「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・砂嵐記 5
フォコの話、72話目。
「砂嵐」のクリオ。
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「砂嵐」のクリオ。
5.
「ゴールドマン? ゴールドマンちゅうたか!?」
フォコは怒りをあらわにし、ケネスに突っかかる。
「言ったとも。今の私は金火狐の総帥だからね」
「ふざけるなッ!」
フォコは曲刀を向け、ケネスに叫ぶ。
「お前にその名前を名乗る資格は無いッ!」
「あるとも。商会のすべてを掌握し、央中・央北の商業の中心人物となった。これでもなお、私に資格が無いと言うのかね?」
「僕の……、僕の両親を殺しといて、そんなふざけたことを言うんかッ!」
「殺した? 私が? そんな証拠は無い」
「証拠やて? 父さんが死んだ後、すぐにその地位を継いだんやろが!? それが証拠やなくて、何や言うねや!?」
「そんなものは物的証拠ではない。……まあ、そんな議論をするつもりは無い。
それよりもニコル、君が来てくれて私は嬉しいよ」
ケネスはにこりと紳士的な笑みを浮かべ、フォコに対して鷹揚に振舞う。
「あの時ジョーヌ総裁にさらわれて、一体どうなったかと心配していたものだが」
「嘘つけッ!」
一方、フォコは徹頭徹尾、攻撃的な姿勢を見せる。
「おやっさんの居場所はつかんどったはずやろ、あんたの地位と人脈やったら! そんなに心配してたっちゅうんなら、どうして探そうとせえへん!?
こんなもん、理由は単純や! 僕のことが、邪魔やったからやッ! 今さら前総裁の息子なんかが現れたら、地位は危なくなる! そら、探しになんかけーへんわなぁ!?」
「ふっふ……、まあ、そうだな」
フォコの追求に、ケネスは簡単に前言を撤回した。
「確かに心配でも何でもなかった。もっと言えば、さっさと死んでいてほしかった。そう思って放っておいたが、……君は生き延び、成長している。
このままずっと放っておけば、いずれ私の前に、明らかな敵として立つ男になる」
「今かてそうや」
フォコは曲刀を構え、ケネスとの距離を詰めた。
「あん時は逃げるしか無かった。けどな、今やったらお前を殺せるねんぞ!?」
「ほう」
自分を殺すと言われてもなお、ケネスは笑っている。
「ではやってみればいい」
「言うたな……ッ!」
頭に血が昇ったフォコは、ケネスの挑発に乗って駆け出そうとした。
だが――。
「火紅おおおッ!」「……!?」
空気をビリビリと震わすようなクリオの一喝に、フォコの足は止まった。
「いつもいつも、いっつも言ってんだろーが……! 激情や思い付きでぽいぽい行動するなって、何度言えば分かる!?
ソコから一歩でも動いてみやがれ――お前さん、死ぬぜ」
「え……?」
言われてようやく、フォコはケネスとクリオの周囲に、黒い鎧に身を包んだ兵士たちがいるのに気付く。
「闇夜に黒い鎧だ。よっぽど気を配って無きゃ、見えねーわな。お前さん、アタマに血ぃ昇ってて気付いてなかったろ」
「……」
「お前さんがケネスを殺そうと駆け出してたら、こいつらは容赦なくお前さんを囲んで袋叩きにしてただろうな。
お前さん、折角良いアタマ持ってんだから、ちっとは活用しろや。オレをさらったのが、ケネス一人だと思ってたのか? ケネスとアバントのアホが、たった二人でこんな真似をやってたと?」
クリオの言葉に、フォコの頭は一気に冷める。
「え……、お、おやっさん。何でアバントさんのことを?」
「ちょくちょく島を抜け出して、その度に悩んだような顔で戻ってくるよーなヤツに、何にも大したコトは無かったって、お前さんはそー思うのか? あるに決まってんだろうが、何かがよ。
そんで調べたら見えてきたってワケだ、アバントとケネスが会って何か企んでるなってコトが。……ま、流石にアイシャ女王まで篭絡してるとは思ってなかったけどもな」
「ご明察ですな、ジョーヌ総裁」
耳を抑えて顔をしかめていたケネスが、再び笑いを浮かべる。
「あなたの頭脳も、なかなかのものだ。……いや、真摯に経歴を見れば、そのポテンシャルの高さは、嫌でもよく分かる。
10代の頃、言葉も満足に分からぬ土地に単身飛び込んで、その後20代にして店を立ち上げ、30代で大商会の主。そんな人物が、ただただ乱暴で粗雑なわけがない。
大方、今もあなたは、ここから無事に脱出できる術を模索しているのでしょう」
「そーだよ」
クリオは体を縛られたまま、器用に立ち上がる。
「動くな!」
周囲の兵士たちが武器を構え牽制しようとするが、クリオは構わずケネスの横を抜け、フォコの方に歩いていく。
「何をボーっとしている! 殺せ!」
ケネスが命令し、兵士を動かす。
「ところでよ、火紅、ジャール」
それも気にしていない様子で、クリオはフォコとジャールに声をかける。
「今までよ、ちっと妙に思った覚え、ねーか?」
「えっ?」
「何でオレたち海賊団の名前、『砂嵐』なんだろ、ってな」
「って言うと?」
ぽかんとするジャールに比べ、フォコは率直に答える。
「まあ、思ってました。『海と砂の世界』って言いますけど、僕らの活躍の場、海ですし。ネーミング間違えたのかな、って」
「なワケねーだろ、ハハ……」
ジャールに縄を切ってもらいながら、クリオはニヤリと笑った。
「さてと」
「早くしろ! 殺せッ!」
バタバタと足音を立て、迫ってくる兵士たちに、クリオはニヤニヤとしたまま振り返り、手をかざした。
「取って置きだ。……飛んでけ、『テンペスト(大嵐)』」
次の瞬間――島全体に、猛烈な風が吹いた。
「ゴールドマン? ゴールドマンちゅうたか!?」
フォコは怒りをあらわにし、ケネスに突っかかる。
「言ったとも。今の私は金火狐の総帥だからね」
「ふざけるなッ!」
フォコは曲刀を向け、ケネスに叫ぶ。
「お前にその名前を名乗る資格は無いッ!」
「あるとも。商会のすべてを掌握し、央中・央北の商業の中心人物となった。これでもなお、私に資格が無いと言うのかね?」
「僕の……、僕の両親を殺しといて、そんなふざけたことを言うんかッ!」
「殺した? 私が? そんな証拠は無い」
「証拠やて? 父さんが死んだ後、すぐにその地位を継いだんやろが!? それが証拠やなくて、何や言うねや!?」
「そんなものは物的証拠ではない。……まあ、そんな議論をするつもりは無い。
それよりもニコル、君が来てくれて私は嬉しいよ」
ケネスはにこりと紳士的な笑みを浮かべ、フォコに対して鷹揚に振舞う。
「あの時ジョーヌ総裁にさらわれて、一体どうなったかと心配していたものだが」
「嘘つけッ!」
一方、フォコは徹頭徹尾、攻撃的な姿勢を見せる。
「おやっさんの居場所はつかんどったはずやろ、あんたの地位と人脈やったら! そんなに心配してたっちゅうんなら、どうして探そうとせえへん!?
こんなもん、理由は単純や! 僕のことが、邪魔やったからやッ! 今さら前総裁の息子なんかが現れたら、地位は危なくなる! そら、探しになんかけーへんわなぁ!?」
「ふっふ……、まあ、そうだな」
フォコの追求に、ケネスは簡単に前言を撤回した。
「確かに心配でも何でもなかった。もっと言えば、さっさと死んでいてほしかった。そう思って放っておいたが、……君は生き延び、成長している。
このままずっと放っておけば、いずれ私の前に、明らかな敵として立つ男になる」
「今かてそうや」
フォコは曲刀を構え、ケネスとの距離を詰めた。
「あん時は逃げるしか無かった。けどな、今やったらお前を殺せるねんぞ!?」
「ほう」
自分を殺すと言われてもなお、ケネスは笑っている。
「ではやってみればいい」
「言うたな……ッ!」
頭に血が昇ったフォコは、ケネスの挑発に乗って駆け出そうとした。
だが――。
「火紅おおおッ!」「……!?」
空気をビリビリと震わすようなクリオの一喝に、フォコの足は止まった。
「いつもいつも、いっつも言ってんだろーが……! 激情や思い付きでぽいぽい行動するなって、何度言えば分かる!?
ソコから一歩でも動いてみやがれ――お前さん、死ぬぜ」
「え……?」
言われてようやく、フォコはケネスとクリオの周囲に、黒い鎧に身を包んだ兵士たちがいるのに気付く。
「闇夜に黒い鎧だ。よっぽど気を配って無きゃ、見えねーわな。お前さん、アタマに血ぃ昇ってて気付いてなかったろ」
「……」
「お前さんがケネスを殺そうと駆け出してたら、こいつらは容赦なくお前さんを囲んで袋叩きにしてただろうな。
お前さん、折角良いアタマ持ってんだから、ちっとは活用しろや。オレをさらったのが、ケネス一人だと思ってたのか? ケネスとアバントのアホが、たった二人でこんな真似をやってたと?」
クリオの言葉に、フォコの頭は一気に冷める。
「え……、お、おやっさん。何でアバントさんのことを?」
「ちょくちょく島を抜け出して、その度に悩んだような顔で戻ってくるよーなヤツに、何にも大したコトは無かったって、お前さんはそー思うのか? あるに決まってんだろうが、何かがよ。
そんで調べたら見えてきたってワケだ、アバントとケネスが会って何か企んでるなってコトが。……ま、流石にアイシャ女王まで篭絡してるとは思ってなかったけどもな」
「ご明察ですな、ジョーヌ総裁」
耳を抑えて顔をしかめていたケネスが、再び笑いを浮かべる。
「あなたの頭脳も、なかなかのものだ。……いや、真摯に経歴を見れば、そのポテンシャルの高さは、嫌でもよく分かる。
10代の頃、言葉も満足に分からぬ土地に単身飛び込んで、その後20代にして店を立ち上げ、30代で大商会の主。そんな人物が、ただただ乱暴で粗雑なわけがない。
大方、今もあなたは、ここから無事に脱出できる術を模索しているのでしょう」
「そーだよ」
クリオは体を縛られたまま、器用に立ち上がる。
「動くな!」
周囲の兵士たちが武器を構え牽制しようとするが、クリオは構わずケネスの横を抜け、フォコの方に歩いていく。
「何をボーっとしている! 殺せ!」
ケネスが命令し、兵士を動かす。
「ところでよ、火紅、ジャール」
それも気にしていない様子で、クリオはフォコとジャールに声をかける。
「今までよ、ちっと妙に思った覚え、ねーか?」
「えっ?」
「何でオレたち海賊団の名前、『砂嵐』なんだろ、ってな」
「って言うと?」
ぽかんとするジャールに比べ、フォコは率直に答える。
「まあ、思ってました。『海と砂の世界』って言いますけど、僕らの活躍の場、海ですし。ネーミング間違えたのかな、って」
「なワケねーだろ、ハハ……」
ジャールに縄を切ってもらいながら、クリオはニヤリと笑った。
「さてと」
「早くしろ! 殺せッ!」
バタバタと足音を立て、迫ってくる兵士たちに、クリオはニヤニヤとしたまま振り返り、手をかざした。
「取って置きだ。……飛んでけ、『テンペスト(大嵐)』」
次の瞬間――島全体に、猛烈な風が吹いた。



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今日の旅岡さん

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NoTitle
ほほう。ここでネーミングの真相が分かるわけですね。
伊達に砂嵐と呼ばれているわけではないようですね。
ネーミングって大切だなあ。。。
伊達に砂嵐と呼ばれているわけではないようですね。
ネーミングって大切だなあ。。。
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適当な名付け方はしないよう心がけています。