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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・啓示記 1

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    フォコの話、76話目。
    堕落した神童。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     空には満天の星。
     背中には堅いレンガ。
     右手には酒瓶。
     左手には穴の空いた財布。
     しかしその身には――何も宿さず。何も有さず。



     彼は生きていた。
     師匠であり、もう一人の親のようであった、「冷静かつ、熱くあれ」と教えた男の亡骸を洋上に葬り、難破した船を無理矢理に着岸させて、彼は生き延びた。

     彼は生き抜いた。
     流れ着いた街で働き、日に銀貨2枚、3枚の仕事をこなして一日をしのぎ、やがて辞め、旅をし、別の街で同じように過ごし、また離れ、漂った。

     彼の火は消えた。
     彼が必ず倒すと誓った敵は、彼のはるか遠くにいた。どの街にいても、敵のうわさを耳にしない日は無かった。それは紛れも無く敵の強大さを示すものであった。
     それが彼の心を折り、わずかに残っていた心中の火を、消させてしまった。

     彼の心は死んだ。
     敵に追いつけないと痛感した瞬間から、彼は生きる意味を失ったのだ。そうなれば毎日が無為であり、何をしても生きている実感が味わえない。
     それはもう、死んでいるのと同じことだった。



     彼はつぶやいた。
    「……クズ……」
     それは己のことだ。
    「……この……クズ……」
     昔、素晴らしい才能にあふれていたことなど、思い出せない。記憶のほとんどが、酒の霞の向こうへ漂っている。
    「……もう……ええかな……」
     彼は空の酒瓶を割った。
    「……ええよな……」
     割れた破片をぼんやりと眺め、もう一言つぶやいた。
    「……僕がおらんでも……何も変わらんよな……」
     彼は諦めに満ちたため息を吐き、破片を両手で握った。



     彼の名はニコル・フォコ・ゴールドマン。
     かつて世界の大商家、ゴールドマン家に生まれた神童であり、また、南海で火紅・ソレイユと言う名で船を造った経験もある青年だった。

     だがもう、彼の心には何も無かった。

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    業務連絡。
    テンプレートを変更したおかげで、PCからの閲覧がかなりすっきりしました。
    従来は最新話以外の話はすべて、この追記に移していたんですが、その必要もなくなりまして。
    で、今後は物語の内容を追記に移すことはせず、こちらは業務連絡や、ちょっとしたお話に使うことにします。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    今のところまだ大丈夫そうですよ。
    ドンマイ。

    NoTitle 

    ああ、2ページ目あったんだ
    他のも気づいたら飛ばしてたのかもv-393

    NoTitle 

    飛ばし過ぎ。
    一体どこから飛んだんですか……?

    推理してみるに、しやたんは第2部目次の「2ページ目」ではなく、
    第3部目次の「1ページ目」に行ってしまったみたいですね。
    ちなみに↓が、第2部の2ページ目です。
    http://auring.blog105.fc2.com/category13-1.html

    NoTitle 

    あれ?えっ?飛ばした?v-394
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