「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・砂狼記 3
フォコの話、143話目。
女丈夫V.S.海賊船長。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
ルピアは――とても大商会主、40半ばの女とは思えないほど――喧嘩強かった。
「おい、そこのお前ら!」「なんだ?」「大人しくしろ!」「ふざけろ」「ふぎゃ」
拘束しようと船内をうろつく海賊を、一人ひとり、まるでモグラ叩きでもするように倒していく。
「いたぞ! 捕まえろ!」
やがて騒ぎを聞きつけたらしい、残りの海賊たちがやってくるが――。
「おいおい、なんだなんだ? 海賊やってるくらいだし、屈強な奴らかと思ったら……」
「ごふぅ!?」「ひーっ、ひーっ……」
ルピアのパンチを腹や顔面に食らい、次々に倒れていく。
「軟弱だなぁ。腹筋はふっにゃふにゃだし、鼻っ柱はすぐ折れるし」
結局ルピアは、フォコたちの助けを借りることなく、10人近い海賊を一人で叩きのめしてしまった。
「……おかしいな」
甲板で手下が船内の人間を引きずり出してくるのを待っていた海賊団の船長は、首をかしげていた。
「いくらなんでも遅すぎる。……念のため、現時点でかき集めた金品、今から運んじまおう」
「へい」
そう命じたところで――。
「ぎゃあっ……!」
船内へと続いている扉から、手下が悲鳴と共に、宙を舞って飛び出してきた。
「おっとっと。ちょっとお前らにゃ、蹴りが強すぎたか」
挑発的な含みのある声と共に、ルピアが破られた扉から顔を出す。
「な……!?」
甲板に叩きつけられ気絶した手下を見て、船長は言葉を失う。
「お前がこいつらの頭か? ……ふうん、少しはやりそうな肉付きだな」
ルピアは蹴っ飛ばした手下をまたいで、船長に近寄る。
「……お前、何のつもりだ?」
船長は曲刀を構え、ルピアと対峙する。
「俺たちを全滅させてレヴィア軍にでも引き渡すつもりか? 悪いが、そうはさせねーぞ」
「じゃあ、どうしたい? このまま金を置いて逃げるか? 私としては、それでも構わないが」
「……金は渡せない。俺たちにも生活がある」
二人は構えたまま、話を続ける。
「生活? 笑ってしまうな、生活と来たか」
「何だと……っ」
「いいか『狼』くん、生活(Life)と言うのは生きる活動だ。
こんなリスクばっかり高い、襲う相手を間違えりゃ即破綻するような死にかけスレスレの稼業で、何が『生きる(Life)』だ。
生活を口にするのなら、もっとましなことで稼げよ」
「う……、うるせえッ!」
ルピアの言葉に激昂した船長は、曲刀を振り上げてルピアに襲いかかった。
「……っ、と」
ルピアは初太刀をかわし、左膝を蹴り入れる。
「ぐ、……っ、効くかよぉ!」
「おお、っと」
ルピアの膝蹴りをまともに受けたはずの船長は、顔をしかめつつも曲刀を振り回す。
「フン」
ルピアはそれをすれすれで避け、もう一度蹴りを浴びせる。
「……っ、効かねえ、って、……言ってんだろうがああッ!」
船長は後ろにのけ反りつつも、同じように蹴りを放ってきた。
「あーあー、失着だな、『狼』くんよ」
が、ルピアはその足をつかみ、そのまま両手で上に振り上げた。
「……ッ!?」
のけ反ったところに揚げ足をさらに振り上げられ、当然、船長の体勢は崩れる。
ぐるんと半回転し、船長は頭からごつ、といかにも痛そうな音を立てて、甲板に叩きつけられた。
「……っ、……こ、……このっ」
船長は曲刀を杖にして立ち上がろうとするが――。
「……ぐ、ぐ、……ぐえ、ごぼぼぼっ」
がくりと膝を着き、胃の中のものを滝のように吐き出して、そのまま倒れ込んでしまった。
「頭を打った上に二度も腹を蹴られてりゃ、そりゃ、そうなるだろうさ。
……と、そうだ。フォコ君、ランニャ。もういいぞ」
ルピアは扉の裏側で成り行きを見守っていたフォコたちに声をかける。
「あ、はい」
フォコがそれに応じ、ランニャと共に甲板へ出てきた。
と――。
「あれ? ……あのー」
フォコが倒れたままの船長に近寄り、声をかける。
「間違ってたら、ホンマにすいません。……アミルさん?」
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女丈夫V.S.海賊船長。
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ルピアは――とても大商会主、40半ばの女とは思えないほど――喧嘩強かった。
「おい、そこのお前ら!」「なんだ?」「大人しくしろ!」「ふざけろ」「ふぎゃ」
拘束しようと船内をうろつく海賊を、一人ひとり、まるでモグラ叩きでもするように倒していく。
「いたぞ! 捕まえろ!」
やがて騒ぎを聞きつけたらしい、残りの海賊たちがやってくるが――。
「おいおい、なんだなんだ? 海賊やってるくらいだし、屈強な奴らかと思ったら……」
「ごふぅ!?」「ひーっ、ひーっ……」
ルピアのパンチを腹や顔面に食らい、次々に倒れていく。
「軟弱だなぁ。腹筋はふっにゃふにゃだし、鼻っ柱はすぐ折れるし」
結局ルピアは、フォコたちの助けを借りることなく、10人近い海賊を一人で叩きのめしてしまった。
「……おかしいな」
甲板で手下が船内の人間を引きずり出してくるのを待っていた海賊団の船長は、首をかしげていた。
「いくらなんでも遅すぎる。……念のため、現時点でかき集めた金品、今から運んじまおう」
「へい」
そう命じたところで――。
「ぎゃあっ……!」
船内へと続いている扉から、手下が悲鳴と共に、宙を舞って飛び出してきた。
「おっとっと。ちょっとお前らにゃ、蹴りが強すぎたか」
挑発的な含みのある声と共に、ルピアが破られた扉から顔を出す。
「な……!?」
甲板に叩きつけられ気絶した手下を見て、船長は言葉を失う。
「お前がこいつらの頭か? ……ふうん、少しはやりそうな肉付きだな」
ルピアは蹴っ飛ばした手下をまたいで、船長に近寄る。
「……お前、何のつもりだ?」
船長は曲刀を構え、ルピアと対峙する。
「俺たちを全滅させてレヴィア軍にでも引き渡すつもりか? 悪いが、そうはさせねーぞ」
「じゃあ、どうしたい? このまま金を置いて逃げるか? 私としては、それでも構わないが」
「……金は渡せない。俺たちにも生活がある」
二人は構えたまま、話を続ける。
「生活? 笑ってしまうな、生活と来たか」
「何だと……っ」
「いいか『狼』くん、生活(Life)と言うのは生きる活動だ。
こんなリスクばっかり高い、襲う相手を間違えりゃ即破綻するような死にかけスレスレの稼業で、何が『生きる(Life)』だ。
生活を口にするのなら、もっとましなことで稼げよ」
「う……、うるせえッ!」
ルピアの言葉に激昂した船長は、曲刀を振り上げてルピアに襲いかかった。
「……っ、と」
ルピアは初太刀をかわし、左膝を蹴り入れる。
「ぐ、……っ、効くかよぉ!」
「おお、っと」
ルピアの膝蹴りをまともに受けたはずの船長は、顔をしかめつつも曲刀を振り回す。
「フン」
ルピアはそれをすれすれで避け、もう一度蹴りを浴びせる。
「……っ、効かねえ、って、……言ってんだろうがああッ!」
船長は後ろにのけ反りつつも、同じように蹴りを放ってきた。
「あーあー、失着だな、『狼』くんよ」
が、ルピアはその足をつかみ、そのまま両手で上に振り上げた。
「……ッ!?」
のけ反ったところに揚げ足をさらに振り上げられ、当然、船長の体勢は崩れる。
ぐるんと半回転し、船長は頭からごつ、といかにも痛そうな音を立てて、甲板に叩きつけられた。
「……っ、……こ、……このっ」
船長は曲刀を杖にして立ち上がろうとするが――。
「……ぐ、ぐ、……ぐえ、ごぼぼぼっ」
がくりと膝を着き、胃の中のものを滝のように吐き出して、そのまま倒れ込んでしまった。
「頭を打った上に二度も腹を蹴られてりゃ、そりゃ、そうなるだろうさ。
……と、そうだ。フォコ君、ランニャ。もういいぞ」
ルピアは扉の裏側で成り行きを見守っていたフォコたちに声をかける。
「あ、はい」
フォコがそれに応じ、ランニャと共に甲板へ出てきた。
と――。
「あれ? ……あのー」
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