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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・再逅記 3

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    フォコの話、135話目。
    もう一度、因縁の海へ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     デザート片手に話を聞き終えたルピアは、フォークをくわえつつ、小さくうなった。
    「うはぁ……。そうか、エンターゲートの奴、そこまで滅茶苦茶していたのか」
    「ええ……」
    「にしても君、ジョーヌのトコにいたのか。あいつ、うるさかっただろ」
    「まあ、はい」
    「それにしちゃ最近、まったくうわさを聞かなくなったとは思ってたが……、そうか、死んでたのか」
     ルピアはフォークを置き、腕を組んで考えこむ様子を見せる。
    「……おかしいな」
    「何がです?」
    「何故、私はその話を聞いてないのかな、と。
     ジョーヌ海運って言や、一時は西方の急先鋒として、商人たちの話題によく上ってたトコだ。その総裁が亡くなったなんて、話に上らない方がおかしい。
     いや、ジョーヌ総裁が死んだところを見たのは君だけなんだし、公には行方不明だってことになってるだろう。だとしても、それはどこのうわさにも上ってないんだ。
     世界最大のギルドを持ってるウチにさえ、その情報が入って来ないってことは情報源、つまりジョーヌ海運側からその情報を遮断、公表してないってことになる。気になるな、それは」
    「確かに……。キルシュ卿も、経営縮小した話はご存じだったんですけど、行方不明になったとは言ってなかったですし。妙、ですよね」
    「ああ。……いや、公表できない理由は考えられる」
    「なんですか?」
     ルピアは店員に紅茶を頼みつつ、その理由を説明した。
    「君は直にジョーヌ総裁と会ってるから分かると思うが、彼にはカリスマ性があった。極端に言ってしまえば、彼のカリスマ性でジョーヌ海運の経営は成り立ってたんだ。
     そんな彼が、行方不明になったなんて知れ渡ったら……」
    「傾くでしょうね。……おやっさんも自分でそう言ってましたし」
    「とは言え、もう傾いてる。それでも頑なに言わないのは、……何故だろうな?」
     ルピアは運ばれてきた紅茶に口をつけ、考え込む仕草を見せる。
    「……ジョーヌ総裁の、南海での本拠、ドコって言ってたっけ」
    「ナラン島です。南海東部の小島ですね」
    「そうか」
     ルピアは一息に紅茶を飲み干し、続いてこう提案した。
    「行ってみるか」
    「へ?」
    「その、ナラン島さ。5年も経ってるから相当様変わりしてるだろうが、まだ造船所は残ってるだろう。行って、話を聞いてみよう」
    「……」
     フォコも紅茶に手を付けつつ、もう一度思案に暮れる。
    「……そうですね。行ってみようかな」
    「おう」
    「……ん?」
     と、ここでフォコは、ルピアの発言に気が付く。
    「行って、って、ルピアさんも来るんですか?」
    「まずいか?」
    「いや、まずいちゅうことはないですけど、いいんですか? ギルドの方……」
    「ああ、大丈夫さ。
     ……と言うか、まあ、あんまりうまいこと行ってないんだ。ゴールドマン商会との利権争いに負けてしまってな、実を言えばジリ貧なんだ」
    「えぇ? そんな時やのに、いいんですか?」
     ルピアは肩をすくめ、冗談混じりに笑い飛ばす。
    「だからこそ、かな、この提案は。商売相手を開拓するって狙いもある。
     そう言えば言いそびれてたが、こっちへ来たのもただ単に、再就職した息子の顔を見に来ただけじゃない。これも、同じ狙いだったんだ。
     商売の基礎・基本は人づきあいだ。極端な話で例えれば、この世に自分ひとりじゃいくらモノを作っても買ってもらえないし、大掛かりな計画も進められんからな。
     人の出会いは不可思議で、心躍るものだ――こうして別口の商人に会うことや、本拠地から離れたところに出向くことは、決してただの遊び、物見遊山じゃない。新しい発見、新しい商売の糸口につながることは、十分にあるさ。
     現にこうして、10年ぶりに君に会えたんだ。それだけでも私にとっては、大きな収穫になったよ」
    「はは……、ども」



    「ふむ、ふむ」
     フォコから南海に戻る旨を伝えられたキルシュ卿は、にっこりと笑ってそれに応じた。
    「構わんよ。君の自由にすればいい」
    「ありがとうございます」
    「と言うよりも、だ。ネール女史と同意見、と言った方が正しいだろうね。
     これから君は、どんどん頭角を現していくはずだ。北方大陸に収まる器ではない。急成長していくこの時期に、こんな山奥に留まっていては、宝の持ち腐れになってしまう。
     商人として成長期にある今のうちに、色んなコネクション、つながりを築いておくことは、君にとって決して、マイナスになることは無い。
     ましてや、これから会おうとしているのは、西方・南海で一時ながらも権勢を奮った大商会だ。いくら今は落ち目といえども、プラスにならないはずは無いだろう。
     キルシュ流通の大番頭の地位は保たせておくから、どんどん外へ向かって行きなさい」
    「……はい!」
     こうしてフォコは北方を離れ、ルピアと共に南海へ向かうこととなった。
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    NoTitle 

    超危険。
    4部が始まって、かなり早いうちに襲われますし。

    NoTitle 

    危なくないのかなv-404
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