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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・乱北記 3

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    フォコの話、94話目。
    轟くカリスマ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     宿を離れた漁師をこっそりと尾行していた大火は、彼が裏通りへ入っていくのを確認した。
    (いかにも治安の悪そうなところへ、こんな時間に向かうとは。
     こちらに住処があるのか、それとも官憲の目の届かない何かに用があるか……)
     どうやら、後者だったらしい。
     漁師はある建物の前で立ち止まり、中から出てきた者と二言、三言交わして、そのまま中へ入っていった。
    (今出てきた奴ら……、どうみても堅気などではなさそうだ。裏事に通じていそうな顔をしている)
     大火はそこで、ぼそ、と呪文を唱えた。
    「……『インビジブル』」
     大火の姿がすっと消える。
    (何を相談する気……、まあ、言うまでも無いか。兵士の横暴を、吐露するのだろう)
     誰にも見えなくなった状態で、建物の奥へそっと入る。
    (ふむ)
     建物の中にはあちこちに武器が積まれており、そのあちこちで、物騒な話も聞こえてくる。
    「軍港はどう攻める?」
    「沖と陸、両面だそうだ。沖でおびき寄せて、艦が出るか出ないかのとこで火を放てば、そのまま落とせる」
    「軍港はイドゥン軍閥の要だからな。落ちれば勝利に大きく近付く」
     大火はそれらのヒソヒソ話を流し聞きつつ、建物の奥、ドアの無い広い部屋の前で立ち止まった。
    「本当にもう、今日と言う今日は」
    「わかる、わかるよー」
     先程の漁師を中心に、黒いフードを被った者たちが彼を囲んで話をしていた。
    「もうそろそろ、準備も整うから」
    「本当に?」
    「もちろんもちろん。それに今回は、助っ人も用意してる」
    「助っ人? ……まさか、あの?」
    「その通り。『猫姫』一派が来てくれるそうだ」
    「そりゃすごい……! これでイドゥン軍閥もおしまいだな」
    「うんうん、落とせるよー」
     一同に、喜びの雰囲気が漂った。
    (『猫姫』……?)
     話に上った人物がどんな人間なのか詳しく聞きたいと思ったが、話は別のところへ流れてしまった。
    「で、襲撃はいつに?」
    「明日の真夜中だ。『猫姫』が到着次第、彼らと合同で焼き討ちを決行する」

    「だそうだ」
     大火から話を聞き終えたランドは、短くうなった。
    「暴動騒ぎまで起きるなんて……、この国の混乱ぶりは相当だね」
    「にしても」
     フォコは話題に上った「猫姫」に興味を持った。
    「誰なんでしょうね、『猫姫』って。そんな、来ただけで士気の上がるようなカリスマなんでしょうか」
    「判断材料の無い今は、何とも言えないね」
    「ともかく、明日だ。それまではじっとしているとしよう」



     そして日が変わった、真夜中過ぎ。
    「軍港を攻めると言っていた。ここからなら、戦況を見渡しやすい」
     フォコとランドは大火に連れられ、グリーンプール港の廃倉庫に潜んでいた。
    「まだ、攻め込まれた様子はないですね」
    「みたいだね」
     と、ランドが何かに気付く。
    「……おかしいな?」
    「え?」
    「何だか、妙に肌寒い。湿度が急に上がってるような……?」
    「そう言われれば……」
     確かにランドの言う通り、尻尾が妙にしっとりと毛羽立ってくる。
    「……あの雨雲」
     と、大火が空を見上げてそうつぶやく。
    「あれは人工物だ。自然に発生・発達したものではない」
    「人工物? どうやって……?」
     大火は軍港の真上でもこもこと膨れ上がっていく、べっとりと黒ずんだ雨雲を指差した。
    「雲の切れ間に見える、あの紫色の光。雷ではない――魔力の光だ」
     次の瞬間、雨雲から極太の雷が、恐ろしげな音を立てて落ちていった。
    「わ、っ……」
     辺りに轟いた爆音に、フォコは思わずしゃがみ込む。
    「なるほど、カリスマか。確かにこれだけの力があれば、そう賞賛されていてもおかしくはない」
     大火は珍しく、口角をわずかに上げてニヤリと笑った。
    「面白い。蘇った甲斐があったと言うものだ、な」
    「蘇った……?」
     ランドが尋ねるが、大火は答えず、代わりに状況の説明に入る。
    「あの一撃で、恐らく軍港内は火の海だ。沖から攻めてくる船を迎撃しようと出港しかけた艦が燃え上がり、辺りに飛び火。敵兵は迎撃と消火活動に挟まれ、身動きが取れんだろう。
     『猫姫』側の勝利だ」
     大火の言う通り、やがて軍港から真っ黒な煙と、それを橙色に照らす炎が噴き出し始めた。
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    NoTitle 

    ??
    まさか、って何が……?

    NoTitle 

    猫姫ってまさかっ!v-405
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