?」
    「存じませんな」
     返済を渋るアイシャに、男は素っ気無く答える。
    「303年の末に返済と言うことで、私はあなた方に4500万クラムを、利息1割でお貸ししたはずです。
     そして今は12月の半ば。利息を含む4950万クラム、きっちり、1クラムも欠けることなく、お支払いください」
    「だから払える状況では……」「お支払いいただけない、と?」
     男は突然、ガン、と机を叩いた。
    「ひっ……」
    「困りますな、アイシャ・レヴィア陛下。一国の王ともあろう方が、こんな醜態をさらされるとは。
     いいですか、借金とは『後で絶対に払うと約束するから貸してくれ』なのですよ? それが払ってもらえない、となると、あなたのお言葉は嘘と言うことになる。
     一国の元首、最高責任者であるあなたが、堂々と嘘をつくなど……、いやいや、みっともない。そんなことが明らかになればいずれ、世界のどこからも相手にしてもらえなくなりますよ」
    「……っ」
     既に南海で村八分にされているアイシャにとって、その言葉は辛辣に響いた。
    「ま、私にはまだ回収の当てはありますから、別にあなた方に直接お支払いいただかなくとも結構なんですけれど、ねぇ?」
     男の言葉にアイシャは、「払わないで済むのか」と安堵しかけた。
     だが、男の次の言葉に、アイシャは胃が凍りつくかと思うほど、ぞっとさせられた。
    「債券を南海のどこかの国……、そう、ベール王国にでも売れば、回収は可能ですからな」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    ドイツは良くも悪くも、強烈な指導者の元で立ち直りましたが、
    こちらは指導者が……。

    NoTitle 

    第一次世界大戦後のドイツのような状況ですね。
    借金は返せない。
    これを取り返すためのまた戦争・・・。
    になる気配もしますが。
    どうなるのでしょうかね。

    NoTitle 

    もうそんな次元じゃないですね。
    どうしようもないので、何されても仕方ない。
    そこまで来てます。

    NoTitle 

    v-671発あてるしかねえ
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