「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・再築記 1
フォコの話、148話目。
海賊団更生計画。
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1.
「お前に……、付いていく?」
涙ぐむアミルの問いに、フォコは小さくうなずいた。
「ええ。ただ、3つほど困難なことはあります。でも、付いてきてくれれば絶対に、今よりいい暮らしはできるはずです」
「今より、か。……そりゃそうだろうよ、今がどん底なんだから」
そう返したアミルに、フォコはにっこり笑って見せた。
「その通りです。どうします?」
「……」
と、二人の様子を見ていたムニラが、ルピアの懐から抜け出てフォコの尻尾をつかむ。
「ひゃっ?」
「いじめないで」
「ああ、うん。いじめてへんよ」
「おとうさん、ないてる」
「あー、……ゴメンな」
二人の会話を耳にしたアミルは、慌てて涙を拭いた。
「泣いてないよ、ムニラ。大丈夫だから、お父さんは」
「ほんと?」
「本当だ。……ホコウ、3つって、なんだ?」
憑き物が落ちたようにすっきりとした顔になったアミルにそう問われ、フォコは答える。
「まず、1つ目ですけども。しばらく無収入になります」
「マジか」
「表現を具体的に変えれば、海賊行為は絶対にやめてほしい、ちゅうことです。とにかく、『砂狼』の印象の悪さをごまかさへんと、何にもできませんし」
「印象を、ごまかす? なんで?」
「とにかく、稼ぎ方を変えるんです。そうせな、どうしようもない。それは、重々承知してはりますよね?」
「ああ、分かってる」
「僕のコネで、とりあえず1000万クラムくらい用意します。それを開業資金にして、ともかく店を立ち上げましょう。
で、半年くらいを開店準備に使て、店と商品を整えます。ここまでが、無収入の時期になります」
「半年か……」
アミルはチラ、と身重のマナを見る。
「ああ、とりあえずは、手の空いてる人を開店準備に使っていきます。
マナさんとか、小さい子供さんのいてはる家は、家のことに専念してもらうつもりです。別のことをしながら。
その間の生活費は、さっき言うた1000万から出しましょう。もっとも、かなり倹約してもらわなあきませんけどね」
「別のことって?」
「それが2つ目なんですけども、商品の製造ですね。かなりの量、造ってもらうことになると思います」
「どれくらいだ?」
「そうですね……、一つの大きい島の、アバントの商業網に対抗できるくらいの量を」
それを聞いて、アミルは眉をひそめた。
「大きい島って、……例えば、サラム島とかか?」
「そうですね、とりあえずそれでプラン立てていきましょうか」
「いきなり無茶だろ、そんなの。人口4万の、かなり大きな島だぞ。もっと小さいところから始めた方が……」
「それでやってもええですけど、無収入の期間がドッと伸びますよ。大きいとこの方が、お客さんも多いですから」
「なるほど、そう言う見方もあるか」
話すうちに、アミルの目は死にかけの海賊から、理知的に物事を考える聡明なものへと、色を変える。
「それにサラム島やったら中立主義ですし、スパス産業以外の、新規の店も入りやすい。他の島や地域からのお客さんも多いですし、店を構えるのんにはええ条件が揃ってます。
アミルさん、ええとこに目ぇ付けはりますね」
「そ、そっか?」
素直にほめられ、アミルは顔をほころばせる。
「世界の大きな商家や商会のことにも詳しいですし、大局観もある。アミルさん、商人に向いてはりますよ」
「そっか? へへ、そうかなぁ。……あ、と。それでホコウ、3つ目はなんだ?」
「サラム島で店を構えてからになりますけども。今まで海賊として働いてたみんなに、今度は店員、丁稚としての教育をしていかなあきません。
場合によってはこれ、倹約生活や大量製造よりもきついかも知れません。人を育てる、っちゅうことですからな」
「任せろ」
アミルはこの要求に、笑って応えた。
「これでも船長、一つの組織のリーダーやってんだ。まとめ直してみせるさ」
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海賊団更生計画。
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1.
「お前に……、付いていく?」
涙ぐむアミルの問いに、フォコは小さくうなずいた。
「ええ。ただ、3つほど困難なことはあります。でも、付いてきてくれれば絶対に、今よりいい暮らしはできるはずです」
「今より、か。……そりゃそうだろうよ、今がどん底なんだから」
そう返したアミルに、フォコはにっこり笑って見せた。
「その通りです。どうします?」
「……」
と、二人の様子を見ていたムニラが、ルピアの懐から抜け出てフォコの尻尾をつかむ。
「ひゃっ?」
「いじめないで」
「ああ、うん。いじめてへんよ」
「おとうさん、ないてる」
「あー、……ゴメンな」
二人の会話を耳にしたアミルは、慌てて涙を拭いた。
「泣いてないよ、ムニラ。大丈夫だから、お父さんは」
「ほんと?」
「本当だ。……ホコウ、3つって、なんだ?」
憑き物が落ちたようにすっきりとした顔になったアミルにそう問われ、フォコは答える。
「まず、1つ目ですけども。しばらく無収入になります」
「マジか」
「表現を具体的に変えれば、海賊行為は絶対にやめてほしい、ちゅうことです。とにかく、『砂狼』の印象の悪さをごまかさへんと、何にもできませんし」
「印象を、ごまかす? なんで?」
「とにかく、稼ぎ方を変えるんです。そうせな、どうしようもない。それは、重々承知してはりますよね?」
「ああ、分かってる」
「僕のコネで、とりあえず1000万クラムくらい用意します。それを開業資金にして、ともかく店を立ち上げましょう。
で、半年くらいを開店準備に使て、店と商品を整えます。ここまでが、無収入の時期になります」
「半年か……」
アミルはチラ、と身重のマナを見る。
「ああ、とりあえずは、手の空いてる人を開店準備に使っていきます。
マナさんとか、小さい子供さんのいてはる家は、家のことに専念してもらうつもりです。別のことをしながら。
その間の生活費は、さっき言うた1000万から出しましょう。もっとも、かなり倹約してもらわなあきませんけどね」
「別のことって?」
「それが2つ目なんですけども、商品の製造ですね。かなりの量、造ってもらうことになると思います」
「どれくらいだ?」
「そうですね……、一つの大きい島の、アバントの商業網に対抗できるくらいの量を」
それを聞いて、アミルは眉をひそめた。
「大きい島って、……例えば、サラム島とかか?」
「そうですね、とりあえずそれでプラン立てていきましょうか」
「いきなり無茶だろ、そんなの。人口4万の、かなり大きな島だぞ。もっと小さいところから始めた方が……」
「それでやってもええですけど、無収入の期間がドッと伸びますよ。大きいとこの方が、お客さんも多いですから」
「なるほど、そう言う見方もあるか」
話すうちに、アミルの目は死にかけの海賊から、理知的に物事を考える聡明なものへと、色を変える。
「それにサラム島やったら中立主義ですし、スパス産業以外の、新規の店も入りやすい。他の島や地域からのお客さんも多いですし、店を構えるのんにはええ条件が揃ってます。
アミルさん、ええとこに目ぇ付けはりますね」
「そ、そっか?」
素直にほめられ、アミルは顔をほころばせる。
「世界の大きな商家や商会のことにも詳しいですし、大局観もある。アミルさん、商人に向いてはりますよ」
「そっか? へへ、そうかなぁ。……あ、と。それでホコウ、3つ目はなんだ?」
「サラム島で店を構えてからになりますけども。今まで海賊として働いてたみんなに、今度は店員、丁稚としての教育をしていかなあきません。
場合によってはこれ、倹約生活や大量製造よりもきついかも知れません。人を育てる、っちゅうことですからな」
「任せろ」
アミルはこの要求に、笑って応えた。
「これでも船長、一つの組織のリーダーやってんだ。まとめ直してみせるさ」
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