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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・政争記 6

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    フォコの話、86話目。
    金火狐一族の大移動。

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    6.
     いかに神算鬼謀を用いるケネスといえど、信用を失っては商人としての活動に支障が出る。
     ルピアの市場攻撃と告発により失った信用を回復し、また、一連の騒ぎから回避するため、ケネスは大規模な手を打ち出した。

    「居を移す?」
    「ええ。皆、知っていると思うが、このカレイドマインはもう、資源が枯渇しかかっている」
    「まあ、確かに」
     ケネスは金火狐一族を集め、その本拠をカレイドマインから移転する計画を発表した。
    「このままここでじっとしていれば我々の本業、拠り所である鉱業は成り立たなくなる。
     そこでここから南下し、大きな貴金属鉱床があると目されているイエローコーストへ陣取ろうと考えている。どうだろうか?」
    「イエローコーストちゅうたら……、コリンじいさんのおったところか」
    「でもあのじいさん、『ずーっと掘っとるけど、全然出てきよらんわ』てこぼしとったけどな」
     懐疑的な金火狐たちに対し、ケネスは持論を強く推す。
    「一度、商会再編のために、一族の事業を一時的に凍結したことがあっただろう? あの際に調べてみたのだが、コリン叔父貴の採掘方法は、非常に古臭かったのだ」
    「ほう……」
    「現在我々が持っている最新鋭の採掘技術をもってすれば、おそらく1~2年以内には、往年のカレイドマイン以上の採掘量が望めるだろう」
     ケネスの主張に、一族はまだ首を縦に振ろうとしない。
    「ホンマかいな」
    「アンタいっつも強引やからなぁ」
    「ただ単にアンタ、中央さんとかネールさんトコとかから、ちょっとでも離れたいと思てるんと違うん?」
    「あそこら辺、他にでかい商人おらへんもんな」
     痛いところを突かれ、ケネスはほんの少し顔をしかめる。
     だがそれでも、ケネスは引こうとしない。
    「それも無いと言えば嘘になる。だが、このままでいいと、引き下がるわけにもいかない。
     繰り返すが、いずれはカレイドマインの資源は枯渇する。主管事業である鉱業が成り立たなくなったら、我々は果たして金火狐の看板を維持できるだろうか?」
    「それは……、まあ……」
    「不安ちゅうたら不安やけども」
     迷いを見せた一族に、ケネスはダメ押しした。
    「決断していただきたい。痩せた故郷を取るか、これからの歴史と看板を取るか、を」

    「ゴールドマン商会が移転した?」
     その報せを受けたルピアは、自分の頭をクシャクシャとかいた。
    「どう捉えたものかな……。撤退したと見るべきか、態勢の立て直しと見るべきか」
    「俺には何とも言えないが、……まあ、とりあえずは向こうも、大きな動きはできないわけだ」
    「確かに。本拠を移すとなると、一月、二月じゃとても足りんからな。しばらくは、中央政府に構ってなんかいられんだろう。
     しかし……、イエローコーストだったか? どこなんだ、そこは?」
     いぶかしげな顔をするルピアに、ポーロは説明した。
    「央中の、かなり南の方だったはずだ。えーと、確か……、カーテンロック山脈の、南端くらい」
    「そりゃまたド田舎だな。一体何でそんなとこに……? 他の商会とバッティングするのを避けたかったんだろうか?」
    「うわさによれば、黄金が出るとか出ないとか」
     それを聞いて、ルピアは鼻で笑う。
    「はっ。逃げた先には黄金郷、か? そんな都合のいい話があってたまるものか」



     ところが1年後――本当に、黄金が出たのである。これにより、央中事情は再び激変した。
     ケネスの予測通り、イエローコーストの鉱産資源は非常に豊かなものであり、その年間産出量は、中央政府が同期間に発行する貨幣の2倍以上にもなっていた。
     それだけの量が出るのだから、資金と信用には困らない。取引においても、いくらでも補填と補償が効く。そのため商会の取引量と相手数は、あっと言う間にケネス告発以前を上回った。
     そしてその取引の中に、ネール家は介入できなくなってしまった。

    「まずいな……。下手するとうちはこのまま、孤立しかねない」
     取引相手の半分近くを奪われ、ネール職人組合は身動きが取れなくなくなりつつあった。
    「資金力で圧倒的不利だし、ゴールドマンよりもいい条件なんて出せない。……そりゃ、発注も断ってくるし、入札でも負けっぱなしになるわな」
    「どうするんだ、これから」
    「まあ、……まだ手はある。いくら中央大陸のあちこちに手を伸ばそうと、他の大陸にまでは手を出し切れないさ。
     今後しばらくは、中央大陸外との取引を強化しよう。……本拠の央中が、おろそかにならない程度に、な」
     そう結論付けたルピアだったが、その内心はひどく苛立っていた。
    (くそ……っ! まるで神か悪魔が味方に付いてるようだ、エンターゲートの奴!
     どうしてこうも、あいつのやることなすこと、うまく運ぶんだ……!? 世界があいつ中心に回ってるとしか思えない!
     ああ、くそ……っ! すまない、ランド……! 私はまだ、お前を救ってやれない……!)
     ルピアは心の中で、投獄されたままの息子を案じていた。

    火紅狐・政争記 終
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    NoTitle 

    ところが残念ながら、そうはならなかったわけで。
    詳しくは次回。

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    兄ちゃんを救うのはカーチャンかv-433
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