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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第3部

    蒼天剣・悪夢録 5

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    晴奈の話、第83話。
    本物の、夢のお告げ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
     目を覚まし、晴奈は辺りを見回すが、明奈はいなかった。どうやら自分より早く起きて、自分の部屋に戻ったらしい。
    (あの夢は一体……?)
     ぼんやりとしながらも、晴奈は着替えを始める。
     と、衣装棚にあった水色の着物が目に入る。
    (水色の着物、か。まあ、夢だろうが)
     あまり信じてはいなかったが、どうしても気になったので、晴奈はそれを着た。
     部屋を出たところで丁度、隣にある明奈の部屋の戸も開く。
    「ああ明奈、おは……」「あ、お姉さま。おは……」
     挨拶しかけて、晴奈は絶句した。明奈も目を見開き、驚いている。
     何故なら明奈も、水色の着物を着ていたからだ。

     朝食の後、晴奈と明奈――晴明姉妹は父、紫明に呼ばれた。
    「どうされたのですか、父上?」
    「うむ、実は……」
     紫明は浮かない顔で、懐から一通の手紙を取り出した。
    「今朝早く、文が投げ込まれたのだ。どうやら黒炎教団からのものらしい」



    「黄海及び黄商会の宗主、黄紫明殿へ

     昨日、我らが同志、メイナ・コウの身柄引き渡しを願い出ようとしたところ、そちらの友軍である焔流一派に妨害され、多数の被害者を出した。
     その責を問うため、3日後にふたたび身柄確保に乗り出す所存である。万が一、焔流の者がその席にいた場合、我々は実力を以って、そちらに用件を受諾していただくように対処するであろう。
     無論我々は、円満な話し合いによって交渉がまとまることを望んでいる。そちらでも、黄州及び央南西部の平和と黄商会の利益の観点を鑑み、十分に検討していただくよう、考慮されたし。

    黒炎教団 大司教 央南方面布教活動統括委員長 ワルラス・ウィルソン2世」



    「これは……」
     手紙を読んだ晴奈は思わず、手紙を破り捨てそうになった。だが何とかこらえて、父の話を聞く。
    「ああ、字面では穏やかな話し合いを望んでいるとのことだが、十中八九、明奈を強奪するつもりなのだろう」
    「『願い出ようとした』だの、『被害者を出した』だの……、嘘もいいところだ!」
     憤慨する晴奈に対し、紫明は浮かない顔をしている。
    「私としては、その……」
    「父上?」
     言いにくそうにする父を見て、明奈は父の胸中を察する。
    「前回同様、わたしの身柄でこの街と商会の平和が保たれるならば、彼らの要求に応じようと、そうお答えするつもりでしょう?」
    「あ、いや、その……」
     明奈は落ち着き払った、堂々とした態度で応対する。
    「昔とは違って、わたしも大きくなりました。自分の身の振りは、自分で決めさせてくださいませ」
    「いや、しかし……」
     一方、紫明は言葉を濁し、明奈の言葉にうなずこうとしない。
     そんな父の態度を見て、晴奈は歯噛みする。
    (何故だ父上、どうして一言『分かった』と言わない?
     ……ああ、この人はいまだ昔と変わらぬのか。娘は自分の所有物だと言う、その考えがまだ抜けていないのか)
     そう悟り、晴奈の怒りはますます燃え上がる。
     たまらず声を上げようとした、その時――明奈が姉の心中を代弁した。
    「昔の、お父さまの庇護の下にあった時のわたしであれば、わたしはお父さまの言う通りに従ったでしょう。
     しかし、わたしも大人になりました。この先お父さまの考えに従い、そのまま教団に渡ったならば、わたしの身は一体どうなると思います?」
    「どう、って」
    「恐らく教主のご子息が無理矢理に、わたしを娶ろうとされるでしょう」
     この一言に、紫明は「むう……」と声を漏らす。
    「もしそれが実現すれば、きっと黄家は絶えてしまいます。教団にすべてをむしりとられて」
    「……」
     明奈はなお、毅然とした態度で父を説得する。
    「ねえ、お父さま。重ねて申し上げますが、昔とは違うのです。
     今なら剣を極めたお姉さまがいらっしゃいます。エルスさんたちも、協力してくださるでしょう。戦う力は、十分にあるはずです。
     今、相手の要求をはねつけなければ、10年後、20年後の黄海と央南西部はきっと、黒く染まってしまいます。わたしは嫌ですよ、この愛すべき街が黒海などと言う名になってしまっては。
     敵の言いなりになって1年、2年の安息を得るより、今こそ決別、打倒して10年、20年、いえ、100年の繁栄を勝ち取る方が、懸命な判断ではないでしょうか?」
    「……そうだな」
     明奈の説得に紫明はようやくうなずき、もう一通懐から手紙を出した。
    「これは?」
    「お前の言う通りかもしれないな、明奈。教主の息子から、こんな手紙が来ていたのだ」
     紫明は晴奈に手紙を渡し、読むよう促した。
     読み始めた晴奈は、途中で――今度はこらえる気など毛頭起こらず――手紙を破り捨てた。
    「……下衆が!」
    「お姉さま?」
    「まったくウィルバーめ、どこまで色狂いか! 明奈と自分は、前世から夫婦になる定めだとか、明奈の自分に対する気持ちは分かっている、自分は全力を以ってそれに応えるだとか、滅茶苦茶なことを書いているんだ!」
    「何ですって……!」
     冷静だった明奈も、この時ばかりは流石に嫌そうな顔をした。紫明は一瞬顔を伏せてため息をつき、そして決意に満ちた目を二人に見せた。
    「明奈、お前の話で、私の目は覚めたよ。……断固、黒炎と戦おう」

     紫明の決意も固まったため、晴奈たちはエルスに助太刀を願い出ようと、彼の住んでいる屋敷へと向かっていた。
    「ねえ、お姉さま」
    「ん?」
    「水色の着物、エルスさんへの用事。これって」
    「……やっぱり明奈も、あの夢を?」
     明奈はコクリと、小さくうなずく。
    「ええ、白猫さんの夢よね。もし、あの方の言ったことが本当なら」
    「5万の軍勢が攻めてくる、か。ぞっとしないな」
    「きっと本当でしょうね。
     彼女の言葉はとても風変わりだったけれど、内容はとても真面目でした。わたしたちの身を案じてくれる気持ちは、真実だと思います」
    「ああ、私もそう、……彼女? いや、言われてみれば、確かに女とも取れる顔立ちと声をしていたが、しかし自分のことを『ボク』と呼んでいたような。彼奴は男では無いのか?」
    「え、そう……、だったかしら。……どっちでしょうね?」
     二人は夢の内容を思い返し、やがてクスクスと笑い始めた。
    「くく、考えれば考えるほど、分からない」「そうね、うふふ」



     この後、晴奈たちの願いを聞き入れ、エルスは協力を快諾してくれた。
     すぐに黒炎教団に対する部隊が組織され、エルスは隊長、晴奈が副隊長となった。
     そしてこれより――黒炎との戦いが、始まる。

    蒼天剣・悪夢録 終

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2008.10.09 転載
    2016.03.06 修正
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    NoTitle 

    さーどっちでしょー。

    NoTitle 

    僕っ娘だと・・・v-283

     

    どもども、いつもありがとうございます。

    ウィルバーは気取るところがあります。
    キャラを作りたがるというか。
    今回の手紙も、「自分は女たらしだ」とアピールしたかったのかも。
    明奈に対しては、ウィルバーはそんなに本気じゃないかも知れません。
    単に「可愛い娘だし口説いておこう」くらいの。

     

    戦いが始まる!!ってところで終わりますね。どうもLandMです。以前はコメント誠にありがとうございました。コメント無精なのに申し訳なかったです。恙無く送らせていただきました。

    レッドクリフでもそうでしたけど、戦場を女性が飾るというのは面白いですよね。周囲から見れば『馬鹿じゃないの。』と思うところも、本人的には至極本気ですからね。ウィルバー的には至極本気なんでしょうね。


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