「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・砂嵐記 3
フォコの話、70話目。
フィクサー、現る。
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フィクサー、現る。
3.
黒い鎧に身を包んだ兵士十数名に囲まれながら、顔中に青あざを浮かべたクリオは名も無い小島の中央に、じっと座っていた。
「……」
太い縄で体と腕を縛られ、クリオは抵抗できない。
「ご機嫌はいかがですかな、ジョーヌ総裁」
「サイアクだ」
話しかけてきた男に、クリオは顔も上げずに答える。
「そうですか。何か飲まれますかな?」
「いらねえ」
クリオは視線を合わせず、男に尋ねる。
「んで、オレをこんなところに連れて来た理由、そろそろ聞かせちゃくんねえかな」
「もうしばらくお待ちいただきたい。まだ役者が揃ってないもので、ね」
「役者?」
「ええ。まずあなた、そして周りのレヴィア軍兵士の方々、そして……」
男は兵士たちの背後を指差し、怯え切った顔のアイシャを示した。
「レヴィア女王陛下。そして最後にあなたの腹心が、ここに揃う予定となっています」
「腹心? 誰だ? アバントか?」
男の右眉が、ピク、と動く。どうやら図星らしかったが、男は答えずに濁した。
「……それは、来てからのお楽しみ、と言うことで」
「ケッ」
クリオは舌打ちし、青い顔をしたアイシャを眺める。
「おい、女王さんよ。何だって、こんなコトしてんだ? まだ何かやろうってのか?」
「……」
クリオに声をかけられ、アイシャはチラ、とクリオを見たが、すぐ男に視線を移し、「ひっ……」と短い悲鳴を上げて顔をそらす。
「……? なんだ、お前さん? 随分怯えちまってるみてーだが……、こいつに、何かされたのか?」
「知らぬ、知らぬ、知らぬ……」
アイシャは猫耳を両手でふさぎ、ブルブルと震えている。
「……やり足りねーのはお前さんか」
ここでようやく、クリオは男の方に目をやった。
「大方、女王に借金背負わせて、無理矢理言うコト聞かせたってトコか。えげつねーな」
「何とでも仰ればいい。ですがこれだけは、分かっておいた方がいいでしょうな」
男は屈み込み、クリオに下卑た笑いを見せ付けた。
「それがあなたの遺言になるのですからな、……フフ、フハハハ」
「あの島だ」
アバントがぼんやりと見える島の影を指差す。
「あそこだな。……無事でいてくれるといいが、おやっさん」
「そうだな。……なあ、ジャール」
と、またアバントがのんきに話しかけてくる。
「何だよ?」
「お前、造船所に来て何年になるっけ」
「は?」
「ちょっと気になったんだ」
ジャールはいらだちつつも、質問に答える。
「8年だよ。24の時だから」
「何で入ったんだっけな」
「俺も海賊やってたからだよ。鉢合わせして、戦って負けて、んでおやっさんが『ちょうど腕っ節の強いヤツがほしかったんだ。お前、ウチに入れ』って勧誘してきたから」
「ああ、そうだったな。その後からだよな、お前が太ったのって」
「ああ。……何なんだ、アバント」
「ん?」
ジャールはこらえ切れなくなり、アバントに突っかかった。
「おやっさんが殺されるかも知れねーんだぞ!? なのに何でアンタ、そんなヘラヘラしてられんだよ!?」
「……おっと、そうだったな」
「『そうだった』? 何だよそれ、まるで今思い出したような言い方……」
言いかけて、ジャールは言葉を失う。
アバントが突然、曲刀を抜いたからだ。
「……もういいか。ここからなら、俺の腕でも15分はかからないだろう」
「何?」
「おつかれさん」
そう言うなり、アバントは曲刀を振り上げた。
「……ッ!」
突然の行動に身動きできず、ジャールは息を呑んだ。
「な、何を!?」
「もう用済みだ。死ね」
アバントは無表情で、曲刀を振り下ろそうとした。
だが、曲刀を持っていたその右腕が、背後から伸びてきた手につかまれる。
「な、……んだぁ?」
思いも寄らない事態に、アバントはつい背後を振り向く。
「……!」
その隙を突いて、ジャールはアバントのあごを思い切り殴り飛ばした。
「ぐげ……っ!?」
アバントは曲刀を落とし、そのまま甲板に倒れこんだ。
「は、あ……。ありがとよ、ホコウ」
「いえ。……付いて来て正解でした」
物陰に隠れて事態を見守っていたフォコは、縄を取ってアバントを縛り上げた。
黒い鎧に身を包んだ兵士十数名に囲まれながら、顔中に青あざを浮かべたクリオは名も無い小島の中央に、じっと座っていた。
「……」
太い縄で体と腕を縛られ、クリオは抵抗できない。
「ご機嫌はいかがですかな、ジョーヌ総裁」
「サイアクだ」
話しかけてきた男に、クリオは顔も上げずに答える。
「そうですか。何か飲まれますかな?」
「いらねえ」
クリオは視線を合わせず、男に尋ねる。
「んで、オレをこんなところに連れて来た理由、そろそろ聞かせちゃくんねえかな」
「もうしばらくお待ちいただきたい。まだ役者が揃ってないもので、ね」
「役者?」
「ええ。まずあなた、そして周りのレヴィア軍兵士の方々、そして……」
男は兵士たちの背後を指差し、怯え切った顔のアイシャを示した。
「レヴィア女王陛下。そして最後にあなたの腹心が、ここに揃う予定となっています」
「腹心? 誰だ? アバントか?」
男の右眉が、ピク、と動く。どうやら図星らしかったが、男は答えずに濁した。
「……それは、来てからのお楽しみ、と言うことで」
「ケッ」
クリオは舌打ちし、青い顔をしたアイシャを眺める。
「おい、女王さんよ。何だって、こんなコトしてんだ? まだ何かやろうってのか?」
「……」
クリオに声をかけられ、アイシャはチラ、とクリオを見たが、すぐ男に視線を移し、「ひっ……」と短い悲鳴を上げて顔をそらす。
「……? なんだ、お前さん? 随分怯えちまってるみてーだが……、こいつに、何かされたのか?」
「知らぬ、知らぬ、知らぬ……」
アイシャは猫耳を両手でふさぎ、ブルブルと震えている。
「……やり足りねーのはお前さんか」
ここでようやく、クリオは男の方に目をやった。
「大方、女王に借金背負わせて、無理矢理言うコト聞かせたってトコか。えげつねーな」
「何とでも仰ればいい。ですがこれだけは、分かっておいた方がいいでしょうな」
男は屈み込み、クリオに下卑た笑いを見せ付けた。
「それがあなたの遺言になるのですからな、……フフ、フハハハ」
「あの島だ」
アバントがぼんやりと見える島の影を指差す。
「あそこだな。……無事でいてくれるといいが、おやっさん」
「そうだな。……なあ、ジャール」
と、またアバントがのんきに話しかけてくる。
「何だよ?」
「お前、造船所に来て何年になるっけ」
「は?」
「ちょっと気になったんだ」
ジャールはいらだちつつも、質問に答える。
「8年だよ。24の時だから」
「何で入ったんだっけな」
「俺も海賊やってたからだよ。鉢合わせして、戦って負けて、んでおやっさんが『ちょうど腕っ節の強いヤツがほしかったんだ。お前、ウチに入れ』って勧誘してきたから」
「ああ、そうだったな。その後からだよな、お前が太ったのって」
「ああ。……何なんだ、アバント」
「ん?」
ジャールはこらえ切れなくなり、アバントに突っかかった。
「おやっさんが殺されるかも知れねーんだぞ!? なのに何でアンタ、そんなヘラヘラしてられんだよ!?」
「……おっと、そうだったな」
「『そうだった』? 何だよそれ、まるで今思い出したような言い方……」
言いかけて、ジャールは言葉を失う。
アバントが突然、曲刀を抜いたからだ。
「……もういいか。ここからなら、俺の腕でも15分はかからないだろう」
「何?」
「おつかれさん」
そう言うなり、アバントは曲刀を振り上げた。
「……ッ!」
突然の行動に身動きできず、ジャールは息を呑んだ。
「な、何を!?」
「もう用済みだ。死ね」
アバントは無表情で、曲刀を振り下ろそうとした。
だが、曲刀を持っていたその右腕が、背後から伸びてきた手につかまれる。
「な、……んだぁ?」
思いも寄らない事態に、アバントはつい背後を振り向く。
「……!」
その隙を突いて、ジャールはアバントのあごを思い切り殴り飛ばした。
「ぐげ……っ!?」
アバントは曲刀を落とし、そのまま甲板に倒れこんだ。
「は、あ……。ありがとよ、ホコウ」
「いえ。……付いて来て正解でした」
物陰に隠れて事態を見守っていたフォコは、縄を取ってアバントを縛り上げた。



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ううむ。こうまでして戦争したい理由がどこにあるのかな。
なにか島自体にあるのか、あるいは戦争することによる利益が潜んでいるのかな。
現状ではまだ分からないことが多いのかもしれませんね。
なにか島自体にあるのか、あるいは戦争することによる利益が潜んでいるのかな。
現状ではまだ分からないことが多いのかもしれませんね。
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NoTitle
男の正体も。