「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・玉銀記 3
フォコの話、139話目。
ネール家の新しい顔。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「そう言えばルピアさん」
「うん?」
ある夜、船室の中でカードゲームに興じていた最中、フォコはふと気になっていたことを尋ねてみた。
「グリーンプールん時、子供さんできたって聞きましたけど」
「ああ、ラノマのことか?」
名前を聞いて、フォコは首をかしげた。
「ええ。……あの、ルピアさん?」
「なんだ?」
「なんでお子さんみんな、名前がRANから始まってるんです?」
「え? ……えーとだな」
困った顔をするルピアに、ランニャが助け舟を出した。
「お母さん、名前付けるのが下手なんだ。
お父さんがお兄ちゃん連れて来た時、もうランドって名前が付いてたからさ、あたしが生まれた時も、ラノマん時も、そのまんま付け加えて名前を付けてるんだよ。
もし今度、またあたしに妹が生まれたら、その時はあたしが名付け親になってやろうと思ってる」
「おいおい。いい名前だと思うがなぁ、ランドもランニャも、ラノマも。
つーか、もうこれ以上子供はいいよ」
ルピアはくしゃ、とランニャの髪を撫でながら、イタズラっぽくささやく。
「私ももう40半ばなんだぞ。子供より孫だろ、そろそろ」
「孫ぉ?」
ランニャはそう返し、チラ、とフォコを見て、肩をすくめた。
「まだ無理だって。10年くらい待たないと」
「そっか。ま、そんでも50半ばだ。まだ生きてるな」
「目付けてた相手にもう相手いるし、他探さないといけないからな」
「相手、てもしかして……」
フォコはそろそろと自分を指差したが、ランニャはころりと話題を変えてしまった。
「元気してるかな、ラノマ」
「ま、大丈夫だろ。ガルフがダメ人間になっても、ボーラはいい子だから」
「ボーラ?」
「ガルフくんの奥さん。あたしたちが旅してる間、ラノマを預けてるんだ」
「ちなみに見合わせたのは私だ」
そう言ってニヤリと笑っておいて、ルピアは話を続ける。
「ガルフのバカが博打に溺れて、家に帰って来なくなってしまってな。嫁に来た身で一人寂しく過ごしていたし、今回、丁度いいかなと思って預けることにしたんだ。
ま、旅は半年ちょっとくらいの予定だし、何とかなるだろう」
「カジノ、……ですか」
「それも潰すつもりかい?」
そうランニャに尋ねられ、フォコはうなずく。
「そら、そこもいずれは潰さなあかんでしょう」
「穏やかじゃないな」
「元から穏やかに事を運んでへんのは、相手の方です。ネール職人組合の縄張りにガンガン侵入して、職人みんなを骨抜きにしとるんですから。
そんなん、絶対放ったままにはしておけません」
「……おい、フォコ君」
熱っぽく語ったフォコに対し、ルピアは冷めた目で見つめてくる。
「勘違いしちゃ困る。これはネール職人組合の問題だ。君がいくらケネスと因縁があるからって、この件に関しちゃ筋違いだ。
それはいずれ、私がやるべきことだ。君は別のことをやってくれ」
「……はい」
しゅんとなったフォコを見て、ランニャが彼の肩を持つ。
「いいじゃない、母さん。手伝ってもらっても。そんな邪険にすることないじゃないか」
「そうは言うがな、彼に何でもかんでもさせるのは、私のプライドと老婆心が許さんよ」
「老婆心?」
「20そこらの若者が、巨悪と戦うなんて言う、重い運命を背負ってるんだ。こんな小悪党の件にまで一々付き合わせちゃ、早々に参ってしまうぞ」
「そう、……だね」
ルピアの言い分に納得し、ランニャは矛を収める。
「まずは、目先の問題だ。ジョーヌ海運がどうなったか、を確認しなきゃならん」
「ですね。何でもかんでもいっぺんに、なんて、無理ですもんね」
「そう言うことだ。まだまだ先は長い。無理はしないに越したことはない。
……ほれ、そろそろカードを選んでくれ」
「あ、はい」
止まったままだったゲームを進めながら、フォコはルピアの言った言葉を反芻する。
(巨悪と戦う、……か。『あいつ』と僕、今、どのくらい差が開いとるんやろな)
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「そう言えばルピアさん」
「うん?」
ある夜、船室の中でカードゲームに興じていた最中、フォコはふと気になっていたことを尋ねてみた。
「グリーンプールん時、子供さんできたって聞きましたけど」
「ああ、ラノマのことか?」
名前を聞いて、フォコは首をかしげた。
「ええ。……あの、ルピアさん?」
「なんだ?」
「なんでお子さんみんな、名前がRANから始まってるんです?」
「え? ……えーとだな」
困った顔をするルピアに、ランニャが助け舟を出した。
「お母さん、名前付けるのが下手なんだ。
お父さんがお兄ちゃん連れて来た時、もうランドって名前が付いてたからさ、あたしが生まれた時も、ラノマん時も、そのまんま付け加えて名前を付けてるんだよ。
もし今度、またあたしに妹が生まれたら、その時はあたしが名付け親になってやろうと思ってる」
「おいおい。いい名前だと思うがなぁ、ランドもランニャも、ラノマも。
つーか、もうこれ以上子供はいいよ」
ルピアはくしゃ、とランニャの髪を撫でながら、イタズラっぽくささやく。
「私ももう40半ばなんだぞ。子供より孫だろ、そろそろ」
「孫ぉ?」
ランニャはそう返し、チラ、とフォコを見て、肩をすくめた。
「まだ無理だって。10年くらい待たないと」
「そっか。ま、そんでも50半ばだ。まだ生きてるな」
「目付けてた相手にもう相手いるし、他探さないといけないからな」
「相手、てもしかして……」
フォコはそろそろと自分を指差したが、ランニャはころりと話題を変えてしまった。
「元気してるかな、ラノマ」
「ま、大丈夫だろ。ガルフがダメ人間になっても、ボーラはいい子だから」
「ボーラ?」
「ガルフくんの奥さん。あたしたちが旅してる間、ラノマを預けてるんだ」
「ちなみに見合わせたのは私だ」
そう言ってニヤリと笑っておいて、ルピアは話を続ける。
「ガルフのバカが博打に溺れて、家に帰って来なくなってしまってな。嫁に来た身で一人寂しく過ごしていたし、今回、丁度いいかなと思って預けることにしたんだ。
ま、旅は半年ちょっとくらいの予定だし、何とかなるだろう」
「カジノ、……ですか」
「それも潰すつもりかい?」
そうランニャに尋ねられ、フォコはうなずく。
「そら、そこもいずれは潰さなあかんでしょう」
「穏やかじゃないな」
「元から穏やかに事を運んでへんのは、相手の方です。ネール職人組合の縄張りにガンガン侵入して、職人みんなを骨抜きにしとるんですから。
そんなん、絶対放ったままにはしておけません」
「……おい、フォコ君」
熱っぽく語ったフォコに対し、ルピアは冷めた目で見つめてくる。
「勘違いしちゃ困る。これはネール職人組合の問題だ。君がいくらケネスと因縁があるからって、この件に関しちゃ筋違いだ。
それはいずれ、私がやるべきことだ。君は別のことをやってくれ」
「……はい」
しゅんとなったフォコを見て、ランニャが彼の肩を持つ。
「いいじゃない、母さん。手伝ってもらっても。そんな邪険にすることないじゃないか」
「そうは言うがな、彼に何でもかんでもさせるのは、私のプライドと老婆心が許さんよ」
「老婆心?」
「20そこらの若者が、巨悪と戦うなんて言う、重い運命を背負ってるんだ。こんな小悪党の件にまで一々付き合わせちゃ、早々に参ってしまうぞ」
「そう、……だね」
ルピアの言い分に納得し、ランニャは矛を収める。
「まずは、目先の問題だ。ジョーヌ海運がどうなったか、を確認しなきゃならん」
「ですね。何でもかんでもいっぺんに、なんて、無理ですもんね」
「そう言うことだ。まだまだ先は長い。無理はしないに越したことはない。
……ほれ、そろそろカードを選んでくれ」
「あ、はい」
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