「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・再築記 2
フォコの話、149話目。
蘇る緑。
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2.
自他共に認めた通り、アミルには確かに商会主、リーダーとしての資質があった。
フォコたちが一旦南海から央中・北方に戻り、3か月後、資金を調達して戻ってきた時には、ハイミン島の雰囲気は一変していた。
「何ちゅうか、……さわやかになりましたね、空気」
「そっか? ……いや、まあ。とりあえずは早寝早起きから、と思ってな。今まで自由に寝起きしてたのを、きっちりさせたんだ。
後、島の中で自活できるようにって、魚釣りしたり野菜育てたりしてた。それが原因かな」
「正直、ここまで整うと思ってませんでした。こっちもいい意味で、予想外のことが起きましたね」
「こっちも?」
そう尋ねたアミルに、フォコはまたも一緒に付いてきたランニャに目配せし、木箱を持って来させた。
「僕のいるキルシュ流通からの出資に合わせて、ルピアさんもお金出してくれはりまして、合計1500万クラムになりました。ただ、どっちも条件付きなんですけどね」
「条件? 利子か?」
「ええ。1年複利で、キルシュ流通の方は1000万を12%、ネール職人組合の方は500万を18%、どっちも3年後に返済っちゅう条件です。3年後には2200万ちょいになりますね」
「700万上乗せ、ってことか。……返せるかなぁ」
「返せますよ。ちゃんと経営が軌道に乗れば」
「軌道に、かぁ。……で、ホコウ。よくよく考えてみたんだけどさ」
アミルは心配そうに、フォコにこう尋ねた。
「俺たち、何を売るんだ?」
「それについて一つ、南海のある事情を調べてきまして」
フォコは懐から、南海の地図を取り出した。
「僕が初めて『砂嵐』の仕事をした時の話ですが、レヴィア軍がカトン島ってところを基地にしようとしてたことがありましたよね?」
「ああ、そんなこともあったな。折角の綿花が、ズタズタにされちまって……」
「それなんですけど、今、カトン島って人がいないみたいなんですよ。レヴィア軍すら」
「え?」
思いもよらない事実に、アミルは目を丸くする。
「ほら、レヴィア女王ってケネス……、エンターゲート氏の傘下にいる、ってうわさでしょ?」
「ああ、聞いたことがあるな。何でも結婚して、子供も2、3人いるとか」
「ええ。ほんで、その際に軍備再編成ってのんがありまして、エンターゲート氏が色々口を出したんですよ。
例えば、特に守る必要もないところは撤退させて、他の、もっと重要な拠点に軍備を固めたり、とか」
「その一つが、カトン島だって言うのか?
でもあそこ、おやっさんが『周りの国の中間地点になってて、好戦的なヤツにとっちゃ、いち早く抑えて領土拡大の足かけにしたいトコ』って言って、……あ、そうか」
「そうなんですわ。もう領土を拡大した後なもんで、今となってはいらん土地なんです。
で、自分らが島の生産品を使えへんようにしてるわけですし、持ってても無駄なとこ、ちゅうことで……」
「基地を廃棄し、撤退したってわけか。……でもさ、そう言うことだとそこ、荒地なんじゃないか?」
その問いに、フォコはにっこり笑って答える。
「自然をなめたらあきませんよ」
「ひょお~……っ」
カトン島に降り立ったアミルは、ほれぼれとしたため息を漏らした。
「ね? 廃棄されてからもう3年くらい経ってて、その間に綿花が、自力でここまで繁殖したんですよ」
カトン島には綿花が生い茂り、かつての牧歌的な雰囲気を取り戻していた。
「これなら、ちょっと手入れすれば、いい綿花の産地になりそうだな」
「しかもですよ、こう言う島はここだけや無いんですよ。他にも、領土を拡大し終えて、軍が撤退し、管理も何もされてへん島がゴロゴロしとるんです。そしてその中には、ここみたいに自然の資源を復活させたとこも、少なくないでしょう」
フォコはそこで、彼には珍しい悪辣な笑みを浮かべた。
「ケネスも大概、前しか見いひんアホやで――自分たちが踏み荒らした後に宝物が残っとるなんて、思いも寄らへんかったらしいわ」
フォコとアミルはこのような、資源・原料の復活した島を周り、密かに自分たちの所有物にしていった。
そして一揃い原料を集め、それを元に商品の製造を始め、いよいよ開業の準備は整った。
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自他共に認めた通り、アミルには確かに商会主、リーダーとしての資質があった。
フォコたちが一旦南海から央中・北方に戻り、3か月後、資金を調達して戻ってきた時には、ハイミン島の雰囲気は一変していた。
「何ちゅうか、……さわやかになりましたね、空気」
「そっか? ……いや、まあ。とりあえずは早寝早起きから、と思ってな。今まで自由に寝起きしてたのを、きっちりさせたんだ。
後、島の中で自活できるようにって、魚釣りしたり野菜育てたりしてた。それが原因かな」
「正直、ここまで整うと思ってませんでした。こっちもいい意味で、予想外のことが起きましたね」
「こっちも?」
そう尋ねたアミルに、フォコはまたも一緒に付いてきたランニャに目配せし、木箱を持って来させた。
「僕のいるキルシュ流通からの出資に合わせて、ルピアさんもお金出してくれはりまして、合計1500万クラムになりました。ただ、どっちも条件付きなんですけどね」
「条件? 利子か?」
「ええ。1年複利で、キルシュ流通の方は1000万を12%、ネール職人組合の方は500万を18%、どっちも3年後に返済っちゅう条件です。3年後には2200万ちょいになりますね」
「700万上乗せ、ってことか。……返せるかなぁ」
「返せますよ。ちゃんと経営が軌道に乗れば」
「軌道に、かぁ。……で、ホコウ。よくよく考えてみたんだけどさ」
アミルは心配そうに、フォコにこう尋ねた。
「俺たち、何を売るんだ?」
「それについて一つ、南海のある事情を調べてきまして」
フォコは懐から、南海の地図を取り出した。
「僕が初めて『砂嵐』の仕事をした時の話ですが、レヴィア軍がカトン島ってところを基地にしようとしてたことがありましたよね?」
「ああ、そんなこともあったな。折角の綿花が、ズタズタにされちまって……」
「それなんですけど、今、カトン島って人がいないみたいなんですよ。レヴィア軍すら」
「え?」
思いもよらない事実に、アミルは目を丸くする。
「ほら、レヴィア女王ってケネス……、エンターゲート氏の傘下にいる、ってうわさでしょ?」
「ああ、聞いたことがあるな。何でも結婚して、子供も2、3人いるとか」
「ええ。ほんで、その際に軍備再編成ってのんがありまして、エンターゲート氏が色々口を出したんですよ。
例えば、特に守る必要もないところは撤退させて、他の、もっと重要な拠点に軍備を固めたり、とか」
「その一つが、カトン島だって言うのか?
でもあそこ、おやっさんが『周りの国の中間地点になってて、好戦的なヤツにとっちゃ、いち早く抑えて領土拡大の足かけにしたいトコ』って言って、……あ、そうか」
「そうなんですわ。もう領土を拡大した後なもんで、今となってはいらん土地なんです。
で、自分らが島の生産品を使えへんようにしてるわけですし、持ってても無駄なとこ、ちゅうことで……」
「基地を廃棄し、撤退したってわけか。……でもさ、そう言うことだとそこ、荒地なんじゃないか?」
その問いに、フォコはにっこり笑って答える。
「自然をなめたらあきませんよ」
「ひょお~……っ」
カトン島に降り立ったアミルは、ほれぼれとしたため息を漏らした。
「ね? 廃棄されてからもう3年くらい経ってて、その間に綿花が、自力でここまで繁殖したんですよ」
カトン島には綿花が生い茂り、かつての牧歌的な雰囲気を取り戻していた。
「これなら、ちょっと手入れすれば、いい綿花の産地になりそうだな」
「しかもですよ、こう言う島はここだけや無いんですよ。他にも、領土を拡大し終えて、軍が撤退し、管理も何もされてへん島がゴロゴロしとるんです。そしてその中には、ここみたいに自然の資源を復活させたとこも、少なくないでしょう」
フォコはそこで、彼には珍しい悪辣な笑みを浮かべた。
「ケネスも大概、前しか見いひんアホやで――自分たちが踏み荒らした後に宝物が残っとるなんて、思いも寄らへんかったらしいわ」
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そして一揃い原料を集め、それを元に商品の製造を始め、いよいよ開業の準備は整った。
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