「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・砂嵐記 4
フォコの話、71話目。
因縁の再会。
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因縁の再会。
4.
縛り上げたアバントを見下ろしながら、二人は会話を交わす。
「気、失っちゃってますね」
「ちょっと強過ぎたな。……しかし、何なんだ? いきなり俺を殺そうとするなんて」
「多分さっき、アバントさんが言った通りなんじゃないでしょうか。
ここまで連れて来てくれたけど、もう用は無い。だから殺す、……ってことだと」
「ちょっと待ってくれ、ホコウ。用って、おやっさんを助けるってことだろ? 俺がいなきゃ、その後どうやって帰るんだよ」
「……アバントさんは多分、ナラン島に帰るつもりは無かったんでしょう」
フォコは倒れたままのアバントを軽く蹴り、推理し始めた。
「おやっさんがさらわれたって言うのは、本当だと思います。実際、帰ってきてないですし。でも身代金とかそう言うのは、嘘でしょうね。本当だったら持って来るでしょ? いくらなんでも手ぶらってことは、まず無いです」
「……そうだよな、よく考えたら」
「嘘をついてジャールさんだけをここまで連れて来たのは多分、『テンペスト』が狙いなんだと思います。
ウチのメンバー全員集めてたら絶対、僕みたいに『おかしい』って言ってくる人が何人も出てくるでしょうし、皆殺しにするには手間もかかります。だから必要最低限、船と操舵手を消そうと思ったんでしょうね」
「マジかよ……」
と、ここでアバントのうめき声が聞こえてくる。
「う、う……」
「起きたか。おいおっさん、いきなり何してくれてんだよ」
ジャールは怒りに任せ、アバントの胸倉をつかんで揺さぶる。
「や、やめろっ」
アバントが懇願するが、ジャールは手を緩めない。と、フォコがその手をつかんでくる。
「僕からもお願いします」
「何でだよ?」
「ちゃんと聞かないと。何でこんなことをしたのか、を」
アバントを甲板に座らせ、フォコとジャールは詰め寄った。
「まず、聞かせてください。何故、ここに『テンペスト』を?」
「命じられたからだ」
「誰に?」
「……」
アバントは答えない。
「次。おやっさんは、あの島にいるんですか?」
「ああ」
「誰が拉致したんです?」
「レヴィア軍と聞いている。殺すつもりらしい」
「誰の望みなんですか? レヴィア女王ですか?」
「違う」
「じゃあ誰なんですか?」
「……」
「次。あなたには何のメリットがあって、こんなことを?」
「おやっさんの死と『砂嵐』の壊滅を条件に、西方での地位を約束された」
「それは誰から?」
「……」
アバントの話にすべて結びついてくる人物について、アバントはどうしても答えようとしない。
業を煮やしたジャールが、アバントの右手をつかむ。
「いい加減にしねえと指折るぞ、おっさん」
「うっ……」
ギリギリと指を絞められ、アバントの額に脂汗が浮かぶ。
「い、言えない。言えば約束は破棄すると、言われているんだ」
「まだもらってもいないモノと、今ここで指をヘシ折られるのと、どっちがいいんだ?」
「……いえ、な、いっ、……ぎああっ」
ボキ、と鈍い音を立てて、アバントの指が折られる。
「ホコウ、左手も行っとくか?」
「……いえ、折っても言わないんなら、本当に言わないんでしょうね。
どっちにせよ、あの島にいるんでしょう、その人は?」
「……あ、あ」
土気色の顔で答えるアバントに、フォコも彼の胸倉をつかんで怒鳴った。
「あんたのくだらない企みや欲望のせいで、おやっさんが殺されるなんてこと、あってたまるかッ! 絶対に助け出してやる! その後のこと、じっくり覚悟しておくんだな!」
フォコはアバントを殴り倒し、ジャールに促した。
「行きましょう、あの島に。おやっさんを助け出して、みんなでナラン島に帰りましょう」
「お、おう。……ホコウ」
ジャールは立ち上がりながら、驚きに満ちた目でフォコに尋ねた。
「何かお前、すげーかっこいいな」
「そ、そうですか?」
「いつもへろへろした印象しか無かったけど……、見直したよ」
「ど、ども」
船を進め、フォコたちは島に到着した。
「おや……、到着したようですな」
「……」
男の言葉には応じず、クリオは着岸した船をにらむ。
「……おいおい……」
「おや、あれは」
男の顔が、嬉しそうに歪む。
「生きていたとは聞いていましたが、なるほど。成長したようで」
「……来るんじゃねえよ、こんな時に……っ」
対照的に、クリオは歯軋りする。
「おやっさん!」
現れたフォコは、クリオの方に近付こうとして――足を止めた。
「……っ!?」
「やあ、ニコル。久しぶりだね。随分大きくなった」
「ニコル? 誰だ?」
きょとんとするジャールを置いて、フォコは男との距離を詰める。
「……お前やったんか……ッ! アバントさんを誘惑し、おやっさんを拉致したんは……ッ!」
「そうだよ、ニコル。私だ。
このケネス・エンターゲート=ゴールドマンが、すべてを仕組んだのだよ」
男はそう名乗り、フォコに笑いかけた。
縛り上げたアバントを見下ろしながら、二人は会話を交わす。
「気、失っちゃってますね」
「ちょっと強過ぎたな。……しかし、何なんだ? いきなり俺を殺そうとするなんて」
「多分さっき、アバントさんが言った通りなんじゃないでしょうか。
ここまで連れて来てくれたけど、もう用は無い。だから殺す、……ってことだと」
「ちょっと待ってくれ、ホコウ。用って、おやっさんを助けるってことだろ? 俺がいなきゃ、その後どうやって帰るんだよ」
「……アバントさんは多分、ナラン島に帰るつもりは無かったんでしょう」
フォコは倒れたままのアバントを軽く蹴り、推理し始めた。
「おやっさんがさらわれたって言うのは、本当だと思います。実際、帰ってきてないですし。でも身代金とかそう言うのは、嘘でしょうね。本当だったら持って来るでしょ? いくらなんでも手ぶらってことは、まず無いです」
「……そうだよな、よく考えたら」
「嘘をついてジャールさんだけをここまで連れて来たのは多分、『テンペスト』が狙いなんだと思います。
ウチのメンバー全員集めてたら絶対、僕みたいに『おかしい』って言ってくる人が何人も出てくるでしょうし、皆殺しにするには手間もかかります。だから必要最低限、船と操舵手を消そうと思ったんでしょうね」
「マジかよ……」
と、ここでアバントのうめき声が聞こえてくる。
「う、う……」
「起きたか。おいおっさん、いきなり何してくれてんだよ」
ジャールは怒りに任せ、アバントの胸倉をつかんで揺さぶる。
「や、やめろっ」
アバントが懇願するが、ジャールは手を緩めない。と、フォコがその手をつかんでくる。
「僕からもお願いします」
「何でだよ?」
「ちゃんと聞かないと。何でこんなことをしたのか、を」
アバントを甲板に座らせ、フォコとジャールは詰め寄った。
「まず、聞かせてください。何故、ここに『テンペスト』を?」
「命じられたからだ」
「誰に?」
「……」
アバントは答えない。
「次。おやっさんは、あの島にいるんですか?」
「ああ」
「誰が拉致したんです?」
「レヴィア軍と聞いている。殺すつもりらしい」
「誰の望みなんですか? レヴィア女王ですか?」
「違う」
「じゃあ誰なんですか?」
「……」
「次。あなたには何のメリットがあって、こんなことを?」
「おやっさんの死と『砂嵐』の壊滅を条件に、西方での地位を約束された」
「それは誰から?」
「……」
アバントの話にすべて結びついてくる人物について、アバントはどうしても答えようとしない。
業を煮やしたジャールが、アバントの右手をつかむ。
「いい加減にしねえと指折るぞ、おっさん」
「うっ……」
ギリギリと指を絞められ、アバントの額に脂汗が浮かぶ。
「い、言えない。言えば約束は破棄すると、言われているんだ」
「まだもらってもいないモノと、今ここで指をヘシ折られるのと、どっちがいいんだ?」
「……いえ、な、いっ、……ぎああっ」
ボキ、と鈍い音を立てて、アバントの指が折られる。
「ホコウ、左手も行っとくか?」
「……いえ、折っても言わないんなら、本当に言わないんでしょうね。
どっちにせよ、あの島にいるんでしょう、その人は?」
「……あ、あ」
土気色の顔で答えるアバントに、フォコも彼の胸倉をつかんで怒鳴った。
「あんたのくだらない企みや欲望のせいで、おやっさんが殺されるなんてこと、あってたまるかッ! 絶対に助け出してやる! その後のこと、じっくり覚悟しておくんだな!」
フォコはアバントを殴り倒し、ジャールに促した。
「行きましょう、あの島に。おやっさんを助け出して、みんなでナラン島に帰りましょう」
「お、おう。……ホコウ」
ジャールは立ち上がりながら、驚きに満ちた目でフォコに尋ねた。
「何かお前、すげーかっこいいな」
「そ、そうですか?」
「いつもへろへろした印象しか無かったけど……、見直したよ」
「ど、ども」
船を進め、フォコたちは島に到着した。
「おや……、到着したようですな」
「……」
男の言葉には応じず、クリオは着岸した船をにらむ。
「……おいおい……」
「おや、あれは」
男の顔が、嬉しそうに歪む。
「生きていたとは聞いていましたが、なるほど。成長したようで」
「……来るんじゃねえよ、こんな時に……っ」
対照的に、クリオは歯軋りする。
「おやっさん!」
現れたフォコは、クリオの方に近付こうとして――足を止めた。
「……っ!?」
「やあ、ニコル。久しぶりだね。随分大きくなった」
「ニコル? 誰だ?」
きょとんとするジャールを置いて、フォコは男との距離を詰める。
「……お前やったんか……ッ! アバントさんを誘惑し、おやっさんを拉致したんは……ッ!」
「そうだよ、ニコル。私だ。
このケネス・エンターゲート=ゴールドマンが、すべてを仕組んだのだよ」
男はそう名乗り、フォコに笑いかけた。



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