「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第3部
火紅狐・挟策記 2
フォコの話、125話目。
白熱するだけの会議。
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2.
一方、こちらはノルド峠を上る、フォコたち一行。
「うまく行けば、敵はソーリン砦で硬直したままのはずさ。
万一、攻め込んだとしても、キルシュ卿とクラウス陛下、あと、資産とかはアーゼル砦まで撤退、移送できるように、手筈は整えてる。
相手がどう動こうとも、こちらの負けは無い。この防衛戦は、実を言えばそんなに重要でもないし、痛手もない。
本当に重要なのは、彼らが僕らに対しどう動くのか、見せてもらうことにある」
ランドの言葉に、レブが噛みつく。
「重要じゃねーって……、砦いっこ落とされてもか?」
「うん。そりゃ確かに、一時的にせよ、ミラーフィールドと言う裕福な領地を失うのは痛いさ。でもそんな損失よりも、敵の動きを観察して得るものの方が、非常に大きい。
お金や土地は現在の価値でしか測れないけど、敵の情報は後々になればなるほど、その価値を高めていく。これは言い換えれば、投資なんだ」
「投資ぃ……?」
まだ納得の行かない顔をするレブに、ランドはニコニコ笑いながら説明する。
「例えばさ、カードゲームで、相手の持ってるカードが全部見えてたらさ、負けると思う?」
「いやぁ……、そりゃ勝つだろ。んなもん分かってたら、相手が何切ってくるか、丸わかりだし」
「だろ? 今回狙ってるのは、それさ。
この一件で、僕たちは敵の手持ちカードをすべて、確認させてもらうのさ」
結局、ソーリン砦に集まったノルド王国軍は、攻め込むこともせず、かと言って撤退して態勢を整え直す、と言うこともせず、ソーリン砦に駐留したままだった。
「まったく……! 無駄な論議の間に、敵は戻ってきてしまったぞ! どうするおつもりか、各々方!」
まったく成果が挙がらず、苛立っていた将軍の一人が声を荒げる。
「どうするもこうするもない。機が悪かったと言うことだ。ここは一旦戻って……」
「馬鹿な! 敵を目の前にして、すごすご引き下がれるかッ!」
「落ち着け落ち着け! これは敵の罠だ!」
憶測に憶測が重なり、会議は混沌とし始める。
「罠、罠、罠! 何でもかんでも罠だと言うのか! そんなもの、最初からありはしなかったのだ! 我々は踊らされたのだ、無様にな!」
「そんな証拠がどこにある! 我々は賢明だった! 罠にかからなかったのだからな!」
「だったら罠があったと証明してみせろ! あったのなら謝罪してやる!」
「何でそんな話になる!? そんなことを論じて何になるのだ!?」
「いいから証明だ! 敵が罠を張ってたなら、今後も張る! それなら今度こそ看破して攻められると言うもの!」
「無い無い無い! そんなものは、無い! いいからもう、さっさと攻め込むぞ!」
「何でお前に命令されなきゃならんのだ!」
混沌とした会議は、次第に険悪な様相を呈していく。
「して悪いか!? お前ら全員、グズグズしてるからこんな体たらくなんだぞ! 誰かが音頭取って進めなきゃ、どうしようもないだろう!?」
「だからって、なんでお前が指図する!? 黙ってろ!」
「黙れ!? 一体誰に向かってものを言って……」「『グレイブファング』ッ!」
突然、ドス、と言う音を立て、円卓の中心に石柱が突き立てられた。
「な、なんだ……!?」
「お静まりください! どうか、お静かに!」
石柱を突き立てたのは、スノッジ将軍だった。
自分の砦でこれ以上いさかいが起きるのを嫌った彼女は、場を無理矢理にまとめる。
「ともかく、会議は一旦、ここでおしまいになさってください! これ以上続ければ、会議ではなく殴り合いになってしまいます!
また後日、各自冷静になってから、対応を考えることにいたしましょう! 異議、異論はございますか、みなさん!?」
魔杖を振り上げるスノッジ将軍の剣幕に、他の将軍たちは一斉に沈黙し、円卓を後にした。
思わぬ事態になり、スノッジ将軍は自室で頭を抱えていた。
(もう……! 誰も彼も愚か者、愚か者! 何と言う愚か者だこと!
攻めるにしても攻めないにしても、みんなわがままに口出しするものだから、会議を行えば行うほど、空気がおかしくなるだけ。
まあ、そうよね……、それが北方の気質なのよね。権力者層がみんな、我が強くてわがままなんだもの。目的が一致すれば、一丸となって兵士をグイグイ精力的に引っ張っていくけれど、こうして意見が割れたら、もうどうしようもない。とことん対立して、関係が崩れていくばかり。
……こんなことを考えてる場合じゃないわよね。ともかく意見をまとめて、攻めるか戻るかしてもらわないと。
もうジーン王国からもらった1000万、半分以上が溶けてきているし……。本軍があんまりにも長居するものだから、その接待のせいで、折角のお金がどんどん無くなってしまうわ。
さっさと追い出さなきゃ、1億どころではなくなってしまう)
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白熱するだけの会議。
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一方、こちらはノルド峠を上る、フォコたち一行。
「うまく行けば、敵はソーリン砦で硬直したままのはずさ。
万一、攻め込んだとしても、キルシュ卿とクラウス陛下、あと、資産とかはアーゼル砦まで撤退、移送できるように、手筈は整えてる。
相手がどう動こうとも、こちらの負けは無い。この防衛戦は、実を言えばそんなに重要でもないし、痛手もない。
本当に重要なのは、彼らが僕らに対しどう動くのか、見せてもらうことにある」
ランドの言葉に、レブが噛みつく。
「重要じゃねーって……、砦いっこ落とされてもか?」
「うん。そりゃ確かに、一時的にせよ、ミラーフィールドと言う裕福な領地を失うのは痛いさ。でもそんな損失よりも、敵の動きを観察して得るものの方が、非常に大きい。
お金や土地は現在の価値でしか測れないけど、敵の情報は後々になればなるほど、その価値を高めていく。これは言い換えれば、投資なんだ」
「投資ぃ……?」
まだ納得の行かない顔をするレブに、ランドはニコニコ笑いながら説明する。
「例えばさ、カードゲームで、相手の持ってるカードが全部見えてたらさ、負けると思う?」
「いやぁ……、そりゃ勝つだろ。んなもん分かってたら、相手が何切ってくるか、丸わかりだし」
「だろ? 今回狙ってるのは、それさ。
この一件で、僕たちは敵の手持ちカードをすべて、確認させてもらうのさ」
結局、ソーリン砦に集まったノルド王国軍は、攻め込むこともせず、かと言って撤退して態勢を整え直す、と言うこともせず、ソーリン砦に駐留したままだった。
「まったく……! 無駄な論議の間に、敵は戻ってきてしまったぞ! どうするおつもりか、各々方!」
まったく成果が挙がらず、苛立っていた将軍の一人が声を荒げる。
「どうするもこうするもない。機が悪かったと言うことだ。ここは一旦戻って……」
「馬鹿な! 敵を目の前にして、すごすご引き下がれるかッ!」
「落ち着け落ち着け! これは敵の罠だ!」
憶測に憶測が重なり、会議は混沌とし始める。
「罠、罠、罠! 何でもかんでも罠だと言うのか! そんなもの、最初からありはしなかったのだ! 我々は踊らされたのだ、無様にな!」
「そんな証拠がどこにある! 我々は賢明だった! 罠にかからなかったのだからな!」
「だったら罠があったと証明してみせろ! あったのなら謝罪してやる!」
「何でそんな話になる!? そんなことを論じて何になるのだ!?」
「いいから証明だ! 敵が罠を張ってたなら、今後も張る! それなら今度こそ看破して攻められると言うもの!」
「無い無い無い! そんなものは、無い! いいからもう、さっさと攻め込むぞ!」
「何でお前に命令されなきゃならんのだ!」
混沌とした会議は、次第に険悪な様相を呈していく。
「して悪いか!? お前ら全員、グズグズしてるからこんな体たらくなんだぞ! 誰かが音頭取って進めなきゃ、どうしようもないだろう!?」
「だからって、なんでお前が指図する!? 黙ってろ!」
「黙れ!? 一体誰に向かってものを言って……」「『グレイブファング』ッ!」
突然、ドス、と言う音を立て、円卓の中心に石柱が突き立てられた。
「な、なんだ……!?」
「お静まりください! どうか、お静かに!」
石柱を突き立てたのは、スノッジ将軍だった。
自分の砦でこれ以上いさかいが起きるのを嫌った彼女は、場を無理矢理にまとめる。
「ともかく、会議は一旦、ここでおしまいになさってください! これ以上続ければ、会議ではなく殴り合いになってしまいます!
また後日、各自冷静になってから、対応を考えることにいたしましょう! 異議、異論はございますか、みなさん!?」
魔杖を振り上げるスノッジ将軍の剣幕に、他の将軍たちは一斉に沈黙し、円卓を後にした。
思わぬ事態になり、スノッジ将軍は自室で頭を抱えていた。
(もう……! 誰も彼も愚か者、愚か者! 何と言う愚か者だこと!
攻めるにしても攻めないにしても、みんなわがままに口出しするものだから、会議を行えば行うほど、空気がおかしくなるだけ。
まあ、そうよね……、それが北方の気質なのよね。権力者層がみんな、我が強くてわがままなんだもの。目的が一致すれば、一丸となって兵士をグイグイ精力的に引っ張っていくけれど、こうして意見が割れたら、もうどうしようもない。とことん対立して、関係が崩れていくばかり。
……こんなことを考えてる場合じゃないわよね。ともかく意見をまとめて、攻めるか戻るかしてもらわないと。
もうジーン王国からもらった1000万、半分以上が溶けてきているし……。本軍があんまりにも長居するものだから、その接待のせいで、折角のお金がどんどん無くなってしまうわ。
さっさと追い出さなきゃ、1億どころではなくなってしまう)
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