「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第2部
火紅狐・砂嵐記 6
フォコの話、73話目。
新兵器。
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新兵器。
6.
「う、うわーッ!?」
「げほ、げほ……っ!?」
風で巻き上げられた大量の砂により、一瞬で目の前が真っ白になる。
いや、巻き上げられたのは砂だけでは無い。兵士たちも何人か、空高くへと飛ばされていく。
「な、何が起こった……!?」
「見えない! どこだ、どこにいる……ッ!?」
何とか地上に張り付いた残りの兵士も、砂と風のためにピクリとも動けない。
「やられたな……」
一方、ケネスは冷静に分析していた。
「まさかジョーヌ総裁も、魔術を使えたとは。集めた情報には、まったくそんな話は出てこなかった。流石に油断してしまった……。
が、まあ……、それならそれで、次の手を打てばいいだけのこと」
「ジャール! 3時方向に船を向けろ! ソコが一番、風を受ける!」
「了解しゃーしたッ!」
クリオの指示と魔術で、「テンペスト」号は勢い良く島を飛び出した。
「おやっさん、何で教えてくれなかったんですか?」
「あん?」
「こんなものすごい魔術使えるなんて、聞いてないですよ」
「そりゃそうだ。アレは最後の切り札だったからな」
ゴウゴウと風がうなりを上げる中、三人の間に安堵の雰囲気が漂う。
「しかし良かったっス、本当。おやっさんが無事でいてくれて……」
「本当ですよ。いつまで経っても帰ってこないから、どうしたのかと」
「悪かったな。……ま、相手も業を煮やしてたんだろ。さんざ計画してたコトがみんな、ブッ潰れちまったんだから。
でも、ま、コレでおしまいだよ。オレたちはしばらく、ベール島に移るコトにしようかなって考えてたんだ。もう海賊やる必要もねーし、特別造船所を移転しても、なーんも問題ないしな。
ベール島なら絶対安全だ。あそこの軍は滅法強い。攻めてくるバカも、人をさらおうとするバカもいやしねーよ」
クリオの話に、フォコも、ジャールも喜んだ。
「いいっスね……。ナラン島の生活ものんびりしてて悪くなかったっスけど、やっぱにぎやかなトコの方が楽しいっスから」
「ですよね。新生活も、そっちの方がしやすいですよね」
「お前さんとティナにとっちゃ、渡りに船みてーな話だろ」
「へへ、船なら今乗ってますよ」
「ハハ、そうだった」
三人は安堵しきり、笑いあっていた。
だが――。
「……ん?」
明け始めた洋上に、ほんのりと船影が見える。
「追って来た……?」
「おいおい、さっきの風とこの『テンペスト』の速度じゃ、追いつけねーって分かるだろうに。切れ者のケネスにしちゃ、往生際が悪いな……?」
クリオはけげんな顔で、追ってくる船を眺めた。
「……なんだ?」
ボン、と何かが勢い良く弾けたような音が、その船から響いてくる。
「何だ? 何か……、破裂した?」
フォコも気になり、顔を向けた。
次の瞬間――ジャールの巨体が、宙に浮いた。
「……がっ、げぼ、っ」
大量の木屑と血と共に、ジャールが甲板に叩きつけられる。
「……えっ」「……なに?」
何が起こったのか分からず、残った二人は辺りを見回した。
「……!?」
いつの間にか、「テンペスト」の甲板には大きな穴が空いていた。
「何が……、起こった?」
レヴィア軍の艦上で、ケネスが居丈高に叫ぶ。
「次、準備しろッ!」
「了解しました!」
レヴィア兵たちが、金属でできた筒状のものに、鉄球と黒い粉を詰める。
「これは……、何ぞ?」
覇気を抜かれたままだったアイシャが、目の前で繰り広げられた光景に気力を取り戻したらしい。あれほど忌避していたケネスに、自分から話しかけてきた。
「我がエンターゲート製造がゴールドマン商会に眠っていた技術と知識を活用し、密かに開発した新兵器だ。
剣よりも強く、魔術より速く、徹底的なダメージを与えられる、究極の兵器。それがこの粉だ」
ケネスは下卑た笑みを浮かべながら、樽に詰まった黒い粉を握って、アイシャの前に差し出した。
「この粉が、あの途方もなき力を?」
「そうだとも」
そこへ、準備を整えた兵士から報告が入る。
「砲台、準備完了しました!」
「よし、撃てッ!」
兵士たちは金属の筒の中に火を入れる。
一瞬間を置いて、ズドンと言う爆音が響き渡った。
「う、うわーッ!?」
「げほ、げほ……っ!?」
風で巻き上げられた大量の砂により、一瞬で目の前が真っ白になる。
いや、巻き上げられたのは砂だけでは無い。兵士たちも何人か、空高くへと飛ばされていく。
「な、何が起こった……!?」
「見えない! どこだ、どこにいる……ッ!?」
何とか地上に張り付いた残りの兵士も、砂と風のためにピクリとも動けない。
「やられたな……」
一方、ケネスは冷静に分析していた。
「まさかジョーヌ総裁も、魔術を使えたとは。集めた情報には、まったくそんな話は出てこなかった。流石に油断してしまった……。
が、まあ……、それならそれで、次の手を打てばいいだけのこと」
「ジャール! 3時方向に船を向けろ! ソコが一番、風を受ける!」
「了解しゃーしたッ!」
クリオの指示と魔術で、「テンペスト」号は勢い良く島を飛び出した。
「おやっさん、何で教えてくれなかったんですか?」
「あん?」
「こんなものすごい魔術使えるなんて、聞いてないですよ」
「そりゃそうだ。アレは最後の切り札だったからな」
ゴウゴウと風がうなりを上げる中、三人の間に安堵の雰囲気が漂う。
「しかし良かったっス、本当。おやっさんが無事でいてくれて……」
「本当ですよ。いつまで経っても帰ってこないから、どうしたのかと」
「悪かったな。……ま、相手も業を煮やしてたんだろ。さんざ計画してたコトがみんな、ブッ潰れちまったんだから。
でも、ま、コレでおしまいだよ。オレたちはしばらく、ベール島に移るコトにしようかなって考えてたんだ。もう海賊やる必要もねーし、特別造船所を移転しても、なーんも問題ないしな。
ベール島なら絶対安全だ。あそこの軍は滅法強い。攻めてくるバカも、人をさらおうとするバカもいやしねーよ」
クリオの話に、フォコも、ジャールも喜んだ。
「いいっスね……。ナラン島の生活ものんびりしてて悪くなかったっスけど、やっぱにぎやかなトコの方が楽しいっスから」
「ですよね。新生活も、そっちの方がしやすいですよね」
「お前さんとティナにとっちゃ、渡りに船みてーな話だろ」
「へへ、船なら今乗ってますよ」
「ハハ、そうだった」
三人は安堵しきり、笑いあっていた。
だが――。
「……ん?」
明け始めた洋上に、ほんのりと船影が見える。
「追って来た……?」
「おいおい、さっきの風とこの『テンペスト』の速度じゃ、追いつけねーって分かるだろうに。切れ者のケネスにしちゃ、往生際が悪いな……?」
クリオはけげんな顔で、追ってくる船を眺めた。
「……なんだ?」
ボン、と何かが勢い良く弾けたような音が、その船から響いてくる。
「何だ? 何か……、破裂した?」
フォコも気になり、顔を向けた。
次の瞬間――ジャールの巨体が、宙に浮いた。
「……がっ、げぼ、っ」
大量の木屑と血と共に、ジャールが甲板に叩きつけられる。
「……えっ」「……なに?」
何が起こったのか分からず、残った二人は辺りを見回した。
「……!?」
いつの間にか、「テンペスト」の甲板には大きな穴が空いていた。
「何が……、起こった?」
レヴィア軍の艦上で、ケネスが居丈高に叫ぶ。
「次、準備しろッ!」
「了解しました!」
レヴィア兵たちが、金属でできた筒状のものに、鉄球と黒い粉を詰める。
「これは……、何ぞ?」
覇気を抜かれたままだったアイシャが、目の前で繰り広げられた光景に気力を取り戻したらしい。あれほど忌避していたケネスに、自分から話しかけてきた。
「我がエンターゲート製造がゴールドマン商会に眠っていた技術と知識を活用し、密かに開発した新兵器だ。
剣よりも強く、魔術より速く、徹底的なダメージを与えられる、究極の兵器。それがこの粉だ」
ケネスは下卑た笑みを浮かべながら、樽に詰まった黒い粉を握って、アイシャの前に差し出した。
「この粉が、あの途方もなき力を?」
「そうだとも」
そこへ、準備を整えた兵士から報告が入る。
「砲台、準備完了しました!」
「よし、撃てッ!」
兵士たちは金属の筒の中に火を入れる。
一瞬間を置いて、ズドンと言う爆音が響き渡った。



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NoTitle
まあ、実際この後勃発することになりますが。