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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第4部

    火紅狐・連衡記 4

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    フォコの話、161話目。
    フォコの真意。

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    4.
     ごねたフォコに渋々応じ、メフルたちはベール王族の屋敷へと、彼らを案内した。
    「これで満足か、『狐』殿」
    「はい。……大変失礼いたしました。重ねて申し上げますが、我々の周りには、非常に敵が多いもので」
    「……ああ、なるほど」
     ここでマフスが、フォコの思惑に気が付く。
    「どこに間諜、スパイがいるか分かりませんものね」
    「そう言うことです。我々がしようとしとる話は、そうそう敵の耳に入れたくない類のものですからな。
     お屋敷の中でしたら、そんなけったいな人も居てませんでしょうし」
    「なるほど、そうだったか。……考えが至らず、大変失礼した」
     メフルはそう言って、小さく頭を下げた。
    「いえ、こちらこそすみません。回りくどいことをしてしもて。
     ……で、そもそもの我々の話としましては、ベールさんとこと我々で、政治面における提携、言い換えれば南海を正しく統治するための、適切なパートナーとして協力し合おうか、っちゅうことやったんですけども、……率直に尋ねますが、可能ですか?」
    「可能、……とは正直に言って、言い難い」
    「ふむ。その理由はなんでしょう?」
    「……ちょっと待ってくれないか、ホコウとやら」
     メフルはフォコの横に座ったままのアミルにチラ、と目を向け、もう一度フォコに顔を向ける。
    「何故君が話を? シルム代表が、この話を持ってきたのでは?」
    「シルムはあくまで、ロクシルム商業連合のツートップの一人です。
     僕は彼とツートップのもう一人であるロックス、この二人を引き合わせ、南海における新たな商工業網の構築をしていました。
     言わば彼ら二人は、僕の部下と言っていい。いわゆる頭、総司令官は僕なんです」
    「つまり……、ロクシルムはあくまで、あなたの戦いの手段である、と。ロクシルムを操り、これまでの戦いの道具にしてきた、と。そう言うことでしょうか」
    「有り体に言えば、そうです」
     フォコの回答に、メフル兄妹は顔をしかめた。
    「そして、……君の戦いに、我々も巻き込もうと、そう言うことなのか?」
    「巻き込む?」
     フォコもまた、メフルたちをにらみ付けた。
    「あなた方は、このままでいいと? このまま、レヴィアの侵略とスパスの横行に身を任せていい、と言うんですか?
     それならもう、話は無用です。僕たちは別のところへ話をしに行くだけです」
    「詭弁に過ぎる。何のかんのと述べながら、結局は君の私利私欲のために、我々を使おうと言うのではないか」
     メフルの言葉に、アミルが噛みついた。
    「それは違います、殿下。ホコウはあくまでも俺……、私たちのために動いてきたのです。
     落ちぶれていた私と仲間を更生させ、自由な商業を封じられてきた南海の皆のために大商会を組織し、スパス系の追い出しに成功しつつある。
     その上で、彼は金も地位も、我々に要求はしていない。ただ、我々南海の民の幸せのために動いている。私利私欲なんて、とんでもない的外れです」
    「ほう……」
    「そして今、ホコウがあなた方に頼んでいることもまた、南海のためです。彼一人の利益のためであれば、例えば自分が王を名乗ってしまえばいい。そうでしょう?」
    「それはあまりにも飛躍した、現実離れの理屈です。……けれど」
     マフスは顔を真っ赤にしてフォコを擁護したアミルを見て、深くうなずいた。
    「確かに、言う通りではあります。今この時に至るまで、わたしたちはシルム代表の名前は存じていても、ホコウさんの名前は存じませんでした。
     あなたはあくまでも、シルム代表を支える立場にいるのですね」
    「その通りです。僕は南海で名を馳せるつもりは毛頭ありません。
     あくまでこの『砂と海の世界』で活躍し、富と栄誉を得るのは、ロクシルムとベール、この2つであると、確約します」
    「……では君は、一体何のために、こんなことをするのだ?」
     メフルは疑い深そうな目をフォコに向けて尋ねる。
    「金もいらない、地位もいらない。では何を欲している? ただの英雄願望だけで、動いているわけでもあるまい?
     それとも何か他の狙いが? 例えばここで恩を売って関係を築き、いずれ籠絡しようとしているのではないのか?」
    「まったく違います」
     フォコはきっぱりと否定し、自分の意見を論じた。
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