「双月千年世界 2;火紅狐」
火紅狐 第4部
火紅狐・戦宣記 1
フォコの話、165話目。
戦争宣伝戦略。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
再び立ち上がったかつての大国、ベールと、隆盛の極みにあるならず者国家、レヴィアとの全面対決が南海に広く伝えられ、各地ではこのようなうわさが流れていた。
「ベール王国が5年の歳月を経て今再び立ち上がったのは、何か勝算があるのか?」
「何でもロクシルムと手を組んだとか。しかし……」
「確かに今、乗りに乗っている大商会だし、私設軍隊も有しているとは聞く。
だがそれが、軍事大国となったレヴィアに、確実に勝てる理由とはならない」
「ええ。ましてや、レヴィアにも西方からの大商会、スパス系が付いていると言いますし……」
「条件で見れば互角と言えなくもないが、何しろレヴィアには、正体不明の恐るべき兵器があると言うからな。
それをどうにかできなければ、ベールが返り討ちに遭うのは目に見えている」
ベールの分が悪い、との評判を受けても、フォコは特に対処する姿勢を見せなかった。
と言うよりもフォコは開戦当初、ほとんど動く姿勢を見せなかったのだ。
「ホコウ君、ハリス海域にレヴィア軍が集まっているそうだ。相手の主力艦はまだ到着していないし、今から行動すれば間に合うかも知れん」
メフルの持ってきた情報に対し、フォコは片方の狐耳と尻尾をぱた、と動かすだけに留める。
「はあ、そうでっか。……まあ、小型の戦艦3隻で適当に動いといてください」
「て、適当?」
メフルは面食らい、続いてフォコの態度をたしなめようとする。
「ホコウ君、どう言うつもりだ? いくらなんでも『適当に』はないだろう、『適当に』は」
「ああ、いえいえ。何も考えなしに特攻せえ、言うてるわけちゃいますよ」
「ならば、真面目に指示を……」「ホコウさん、いいですか?」
と、そこへマフスが同じように、敵の情報を持ってきた。
「カフール海域に、レヴィア軍の軍艦が集まりつつあるそうです。近くを巡回した者によれば、遅くても一週間以内には、守りを固めるだろうとのことです」
「ふむ」
これを聞いたフォコは、今度は真面目に返答した。
「せやったら、こちらの主力艦の……、そうですな、『マリアム』でしたっけ、それと護衛艦4、5隻付けて、……でー、詳しい突入経路ですけども」「ホコウ君!」「は、はい?」
自分と妹との対応の違いに苛立ったメフルが、フォコを怒鳴りつけた。
「なんだ、その態度は!? 私の報告には尻尾をぱたつかせてあしらい、妹の報告には真摯に受け答えするとは! そんなに女の機嫌が取りたいか!」
「ちゃいますて、そう言うつもりや……」「では聞かせてもらうぞ、どう言うつもりだ!?」
いきり立つメフルに、フォコはポリポリと頭をかきながら説明した。
「まあ、そのですな。前にも言いましたけども、僕はロクシルム―ベールの10万人で、レヴィアに対抗するつもりはないんですわ」
「ああ、確かに聞いた。しかしだ、それとこの件と、何の関係があると言うのだ?」
「落ち着いて、お兄様」
目を吊り上らせて詰問するメフルを見かねて、マフスが仲立ちする。
「ホコウさん、わたしにもその二つの関連性が良く分かりません。詳しい説明をお願いします」
「ええ、はい。
まあ、この説明をした時に、『南海の皆が拠り所にできる正義を示せば、皆それに付いてきてくれる、いずれは南海200万の人間が、レヴィア打倒に立ち上がるだろう』と言いましたけども、まだまだその気運、風潮ができるには遠いわけです。
ではどうやってその風潮を作っていけばいいか、っちゅうと、どうしたらええと思います、お二人さん?」
「ふ、む」「ええ、と」
フォコに問い返された二人は、耳打ちし合って答えを検討する。
「皆に付いてきてもらうには、やはり、我々が人民を導くに足る存在だと知らしめねばならない、……よな?」
「でしょうね。でも、ただ『我々が正義だ、皆付いてこい』と怒鳴るばかりでは、なんだか権力を笠に着た小悪党みたいですし」
「証明がいる、と言うことか。であれば、……まあ、此度の戦いで、我々がレヴィアを打倒する存在であると見せつけるのが、手っ取り早いか」
「大体そんな感じですな」
二人のささやきを聞いていたフォコが、そこでうなずく。
「もっと整理して言えば、『僕たちが勝ってるところを皆に見てもらう』っちゅうことになりますわ。
で、さっきお二人から報告してもろた戦地ですけどもな」
フォコは近辺の海図を開き、二人に見せた。
「どっちの海域が、人、多いですやろ?」
「……あ」「なるほど」
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再び立ち上がったかつての大国、ベールと、隆盛の極みにあるならず者国家、レヴィアとの全面対決が南海に広く伝えられ、各地ではこのようなうわさが流れていた。
「ベール王国が5年の歳月を経て今再び立ち上がったのは、何か勝算があるのか?」
「何でもロクシルムと手を組んだとか。しかし……」
「確かに今、乗りに乗っている大商会だし、私設軍隊も有しているとは聞く。
だがそれが、軍事大国となったレヴィアに、確実に勝てる理由とはならない」
「ええ。ましてや、レヴィアにも西方からの大商会、スパス系が付いていると言いますし……」
「条件で見れば互角と言えなくもないが、何しろレヴィアには、正体不明の恐るべき兵器があると言うからな。
それをどうにかできなければ、ベールが返り討ちに遭うのは目に見えている」
ベールの分が悪い、との評判を受けても、フォコは特に対処する姿勢を見せなかった。
と言うよりもフォコは開戦当初、ほとんど動く姿勢を見せなかったのだ。
「ホコウ君、ハリス海域にレヴィア軍が集まっているそうだ。相手の主力艦はまだ到着していないし、今から行動すれば間に合うかも知れん」
メフルの持ってきた情報に対し、フォコは片方の狐耳と尻尾をぱた、と動かすだけに留める。
「はあ、そうでっか。……まあ、小型の戦艦3隻で適当に動いといてください」
「て、適当?」
メフルは面食らい、続いてフォコの態度をたしなめようとする。
「ホコウ君、どう言うつもりだ? いくらなんでも『適当に』はないだろう、『適当に』は」
「ああ、いえいえ。何も考えなしに特攻せえ、言うてるわけちゃいますよ」
「ならば、真面目に指示を……」「ホコウさん、いいですか?」
と、そこへマフスが同じように、敵の情報を持ってきた。
「カフール海域に、レヴィア軍の軍艦が集まりつつあるそうです。近くを巡回した者によれば、遅くても一週間以内には、守りを固めるだろうとのことです」
「ふむ」
これを聞いたフォコは、今度は真面目に返答した。
「せやったら、こちらの主力艦の……、そうですな、『マリアム』でしたっけ、それと護衛艦4、5隻付けて、……でー、詳しい突入経路ですけども」「ホコウ君!」「は、はい?」
自分と妹との対応の違いに苛立ったメフルが、フォコを怒鳴りつけた。
「なんだ、その態度は!? 私の報告には尻尾をぱたつかせてあしらい、妹の報告には真摯に受け答えするとは! そんなに女の機嫌が取りたいか!」
「ちゃいますて、そう言うつもりや……」「では聞かせてもらうぞ、どう言うつもりだ!?」
いきり立つメフルに、フォコはポリポリと頭をかきながら説明した。
「まあ、そのですな。前にも言いましたけども、僕はロクシルム―ベールの10万人で、レヴィアに対抗するつもりはないんですわ」
「ああ、確かに聞いた。しかしだ、それとこの件と、何の関係があると言うのだ?」
「落ち着いて、お兄様」
目を吊り上らせて詰問するメフルを見かねて、マフスが仲立ちする。
「ホコウさん、わたしにもその二つの関連性が良く分かりません。詳しい説明をお願いします」
「ええ、はい。
まあ、この説明をした時に、『南海の皆が拠り所にできる正義を示せば、皆それに付いてきてくれる、いずれは南海200万の人間が、レヴィア打倒に立ち上がるだろう』と言いましたけども、まだまだその気運、風潮ができるには遠いわけです。
ではどうやってその風潮を作っていけばいいか、っちゅうと、どうしたらええと思います、お二人さん?」
「ふ、む」「ええ、と」
フォコに問い返された二人は、耳打ちし合って答えを検討する。
「皆に付いてきてもらうには、やはり、我々が人民を導くに足る存在だと知らしめねばならない、……よな?」
「でしょうね。でも、ただ『我々が正義だ、皆付いてこい』と怒鳴るばかりでは、なんだか権力を笠に着た小悪党みたいですし」
「証明がいる、と言うことか。であれば、……まあ、此度の戦いで、我々がレヴィアを打倒する存在であると見せつけるのが、手っ取り早いか」
「大体そんな感じですな」
二人のささやきを聞いていたフォコが、そこでうなずく。
「もっと整理して言えば、『僕たちが勝ってるところを皆に見てもらう』っちゅうことになりますわ。
で、さっきお二人から報告してもろた戦地ですけどもな」
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