「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第3部
火紅狐・挟策記 3
フォコの話、126話目。
視点の違い。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「なるほど……、貴重な情報、ありがとうございます」
本軍に知られないよう、密かにイスタス砦を訪れ、砦で行われた会議の様子を伝えたスノッジ将軍に、ランドは深々と頭を下げた。
「それで、その……、できれば、もう少しばかり……」
「ええ、情報料と言うことで。ホコウ、いいよね?」
ランドに尋ねられ、フォコも大きくうなずく。
「ええ、勿論。結構ご入り用みたいですし、ここはドンと、2000万ほどお渡ししときましょか」
「そ、そんなに? ……あ、いえ、いただけるならもう、いくらでもありがたいので」
スノッジ将軍は半ば卑屈なほどに、ぺこぺこと頭を下げた。
スノッジ将軍が帰った後、ランドはイールたち将軍を呼び寄せた。
「そろそろ攻め頃だ。準備を整えて、首都を陥落させよう」
「な、何ぃ!? ソーリン砦じゃなくて、いきなり首都かよ!? 正気かよ、ランド?」
面食らうレブに対し、ランドはコクリとうなずく。
「勿論正気さ。理由もある。ソーリン砦に本軍が集まり、結論の出ない会議に終始している今がチャンスなんだ。
本軍の大部分が離れているから首都の守りは手薄なはずだし、敵が砦防衛組と首都攻略組とで割れたら、相手はどちらを攻めるかでまた一悶着。結論の出ないまま……」
「……敵軍の大部分が動けないまま、首都陥落ってことね。まったく、悪魔みたいな策をよく考え付くわね、ランド」
イールの言葉に、ランドは肩をすくめる。
「悪魔とは人聞きが悪い。イスタス砦の時も、ノルド峠の時も。そして今も、僕は犠牲の出ない方法を採ってるだけさ。
本当に悪魔的って言うなら、スノッジ将軍を借金漬けにして、彼女の砦内で将軍たちで同士討ちにさせる方が、よっぽど効果的ってもんさ」
沿岸部での一件を皮肉ったランドに、フォコは苦笑した。
「はは……。
でもランドさん、いっこ問題あるんとちゃいます、その作戦?」
「うん?」
「ここから首都へ行く道、細いのんも入れたら何本かはありますけど、こっちの兵隊さんが一気に通れるような大きな道って、スノッジ卿のいてはるソーリン砦の裏手にありますよね?
いくらなんでも、首都には何百、何千かくらいはまだ、兵隊さんいてはると思うんですけど、どうやってそれを突破して、陥落させるんですか?
まさかまた、タイカさん頼みなんやないですよね……?」
話を聞いていた大火が、顔をしかめる。
「無理を言うな。数人程度なら、『テレポート』なり『エアリアル』で運んではいける。
だが、数千人単位を運ぶとなると、それなりの規模の魔法陣が、ここと、移送先に必要になる。
まさか敵の目の前で、怪しげな魔法陣をのんきに描いていろと言うのか? とんだ間抜けになるぞ」
「あ、いやいや。僕たちはあくまでも、平和的解決をしたいからさ。
君たちだって、わざわざ同郷の人間と戦いたくないだろ?」
「まあ……」「そりゃ、ねぇ」
うなずくイールとレブにほんのり得意げな表情を向けつつ、ランドは策を明かした。
「ソーリン砦の大軍と言う、巨大な壁。それが動けば、後には何にも障害はない」
数日後に再開された会議は、またも紛糾した。
「いい加減、どちらかだ! どちらかに、スパッと決めろ! 攻め込むか! それとも尻尾を巻いて逃げるか!」
「言い方を考えろよ……。逃げる、じゃなくて、態勢を整え直す、だろう?」
「どちらでも同じだ! 敵前逃亡もいいところだろうが!」
「もうごねるのやめろよ……」
と、こんな風に進展のないまま会議が続く中、スノッジ将軍はぼんやり、ジーン王国との取引に思いを巡らせていた。
(情報提供で2000万……。多少のリスクは伴うけれど、その額は大きいわ。ここでもう少し場を引っ張って、もっと出してもらおうかしら?
ああ、でもあの眼鏡のエルフ、……そう、ファスタ卿。彼は切れ者だし、嘘をついたり、どうでもいい情報を流したりしたとしても、きっと報酬は寄こさないわね。
となると有益な情報を、『作る』必要があるわね)
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「なるほど……、貴重な情報、ありがとうございます」
本軍に知られないよう、密かにイスタス砦を訪れ、砦で行われた会議の様子を伝えたスノッジ将軍に、ランドは深々と頭を下げた。
「それで、その……、できれば、もう少しばかり……」
「ええ、情報料と言うことで。ホコウ、いいよね?」
ランドに尋ねられ、フォコも大きくうなずく。
「ええ、勿論。結構ご入り用みたいですし、ここはドンと、2000万ほどお渡ししときましょか」
「そ、そんなに? ……あ、いえ、いただけるならもう、いくらでもありがたいので」
スノッジ将軍は半ば卑屈なほどに、ぺこぺこと頭を下げた。
スノッジ将軍が帰った後、ランドはイールたち将軍を呼び寄せた。
「そろそろ攻め頃だ。準備を整えて、首都を陥落させよう」
「な、何ぃ!? ソーリン砦じゃなくて、いきなり首都かよ!? 正気かよ、ランド?」
面食らうレブに対し、ランドはコクリとうなずく。
「勿論正気さ。理由もある。ソーリン砦に本軍が集まり、結論の出ない会議に終始している今がチャンスなんだ。
本軍の大部分が離れているから首都の守りは手薄なはずだし、敵が砦防衛組と首都攻略組とで割れたら、相手はどちらを攻めるかでまた一悶着。結論の出ないまま……」
「……敵軍の大部分が動けないまま、首都陥落ってことね。まったく、悪魔みたいな策をよく考え付くわね、ランド」
イールの言葉に、ランドは肩をすくめる。
「悪魔とは人聞きが悪い。イスタス砦の時も、ノルド峠の時も。そして今も、僕は犠牲の出ない方法を採ってるだけさ。
本当に悪魔的って言うなら、スノッジ将軍を借金漬けにして、彼女の砦内で将軍たちで同士討ちにさせる方が、よっぽど効果的ってもんさ」
沿岸部での一件を皮肉ったランドに、フォコは苦笑した。
「はは……。
でもランドさん、いっこ問題あるんとちゃいます、その作戦?」
「うん?」
「ここから首都へ行く道、細いのんも入れたら何本かはありますけど、こっちの兵隊さんが一気に通れるような大きな道って、スノッジ卿のいてはるソーリン砦の裏手にありますよね?
いくらなんでも、首都には何百、何千かくらいはまだ、兵隊さんいてはると思うんですけど、どうやってそれを突破して、陥落させるんですか?
まさかまた、タイカさん頼みなんやないですよね……?」
話を聞いていた大火が、顔をしかめる。
「無理を言うな。数人程度なら、『テレポート』なり『エアリアル』で運んではいける。
だが、数千人単位を運ぶとなると、それなりの規模の魔法陣が、ここと、移送先に必要になる。
まさか敵の目の前で、怪しげな魔法陣をのんきに描いていろと言うのか? とんだ間抜けになるぞ」
「あ、いやいや。僕たちはあくまでも、平和的解決をしたいからさ。
君たちだって、わざわざ同郷の人間と戦いたくないだろ?」
「まあ……」「そりゃ、ねぇ」
うなずくイールとレブにほんのり得意げな表情を向けつつ、ランドは策を明かした。
「ソーリン砦の大軍と言う、巨大な壁。それが動けば、後には何にも障害はない」
数日後に再開された会議は、またも紛糾した。
「いい加減、どちらかだ! どちらかに、スパッと決めろ! 攻め込むか! それとも尻尾を巻いて逃げるか!」
「言い方を考えろよ……。逃げる、じゃなくて、態勢を整え直す、だろう?」
「どちらでも同じだ! 敵前逃亡もいいところだろうが!」
「もうごねるのやめろよ……」
と、こんな風に進展のないまま会議が続く中、スノッジ将軍はぼんやり、ジーン王国との取引に思いを巡らせていた。
(情報提供で2000万……。多少のリスクは伴うけれど、その額は大きいわ。ここでもう少し場を引っ張って、もっと出してもらおうかしら?
ああ、でもあの眼鏡のエルフ、……そう、ファスタ卿。彼は切れ者だし、嘘をついたり、どうでもいい情報を流したりしたとしても、きっと報酬は寄こさないわね。
となると有益な情報を、『作る』必要があるわね)
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NoTitle
しかしそれもランドの予想済みです。