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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・連衡記 1

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    フォコの話、158話目。
    次の局面。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     ロクシルム商業連合がレヴィア軍を各地で撃退したことで、南海の事情は一変した。

     6年に渡る支配を受けた地域からは、反発の動きが次々に出始めていた。
     また、レヴィア王国の支配を受けないまでも、スパス産業によって市場から締め出しを受けた商店・商会も、こぞってロクシルムに加入しよう、あるいは協力しようと言う動きがあちこちに現れた。
     ケネスの腹心、アバントとアイシャは、完全に掌握しつつあったはずの南海で起こり始めた反乱に対し、どうすればいいのかと狼狽していた。



    「まったく、お前たちときたら……!」
     両者からの報告を受けたケネスは急遽、二人をレヴィア王国のはずれに呼び、協議を行うことにした。
    「揃いも揃って、短期的な見方しかできん阿呆どもめ!
     お前たちは一度整備すれば、二度と雑草が生えん庭があるとでも思っているのか!」
    「言葉もありません……」
     うなだれるアバントに対し、アイシャは喰ってかかる。
    「し、しかし旦那様。彼奴らが富を蓄えた要因の一つは、旦那様の申し付けた、支配地域の一部廃棄によるものですぞ。
     旦那様にも、落ち度は……」「落ち度?」
     アイシャの言葉に、ケネスはぐい、とアイシャの顎をつかむ。
    「あがっ……」
    「落ち度だと? お前の統治能力の欠如による失態を、私に押し付けるのか?
     これくらい気を利かせるだろうと思って言わないで置いたが、アイ。軍を引き払ったその後に何故レヴィア王立商工会、お前の持つ商工ギルドをその島に置かなかった?
     置いておけば、いずれ復活するであろう資源・原料はそっくりそのまま、お前の懐に入ったものを」
    「あ……」
    「そうしておけば、今回のようなことはそもそも起こらなかったのだ。……まったくお前は短絡的、一元的で、大局観の欠片も無い、がらんどうの頭だな。
     これほどお前が使えない奴とは思わなかった。私の見立てを、さらに上回るひどさだ!」
    「ぐ、ぬっ……」
     罵倒され、アイシャは目に涙を浮かべて悔しがる。
     その目を見て、ケネスはようやく彼女の顔から手を放した。
    「まあ、いい。私が何とかしてやろう。
     ロックス氏も、そのシルムとか言うはぐれ者も、到底私に敵う器ではない。せいぜい、その足りない頭、足りない人員、足りない財力で、唯一膨れ上がった自分たちの慢心を満たせばいい。
     どうせ奴らのこと――自分の力量も把握できず、手を方々に伸ばしきって、その挙句に統治に失敗して自滅する。そこを私は、救済してやればいい。
     それで勝手に、この騒ぎは鎮まる。いいかアイ、その兆候を見せたら、すぐに私へ連絡しろ」
    「は、はい……」



    「そろそろ飽和状態に来ますな」
     ロクシルム商業連合の本拠をダマスク島に移したところで、フォコは次の策を打ち出した。
    「飽和?」
    「こないだの諸地域防衛以降、僕らに賛同してくれるところは一気に増えました。
     商会7つ、商店39、工房56、さらには国や島を挙げて協力してくれるところもあって、今のところ僕たちのやって来たことは、最高の状態で実を結んでいると言ってええでしょう。
     でも現状、これ以上無理に手を伸ばすと、裏目に出てくるかも分かりません」
    「と言うと?」
     結論が見えず、ファンとアミルが同時に尋ねる。
    「アバントのアホと同じ状況に陥りかねへん、ちゅうことですわ。
     あのアホ、自分の管理・監視の目がほとんど届かへん南海に、これでもかこれでもかと店を構え過ぎてましたよね。
     その結果、確かに一時期は儲かってましたけども、あちこちで起こる小規模の問題――新たな需要や苦情の発生、コストの増加、その他色々、事業を拡大していく上で起こる様々なトラブルに対応でけへん、でけたとしても非常に時間がかかるようになってしまってました。
     自分の支配圏を伸ばし過ぎると、その支配圏の端の処理に、どんどん時間がかかるようになります。それがアバントの自滅した理由であり、僕らがそろそろ考えなあかん問題でもあるんですわ」
    「なるほど……」
    「その点、おやっさんは超人的だったんだな……。西方と南海とを、しきりに行き来してたもんな」
     アミルがしみじみとクリオのことを思い出したところで、フォコはニヤッと笑う。
    「ええ。で、僕らもおやっさんにならって、あるところの助けを借りようか思てるんです」
    「あるところ?」
     フォコは地図上の、南海で最も大きな島を指し、こう結論付けた。
    「ベール王国です。今は島の半分近くを占領されてしもてますが、まだ力も、威厳も残ってるはずです。彼らなら、統治能力は十分。拡大が続き、肥大・飽和しつつある僕らの組織を、十分に補助・支援してくれるでしょう。
     彼らと協力して、南海の東側は僕らロクシルム、西側はベール王国で、それぞれレヴィア王国との戦いに備えるようにしようかと。いわゆる、挟み撃ちです。レヴィア王国も度重なる侵略の結果、漏れなく飽和状態に来とるので、相当な効果を上げるはずです。
     経済からスパスを、政治からレヴィアを攻め立てて、一気に僕たちの勝利をつかみましょう」
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