「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第3部
火紅狐・地星記 2
フォコの話、130話目。
いつのまにやら。
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2.
困惑したままの将軍たちは、とりあえずイスタス砦の外に出て、検討を始める。
「スノッジ卿の言では、ここには10億、20億クラムは金があったと言うことだったが……」
「あんな守銭奴の意見なんか、……いや、金の話だけに、それは信憑性があるか」
「国庫には、1グランもありませんでしたね」
「そしてジーン王以下、砦内にいると思われた人間は、一人もいない、……か」
そして、結論に至った。
「逃げられた、……か」
「それ以外、考えられない。……くそ、3日も猶予を与えるから!」
「俺たちとしたことが、あんな守銭奴の意見に耳を傾けてしまうとは」
「済んだことを論じても、仕方あるまい。今後の展開を考えておかなくては」
将軍たちは消えたジーン王国の首脳と将兵の行方を探ろうと、市街地に住んでいる者たちに話を聞いて回った。
だがそれも空振りに終わり、将軍たちは次に打つべき一手を見失ってしまった。
「どうします?」
「……帰るか。ここにいても意味はない。とりあえず将軍1、2名は駐留するとして……」
と、とりあえずの対策を立てていたその時だった。
「お話の途中、失礼いたします……」
将軍たちの話の輪に割って入ろうとする者が現れた。
「なんだ、お前は?」
「ジーン王国からの使いでございます」
「なんだと?」
将軍たちに一斉ににらまれつつも、その伝令は用件を伝えてくれた。
「その……、大変、申し上げにくいのですが」
「なんだ、と聞いている」
「昨日を持ちまして、ノルド王国はジーン王国に、その……、併合、されました」
「……なんだと?」
「ノルド王国が持つ領地はすべて、ジーン王国領となりました」
この言葉に、全員の目が点になった。
「……嘘だ」
「本当、です。……あの、こちらが併合宣言書です」
伝令が恐る恐る取り出した書簡をひったくるようにして受け取り、読み進めた将軍たちは、一様に膝を着き、脱力した。
「……そんな、ばかな……」
昨日、明け方。
「制圧、……完了できたね」
この時点で既に、ジーン王国軍はノルド王国の首都、フェルタイルに攻め入っていた。
とは言え、敵軍の半数以上はイスタス砦に向かっている最中である。敵の兵力は通常の半分以下であり、さらには指揮する将軍、指示できる人材も、非常に少ない。その上、はるか遠くにいるはずの敵であり、対策など講じているわけがない。
イールを初めとする精鋭と、ランドの卓越した戦略・戦術の前には、あまりにも想定外の襲撃を受けて困惑していたノルド軍が対抗できる術は、何も無かった。
ジーン軍は瞬く間に城下町と、軍本部などの主要拠点を制圧し、残るは王族の住む城のみと言う状況になっていた。
「こうなるのに、何年かかるかって思ってたのになー……」
制圧した今も、イールは信じられないと言う顔をしている。
「確かに……、ホコウの資金創出やタイカの魔術が無かったら、10年、20年の長い戦いになってたと思う。……本当に、感謝するよ」
「へへ、ども」
「……」
褒めちぎられたフォコと大火は――片方はヘラヘラと、もう片方はニヤリと――笑って返した。
「……で、残るは城だけど。どうやって投降してもらおうかな」
そうつぶやいたランドの背後から、声がかけられた。
「ファスタ卿。私に、任せてくれないか」
「……クラウス陛下?」
背後に立っていたのはキルシュ卿の息子であり、ジーン王国の首長に担ぎ上げられたエルフ、クラウス・ジーンだった。
「その……、君たちにばかり、重要な仕事をさせるわけには行かないよ。……仮にも、王だから」
「……そうですね。王への交渉・説得、となると、同じ高さにいる、こちらの王が出てこないと話にならないでしょうし」
「ああ。それに現国王のバトラー・ノルドとは、若い頃に良く話を交わした間柄なんだ。彼のことは、良く知っているつもりだ。
この交渉には、君やソレイユ君よりも、私の方がうってつけのはずさ」
「なるほど。……そう言う事情でしたら、確かにお任せしないわけには行きませんね。
では、僕とイールが補佐に付きます」
「いや、しかし……」
「いえ、あくまでも交渉は陛下お一人にお任せするつもりです。しかし単身、中に飛び込ませるわけには行きませんから」
「……分かった。では、ノルド王に会うまでは、付いてきてくれ」
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いつのまにやら。
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2.
困惑したままの将軍たちは、とりあえずイスタス砦の外に出て、検討を始める。
「スノッジ卿の言では、ここには10億、20億クラムは金があったと言うことだったが……」
「あんな守銭奴の意見なんか、……いや、金の話だけに、それは信憑性があるか」
「国庫には、1グランもありませんでしたね」
「そしてジーン王以下、砦内にいると思われた人間は、一人もいない、……か」
そして、結論に至った。
「逃げられた、……か」
「それ以外、考えられない。……くそ、3日も猶予を与えるから!」
「俺たちとしたことが、あんな守銭奴の意見に耳を傾けてしまうとは」
「済んだことを論じても、仕方あるまい。今後の展開を考えておかなくては」
将軍たちは消えたジーン王国の首脳と将兵の行方を探ろうと、市街地に住んでいる者たちに話を聞いて回った。
だがそれも空振りに終わり、将軍たちは次に打つべき一手を見失ってしまった。
「どうします?」
「……帰るか。ここにいても意味はない。とりあえず将軍1、2名は駐留するとして……」
と、とりあえずの対策を立てていたその時だった。
「お話の途中、失礼いたします……」
将軍たちの話の輪に割って入ろうとする者が現れた。
「なんだ、お前は?」
「ジーン王国からの使いでございます」
「なんだと?」
将軍たちに一斉ににらまれつつも、その伝令は用件を伝えてくれた。
「その……、大変、申し上げにくいのですが」
「なんだ、と聞いている」
「昨日を持ちまして、ノルド王国はジーン王国に、その……、併合、されました」
「……なんだと?」
「ノルド王国が持つ領地はすべて、ジーン王国領となりました」
この言葉に、全員の目が点になった。
「……嘘だ」
「本当、です。……あの、こちらが併合宣言書です」
伝令が恐る恐る取り出した書簡をひったくるようにして受け取り、読み進めた将軍たちは、一様に膝を着き、脱力した。
「……そんな、ばかな……」
昨日、明け方。
「制圧、……完了できたね」
この時点で既に、ジーン王国軍はノルド王国の首都、フェルタイルに攻め入っていた。
とは言え、敵軍の半数以上はイスタス砦に向かっている最中である。敵の兵力は通常の半分以下であり、さらには指揮する将軍、指示できる人材も、非常に少ない。その上、はるか遠くにいるはずの敵であり、対策など講じているわけがない。
イールを初めとする精鋭と、ランドの卓越した戦略・戦術の前には、あまりにも想定外の襲撃を受けて困惑していたノルド軍が対抗できる術は、何も無かった。
ジーン軍は瞬く間に城下町と、軍本部などの主要拠点を制圧し、残るは王族の住む城のみと言う状況になっていた。
「こうなるのに、何年かかるかって思ってたのになー……」
制圧した今も、イールは信じられないと言う顔をしている。
「確かに……、ホコウの資金創出やタイカの魔術が無かったら、10年、20年の長い戦いになってたと思う。……本当に、感謝するよ」
「へへ、ども」
「……」
褒めちぎられたフォコと大火は――片方はヘラヘラと、もう片方はニヤリと――笑って返した。
「……で、残るは城だけど。どうやって投降してもらおうかな」
そうつぶやいたランドの背後から、声がかけられた。
「ファスタ卿。私に、任せてくれないか」
「……クラウス陛下?」
背後に立っていたのはキルシュ卿の息子であり、ジーン王国の首長に担ぎ上げられたエルフ、クラウス・ジーンだった。
「その……、君たちにばかり、重要な仕事をさせるわけには行かないよ。……仮にも、王だから」
「……そうですね。王への交渉・説得、となると、同じ高さにいる、こちらの王が出てこないと話にならないでしょうし」
「ああ。それに現国王のバトラー・ノルドとは、若い頃に良く話を交わした間柄なんだ。彼のことは、良く知っているつもりだ。
この交渉には、君やソレイユ君よりも、私の方がうってつけのはずさ」
「なるほど。……そう言う事情でしたら、確かにお任せしないわけには行きませんね。
では、僕とイールが補佐に付きます」
「いや、しかし……」
「いえ、あくまでも交渉は陛下お一人にお任せするつもりです。しかし単身、中に飛び込ませるわけには行きませんから」
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